表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/66

53 王都のギルド

53 王都のギルド


フェルナンドと一緒のせいか、検問の列に並ぶことなく王都に入ることができた。

門番は僕たちをちらりと見ただけで、即座に道を空ける。横を歩きながら、改めてこの人の影響力を思い知らされた。


「顔が利くって、こういうことなんだな……」

小さく呟くと、フェルナンドが視線を寄越した。

「何か言ったか?」

「いえ、なんでもないです!」

慌てて首を振ると、彼は追及することなく前を向いた。


ギルドに足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。

喧騒がぴたりと止まり、刺さるような視線が一斉に僕たちへ向く。……いや、僕ではなくフェルナンドにだ。

目立つのも無理はない。そう諦めていると、奥からギルドマスターが直々に歩み寄ってきた。


「待っていたぞ」

挨拶もそこそこに、僕たちは奥の会議室へと通された。


「ここに来るまでに魔獣と戦った。明らかに瘴気の影響を受けている。森から溢れ出し始めているな。状況は良くない」

フェルナンドの言葉に、ギルドマスターも苦々しく眉をひそめた。

「あぁ、浄化については報告を受けている。発生箇所の偵察も出しているのだが、一向に見つからんのだ」

「それなら、ここにいるパーティが適任だ。彼らに頼みたい」


フェルナンドが示すと、後ろに控えていたクリフたちが静かにうなずいた。最初に会ったころに比べると、彼らにはどこかベテランのような貫禄が備わっている。

「ただ、この辺りの地理には疎い。案内をつけて欲しい」

「わかった。すぐに手配しよう」


ギルドマスターの判断は早かった。彼は少しだけ表情を和らげると、「今日は宿で休んでくれ。フェルナンドは少し残ってもらうがな」と告げた。


職員に案内されて宿に向かう途中、僕はようやく溜めていた息を吐き出した。

「なんか、一気に話が進んじゃうね」

隣のクリフに小声で漏らすと、彼は苦笑した。

「フェルナンドさんがいるからな。あの人は決断の速さが桁違いだ」

「本当だね。迷いがないっていうか……」


案内された宿は、目を見張るほど豪華だった。

「え、ここ……?」

「全員個室です。こちらが会議用の談話室になります」

広い、綺麗、そして驚くほど静か。

「待遇、良すぎない?」

「そりゃあな。国絡みの重要案件だぞ、俺たちは」

アンディの言葉になるほどと思い、みんながはしゃいで部屋を見て回る様子を見て、僕の肩の力も少しだけ抜けた。


夕食の時間になってもフェルナンドは戻らなかった。

さすがに忙しいんだろうな、と食事を終えようとした頃、ようやく扉が開いた。

「遅くなった」

「フェルナンド、大丈夫ですか?」

思わず声をかけてしまうほど、彼の顔には薄っすらと疲れが滲んでいた。

「あぁ、問題ない」

そうは言うものの、椅子に腰掛ける動作がいつもより重い。

ゆっくりとグラスを手に取って水を飲む様子にも切れがない。

「無理しないでくださいね」

僕が言うと、彼は一瞬意外そうにこちらを見つめ、それからわずかに口元を綻ばせた。

「誰に言っている」

「フェルナンドにですよ」

「そうか」

短く応えて食事に手をつける彼を見て、少しだけ安心した。


翌朝、ギルドには案内役の五人組が集まっていた。

「彼らが案内役のパーティ、『村の仲間』だ」

「よろしくな!」

にこやかな挨拶に、クリフたちも陽気に返す。僕は彼らの装備を観察した。手入れは行き届いている。

「少しだけ、いいですか?」

僕は彼らに歩み寄り、一人ひとりの武器に手を当てた。魔力を練り、最適な付与を流し込む。

「これで、少しは安全だと思います」


驚く彼らに、クリフが我が事のように胸を張った。

「安心しろ、ルークの付与は検証済みだ。あ、この『石』も持っとけよ」

「石?」

「ルーク特製の石だ。効くぞー」

半信半疑でバッグに石を詰め込む彼らを見て、僕は少し申し訳なくなった。重いよね、それ……

でも、命を救うはずだ。


その後、僕は資料室に籠もった。王都の蔵書量は圧巻で、どこから手をつけるべきか途方に暮れるほどだった

だが、浄化の発生源に関する記録は、どれも曖昧な目撃談に終始していた。

数冊読み終えた頃、扉が開いた。

「ここにいたか」

「あ、フェルナンド。マスターとの話は終わったの?」

珍しく言い淀むフェルナンド。その様子に、嫌な予感が背中を走る。

「ルーク。すまないが、国王が会いたがっている」


「え?」

思わず、声に嫌悪が滲んでしまった。

「断ったのだが、どうしてもと言うなら自分がここへ出向くと言い出してな」

「えええーーー!!」


「無理です! 絶対無理! 王族なんて、ろくなもんじゃないですよ!」

「全くだな」

「賛成しないでください! わかって言ってるんですか!?」


思わず突っ込むと、フェルナンドは目を細めた。

「だが……お前は、ただの冒険者では終われないだろう?」

その言葉に、心臓がどくんと跳ねた。見透かされているような気がして、言葉が詰まる。

「それでも、嫌なものは嫌です」

お腹に力を入れて言い放った。

フェルナンドは小さく溜息をついた。

「安心しろ。俺も側にいる」

「それが一番安心できないんですけど!」

「ほう?」

低くなった声に、しまった、と口を押さえる。

「い、いや……あの、今のは……」

「逃げるなよ、ルーク」


フェルナンドが微かに笑う。

「逃げませんよ……多分」


逃げようがないことをわかってフェルナンドが笑ってる。王様なんて、面倒事の予感しかしない。

僕は重い本を閉じ、深く、深ーく息を吐いた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。2026/6/2発売です。

挿絵(By みてみん)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ