表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/64

60 二度目の防衛戦と瘴気だまり

 60 二度目の防衛戦と瘴気だまり


 一週間が過ぎた。


 近隣の町からも次々と冒険者が集まり、その代わりに騎士団が周辺の町へ散っていった。


 最初は大騒ぎだった王都も、少しずつ落ち着きを取り戻している。


「もう、来ないのかな」


 僕は小さくつぶやいた。



 ギルドでは、冒険者たちがスリングショットの練習をしている。


 誰も彼も、妙にやる気だ。



「戻ったぞ!」


 外から大声が響いた。


 空気が、一瞬で張りつめる。


 泥だらけの偵察隊が、ギルドへ駆け込んできた。


「同規模です!」


 男が息を切らしながら叫ぶ。


「前回と同じくらいの群れが、こちらへ向かっています!」


 ざわり、と空気が揺れた。


 けれど、逃げ出す者はいない。


 むしろ、冒険者たちの目がぎらりと光った気がした。


 フェルナンドがゆっくり前へ出る。


「聞いたな」


 低い声だった。


 それだけで、場が静まる。


「前回と同じ方法で撃退する」


 周囲がうなずく。


「初めての者は様子を見ながら参戦しろ。無謀なことはするな」


「おう!」


「分かってる!」


 返事が飛ぶ。


 騎士たちも静かに武器を整え始めた。


 そして「討て」短い号令。


 第二戦が始まった。



 前回より、皆の動きはよかった。


 矢が飛ぶ。


 スリングショットが鳴る。


 浄化を付与した石で、魔獣の動きを押さえる。


「右だ!」


「そこ、斬れるぞ!」


「押し込め!」


 怒号が飛び交う。



「すげぇなこれ!魔獣が強くなってるのに」


「次、来い!」


 戦い自体は危なげなかった。


 問題は別にあった。


「きゃっ!」


「足をくじきましたわ!」


「神子様、治療を!」


「フェルナンド様ぁ」


 着飾った女の人たちが、やたらとうろうろしていたのだ。


 どう考えても戦場に来る格好じゃない。


 広がったスカートが邪魔だ。


 しかも転ぶ。すごく転ぶ。


「ありがとうございますぅ」


 甘えた声に、ぴくりと眉が動く。


 その後ろでは、また別の女性がわざとらしくふらついていた。



 さらに腹が立つのは


「ほう、魔獣はよく動くな」


 少し離れた場所で、国王まで見学していたことだ。


 お忍びのつもりだろうが、周囲の騎士の数で分かる。


 しかも、その横でローレンスとマーシャルが得意げに説明している。


「こちらの浄化付与の効き目は……」


「石と木の実を活用した新戦術で……」


 ほんとに、どいつもこいつも、色々腹が立って仕方なかった。


 そんな中だった。


 魔獣の数が減り始めたころ、クリフたちがそっと町を抜けていった。


 僕はその背中を見送る。


 しばらくして、フェルナンドがやって来た。


「準備しておけ」


「え?」


「このまま浄化へ向かう可能性がある」


 その声に、胸がどくりと鳴る。


 大丈夫。いつでも行ける



 やがて、クリフたちが戻ってきた。


 汗と泥にまみれながら、クリフが口を開く。


「今、魔獣は少なくなっています」


「よし」


 フェルナンドが即座に立ち上がる。


「行くぞ」


 迷いのない声だった。



 森へ向かう道中。


 僕たちは途中で石を拾いながら歩いた。



 僕は受け取った石に、次々と付与をしていく。


 手のひらに魔力を込める。


「瘴気よ、消えろ」


 ひとつ。またひとつ。



「本当に、どんどんやるな」


 隣で見ていた騎士が感心したように言った。


「疲れないのか?」


「ちょっとは疲れます」


 僕が苦笑すると、


「無理はするな」


 前を歩いていたフェルナンドが振り返らずに言った。


 その声だけで、不思議と安心する。



 今回の瘴気だまりも、大規模だった。


 黒い網みたいなものが、地面を這い回っている。


 ぞわぞわする。


 本当に気持ち悪い。


「撃て!」


 フェルナンドの号令で、一斉に攻撃が始まった。


 矢が飛ぶ。石が飛ぶ。木の実が飛ぶ。


 瘴気が暴れる。


 けれど、前回と同じだった。


 彼らは石や木の実を飛ばしているが、次の命令を待っている。


 ちらちらとフェルナンドを見ている。


「行け!」


 全員が嬉々として突っ込んでいく。


「おらぁ!」


「斬れるぞ!」


「次だ次!」


 まじで、みんなおかしい。


 怖くないんだよね。


 フェルナンドは前線で瘴気を斬り払いながら、それでも何度も僕に笑いかけてくれた。


「ルーク!」


「はい!」


 呼ばれるだけで、安心だし、ルークも危ない場所に行かないとわかる。



 ここの瘴気だまりは、いつもより大きい。


 黒い穴みたいなくぼみ。


 そこから、じわじわと瘴気があふれている。


「終わりだ」


 僕は両手を向けた。


 魔力を解放する。


 ごそっと力が抜ける感覚。


 足元が揺れた。


 その瞬間、後ろから強い腕が支えた。


「無理をするな」


 フェルナンドの低い声。


 木の実が打ち込まれる。もう言わなくても冒険者たちが対応してくれる。


 背中に、しっかりと体温が伝わる。


「はい」


 息を吐きながら答えると、くぼみからあふれていた瘴気が、ゆっくりと消えていった。


 フェルナンドの腕が暖かい。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。2026/6/2発売です。

挿絵(By みてみん)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ