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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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56 王様のおなり

 

 56 王様のおなり


 資料室は静かだった。ページをめくる音だけがやけに大きく感じる。


 ハイタック王国とアガペーナ王国の資料を並べて、気がついたことを書き出していく。制度は似ている。貴族制、騎士団、ギルド。


 同じ王政の国だもんね。


「絶対王政ってなんだっけ」


 小さくつぶやいてから、次のページをめくった。


 王室の項目で手が止まる。


 フェルナンドの名前があった。


「え、ここに載るのか」


 思わず顔を近づける。


 現国王の弟。しかも年の離れた弟。さらに、王子マーシャルと同じ年。


「それって……」


 頭の中で変な想像が膨らむ。


「不倫とか、そういう感じ?」


 なら、お母さんは魔性の女とか。


 口にして、ひとりで笑ってしまった。


「サスペンスだと、このあと事件が起きて、犯人は北へ逃げるんだよな。なぜか北なんだよね。断崖絶壁」


 自分で言っておいて、ばかみたいだと思う。


 それでも、こういう連想が自然に出てくる。


 ふと手が止まる。


 これ、前の世界の考え方だ。


 気づいた瞬間、少しだけ胸の奥がざわついた。


 この間の言葉がよみがえる。


 帰りたいか。


「きっかけ、あれかな」


 椅子に背を預けて天井を見る。


 なんか、もう思い出みたいになっている。


 前の世界。テレビ。コーヒー。普通の生活。


「それだけ、こっちに慣れたってことか」


 考え事をしながら、独り言が漏れる。


「フェルナンドかな」


 苦笑がこぼれた。


 ミツルギとハロルド王子は最悪だったけど、それ以外は。


「みんな、わりと親切だったな」


 ページを閉じる。


 王宮から逃げられたのも。


「ケントとジョンとビルのおかげだよな」


 自然と声が出た。


「元気でいるかな」


 その瞬間。


「誰のことだ?」


 頭の上から声が落ちてきた。


「うわっ」


 びくっとして顔を上げる。


 すぐそこにフェルナンドが立っていた。


「びっくりした……」


「ハイタックの友だちです。助けてもらったんです」


 そう答えると、フェルナンドは少しだけ目を細めた。


「ハイタックの?」


「はい。いくらなんでも、全員がいやなやつじゃないですよ」


 少し間を置いて、フェルナンドはうなずく。


「そうか。そうなのか」


 次の瞬間、手が伸びてきて頭をなでられる。


「ちょっと」


 思わず身を引く。


「なんですか、それ」


「いや」


 フェルナンドは気にした様子もなく手を引いた。


「少し安心しただけだ」


「子ども扱いじゃないですか」


「そうか?」


 まったく悪びれない。


 なんなんだ、この人。


 小さく息をついたところで、フェルナンドが話を変えた。


「もう少ししたら、国王とマーシャルが来る」


「え?」


 変な声が出た。


「お忍びだ。すまないが顔を見せてやってくれ」


「いやいやいや」


 立ち上がりそうになるのをこらえる。


「無理です。マナーとか知りませんよ」


「いつも通りでよい」


 あっさり言われた。


「あちらの世界のマナーでよい」


「だから、そのあちらのマナーも知らないんですって」


 思わず身振りが大きくなる。


「園遊会とか、そんなの招待されたことないですし」


「招待されることがあるのか?」


 フェルナンドが興味深そうに聞き返す。


「えーと……」


 どう説明したものか迷いながら言葉を探す。


「大きな功績があれば、です。オリンピックとか、オリンピックって言うのは競技会ですね」


「ほう」


「あと、大きな発見とか。僕みたいな庶民はテレビで見るだけです」


 一気に説明すると、フェルナンドがにやりと笑った。


 嫌な予感がする。


「それなら話は早い」


 やっぱり。


「その園遊会の真似をすればいい」


「は?」


 固まる。


「どういうことですか」


「簡単だ。肩の力を抜いて、適当に会話をして、失礼のないように振る舞えばいい」


「それが一番むずかしいんですけど」


 まるで駄々をこねている子供だ。


 フェルナンドは楽しそうに肩をすくめる。


「大丈夫だ。ルークならできる」


「根拠が雑すぎる」


「それに」


 フェルナンドが少しだけ顔を近づける。


「向こうも、おまえに興味がある」


「それが一番いやなんですけど」


 本音が漏れた。


 フェルナンドは声を出して笑う。


「安心しろ。俺がついている」


 だから、その俺が安心なのか、危険なのか分からないから、困ってるの!


 だけど


「ほんとですか」


「ああ」


 短く、迷いなく返ってくる。


「なら、まあ……なんとか」


 完全には納得していないけど。


「やるしかないか」


 小さくつぶやくと、フェルナンドは満足そうにうなずいた。


 その様子を見て、また思う。


 この人にはかなわない。


 気づけば、いつもこの人の言う通りに動いている。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。2026/6/2発売です。

挿絵(By みてみん)




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