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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第四章

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66 ハイタック王国からの依頼

 66 ハイタック王国からの依頼


 お披露目会が終わってから、数日が過ぎた。


 散らばっていた冒険者たちが、次々と町へ戻って来ている。


 ギルドの中は久しぶりに活気に満ちていた。


 酒の匂い。

 笑い声。

 無事を喜ぶ、沸き立つ声。


 木の椅子が軋み、ジョッキがぶつかる音が響く。


「魔獣は強かったが、あのやり方で戦えたな!」


「おう! 木の実を撃ち込むとか、最初は正気かと思ったが!」


「でも効いた!」


「斬れるって分かった瞬間、ちょっと楽しくなったよな!」


「わかる!」


 どっと笑いが起きる。


 その輪の少し外側で、ルークはいつものように怪我人を見て回っていた。


 派手な席には行かない。


 誰かの隣に自然としゃがみ込み、静かに状態を確認している。


「腕、動かしてみてください」


「おう……っと」


 男が肩を回した。


 ぐるりと一周。


 それから、ぴたりと止まる。


「あれ?」


「痛みますか?」


 ルークが少し首を傾げる。


「いや……痛くねぇ」


 男は、もう一度肩を回した。


 今度は勢いよく。


「お、おい! 見ろこれ!」


「どうした?」


「回る!」


「いや回るだろ肩なんだから」


「違ぇんだよ! 途中で引っかかってたんだ!」


 興奮したように何度も腕を回す。


「昔やった怪我でな。上まで上がらなかったんだよ!」


「え?」


 ルークが戸惑っている。


「見たところ、傷はそこだけだと思いましたが」


「傷は塞がっていたんだ」


 隣の冒険者が笑う。


「いやいや、そんなレベルじゃねぇぞこれ。軽い!」


「ほんとだって! ほら!」


「おぉ……マジだな」


 周囲がざわつき始めた。


 すると、別の男が足首を叩きながら口を開く。


「俺もだ」


「え?」


「この前、魔獣とやり合っただろ。あん時、お前に治療してもらった」


 男は椅子に座ったまま、何度か足を動かす。


「昔やった怪我がな。踏ん張るたびに痛かったんだよ」


 それから、にやりと笑った。


「今、全然痛くねぇ」


「そうなんですか?」


 ルークが本気で驚いている。


 周囲がどっと騒ぎ始めた。


「そういや俺、腰が軽いぞ!」


「俺も肩が楽だ!」


「古傷まで治ってんじゃねぇか!」


「若返ったんじゃないか!?」


「それは欲張りすぎだろ!」


 大笑いが起きる。


 ルークは、その騒ぎの中心で静かに笑った。


「役に立てたなら、良かったです」


 あまりにも自然だった。


 恩を売るでもない。

 誇るでもない。


 ただ、本当に安心したように笑っている。


「ほんと、お前はなぁ……」


 ギルドマスターが呆れたように頭を振る。


「自分がどれだけおかしいか分かってねぇ」


「え?」


「え?じゃないぞ」


「だって治療しただけですよ」


「その治療が神業なんだよ!」


 また笑いが起きた。


 その時だった。


 ギルドの扉が開く。


 空気が変わった。


 先に入って来たのは騎士たち。


 その中央を歩く男を見た瞬間、何人もの冒険者が反射的に姿勢を正した。


 フェルナンドだった。


 相変わらず威圧感がすごい。


 だが、その目は真っ直ぐルークを見ていた。


「ルーク」


 低い声が響く。


「治療が終わったら、奥へ来てくれ」


「はい」


 ルークが素直にうなずく。


 フェルナンドは軽く周囲を見渡した。


「全員、無事そうだな」


「おかげさまで」


「今回はマジで助かったぜ」


「ルークがいなかったら引退だった」


 口々に声が飛ぶ。


 フェルナンドは短くうなずいた。


「あぁ。そうだな」


 その返事が妙に誇らしげで、何人かが吹き出した。


「おい見たか今」


「なんか自慢してたぞ」


「完全に保護者の顔だったな」


「やめろ、聞こえる」


 冒険者たちが小声で笑う。


 フェルナンドはちらりとそちらを見たが、なにも言わずに奥へ行った。


「みなさん、もう大丈夫ですか?」


「大丈夫だ」


「気になる所があったら言ってください」


 そう言うとルークも奥へ向かった。



 中には、ギルドマスターとフェルナンド、それからマーシャルがいた。


 空気が少し重い。


 ルークは扉を閉め、小さく頭を下げた。


「失礼します」


 ギルドマスターがすぐに本題へ入る。


「ルーク。ハイタック王国から依頼が来ている」


「ハイタックから?」


 ルークが怪訝な顔をする。


「浄化の依頼だ」


「ミツルギがいるでしょうに」


 少しだけ首を傾げる。


「あんまり能力はないと思うけど……」


 その場が静まり返った。


 マーシャルが眉を上げる。


「能力が低い?」


「えぇ」


 ルークはきっぱりと言った。


「低かったですね」


 マーシャルが言葉に詰まる。


 フェルナンドは腕を組んだまま、小さく息を吐いた。


「やはりな」


「やっぱり?」


「ミツルギの能力は、多分お前が思っている以上に低い」


 フェルナンドが目を細める。


「魔獣の炎で火傷を負ったらしい」


「え?」


 ルークは不思議そうに首を傾げて「治せない?」と言った。


「出来ないらしい」


「神殿に治癒ができる神官がいますよ?」


「それでも無理だったそうだ」


「そうですか……」


 その声は、ため息が混じっていた。


 ルークは視線を落とした。


「要請内容は治癒ではない」


 フェルナンドが続ける。


「浄化だ」


「いいですよ。やります」


 とあっさりと言う。


 マーシャルが身を乗り出す。


「いいのか?」


「はい」


 ルークは静かにうなずいた。


「瘴気に国境はありませんから」


 その瞬間、三人が息を呑んだ。


「たしかに国境はないな」


 とフェルナンドがうなずきながら言った。


 マーシャルも黙ってうなずいていた。


 ギルドマスターが深く息を吐く。


「ありがたいな……」


 それは本音だった。


 ルークは不思議そうに三人を見る。


「変なこと言いました?」


 フェルナンドが答える。


「いや、お前らしい」


 それから表情を切り替えた。


「国境はないんだ。俺たちは、なにを気にしてたんだ」


 そういうとフェルナンドは立ち上がった。


「志願者を募る」とギルドマスターが言う。


「名指しで頼みたいものがいる」とフェルナンドが言うと


「かまわない。遠慮なく誘ってくれ」とギルドマスターが答えた。


 フェルナンドをちらりと見て、マーシャルも続いた。


「騎士団も出す」


 ギルドマスターも続いた。


「ギルドにも通達を出そう。石と木の実を集めてもらわんとな」



「ハイタック側との調整もいる」とギルドマスター。


 会話が、一気に実務へ変わっていく。


 その中心で、ルークだけが少し困ったように笑っていた。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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