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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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52 それぞれの役目

52 それぞれの役目


翌日、朝の空気はやけに澄んでいた。


これから冒険者たちは、それぞれのパーティで行動する。


ここから更に奥へ進んで散らばった魔獣を討伐する人たち。ゆっくり戻りながら討伐する人たち。


僕は、戦闘で使った石を回収してもらい、もう一度付与を施した。


その石を持って行くように勧めると、彼らは、にこにこ笑いながら、石をバッグに入れた


「この石と、強くなった武器。これで大丈夫だ」


そんな声を上げながら、軽く手を振って背を向ける。


「また町で会おう、ルーク!」


「あぁ、先に戻ってる!」


そんな軽口が飛び交って、あっという間に彼らの背中は小さくなっていった。


その様子を、少しだけ寂しく感じながら見送る。


「行くぞ」


フェルナンドの声で、僕は現実に引き戻された。


「はい」


僕とフェルナンド、それに騎士団は町へ戻ることになった。


クリフたちは、赤毛のアンディと一緒に、瘴気だまりを探しに行くという。


別れ際、クリフが軽く手を上げた。


「任せとけ。見つけたらすぐ知らせる」


「気をつけて」


短いやり取り。でも、それで十分気持ちが伝わった。




海辺の町に戻ってから、僕の生活は少しだけ元に戻った。


とはいえ、前とまったく同じというわけでもない。


「今日はこの辺にしておくか」


「もう少し、大丈夫です」


薬草を摘みながら答えると、すぐ横にいるフェルナンドが小さく息をついた。


「無理をするな。お前は自覚が足りない」


「してるつもりなんですけど」


そう言いながらも、僕は少しだけ手を止めた。


確かに、前みたいに普通じゃないのは分かっている。


だからこそ、普通でいたかった。


休みの日は図書館に通った。


瘴気についての本は相変わらずはっきりしないことばかりで、推測や言い伝えばかりだったけど、それでも何も知らないよりはいい。


もっと詳しいのはないのか?


ページをめくりながら、何度もそう思った。



そんな日々が続いたある日。


王都のギルドから、連絡が届いた。


「魔獣の様子がおかしい、か。ついに来たな」


フェルナンドが書状を読みながら呟く。


その声には、わずかに緊張が滲んでいた。


「すぐに騎士団が動く。こちらも準備だ」


その判断は早かった。


僕たちは、クリフたちが戻るのを待ち、合流してから王都へ向かうことになった。


アンディも同行することが決まり、少しだけ賑やかになる。


「王都かぁ。久しぶりだな」


アンディが伸びをしながら言う。


「ルークは王都は初めてか?」


フェルナンドがこちらを見た。


「はい。初めてですね」


そう答えると、彼はほんのわずかに目を細めた。


「なら、気を抜くな。あそこは人も多いし、厄介事も多い」


「はい……」


少しだけ、胸の奥がざわつく。


期待と不安が混ざったような、落ち着かない感覚だった。


それでも、僕たちは出発した。馬車を走らせ街道を進む。


フェルナンドや騎士たちは馬だ。


「止まれ!」とフェルナンドの声。


前方から、切羽詰まった声が聞こえた。


見ると、馬車が魔獣に襲われている。


「行くぞ!」


フェルナンドが即座に馬を蹴った。


僕たちも馬車を急がせる。


魔獣は以前よりも、確かに動きが速い。


でも


「大丈夫……!」


フェルナンドが強い。


騎士たちは、石をスリングショットでぶつける。



「効いてるぞ!」


騎士の一人が叫び、前に出る。


彼らの剣が一閃するたび、魔獣は確実に数を減らしていった。


戦いは、長くは続かなかった。


「終わったな」


最後の一体が倒れると、周囲に静けさが戻る。


馬車の乗客たちは震えながらも無事で、護衛たちも大きな怪我はないようだった。


「助かりました……!」


護衛のリーダーらしき男が、深く頭を下げる。


その顔には、疲労と驚きがはっきりと浮かんでいた。


僕はすぐに彼らの手当てを始めた。治療をやり過ぎないように気を付ける。


「石は本当に効果的なんですね。ギルドで話を聞いたんですが、信じられなくて」


「そうだろうな」


フェルナンドが答えている。



「確かに……最近、魔獣が強くて……」


男は息を整えながら続けた。


「それで、パーティの人数も増やしたんです。装備も見直して……でも、それでも押し切られて……」


悔しそうに拳を握る。


「数も、力も、前とは違うんです」


僕はその言葉を聞きながら、さっきの戦いを思い返す。確かに魔獣が強くて大きかった。


「王都まで一緒に行こう」



その一言で、馬車の乗客が安心したように息を吐いた。


王都への道は整備されている。だが、その先はどうなっているのだろう。


僕は馬車の揺れに身をまかせた。不安と期待。二つの気持ちを持て余したまま。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。2026/6/2発売です。

挿絵(By みてみん)




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