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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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51 クリフと話す

51 クリフと話す


気が付いたとき、まず感じたのは土の匂いだった。

少し湿った、森の奥の匂い。


ゆっくりとまぶたを開けると、視界に入ってきたのは木漏れ日と、その下に広がる揺れる枝葉だった。身体の下には毛布が敷かれていて、硬い地面の感触はあるのに、不思議と楽だった。


「あ」


喉がかすれて、うまく声が出ない。


すぐ横で気配が動いた。


「気が付いた? 今回は大変だったな」


クリフの声だった。少しだけ、安心したような、でもまだ気を抜いていない声。


僕はゆっくりと顔を横に向けた。クリフが膝を立てて座っていて、腕を乗せたままこちらを見ている。


「うん……あれは……大きかったけど、木の実の援護に助けられた」


「ルークが付与したものだけどな」


クリフの声に笑い声が混じる。



確かにそうだ。でも、あれがなければ危なかった。僕の浄化の力はあの時、ほぼ限界だった。そこに浄化の力が入った木の実を打ち込んでもらった。それでなんとか出来たんだ。


今回の「瘴気だまり」は、それほどまでに巨大で、禍々しかった。


「あぁ、森に入った時から嫌な感じだったな。だけど石が有難かった」


クリフが僕を見ながら言った。


僕は、考えながら答える。


「うん……あんな風に使えるとは……思ってなかった」


自分の手を、少しだけ持ち上げてみる。

まだ、力が入りきらない。



ためらいがちにクリフが言いだした。


「あれ、石ね……前に、もしかしたらって……思ったんだけど……よく分からなくて……」


言葉を探しながら、ぽつりぽつりと続ける。


「今回……ちゃんと……証明できたよ……ほんとに良かった。石は僕たちに浄化を付与してくれてる」


「うん」



少しの沈黙のあと、クリフが視線を落とす。


「あの……ルーク。この国に来てくれてありがとうな」


不意打ちだった。


僕は少しだけ目を瞬かせて、それから視線を空へ逃がす。


葉の隙間から、光が揺れている。クリフは気が付いていても、黙っていてくれた。


「うん」


それしか言えなかった。

でも、それで十分な気がした。


クリフが肩の力を抜いたのが、なんとなく分かる。


「あ、そうだ。フェルナンドさんは心配してたけど、責任者だから、魔獣討伐に出かけたよ。夕方には戻る」


「うん、さすがの指揮だったね」


その名前を聞くだけで、胸の奥が少しだけざわつく。

怖いのに、いないと落ち着かない。自分でもよく分からない感覚。


そのときだった。


足音が近づいてくる。重く、ためらいのない歩き方。


「ルーク、気が付いたか?」


見上げると、逆光の中にマーシャルの姿があった。腕を組んだまま、まっすぐこちらを見下ろしている。


僕は少しだけ身体を起こそうとして、結局やめた。


「はい……大丈夫です」


「次は騎士団にしっかりと守らせるから安心だ。馬車も用意させる」


言い切る口調。決定事項みたいに。


僕は苦笑して、小さく首を振った。


「お気遣いなく……一介の冒険者ですから」


「そうもいかない」


間髪入れずに返ってくる。逃がさない声音。


その空気を、別の声が割った。


「マーシャル。やめろ」


低く、よく通る声。


振り向かなくても分かる。


「お前は帰れ。王宮を空けすぎると足元をすくわれるぞ」


フェルナンドだった。


マーシャルが舌打ち混じりに顔をしかめる。


「なに……」


荒い声。でも、そのあと少しだけ黙る。

なにか思い当たることがある顔だった。


フェルナンドは一歩も引かない。


「騎士団を貸すから帰れ」


短く、それだけ。


次の瞬間、合図もほとんど見えなかったのに、周囲から騎士が五人、すっと寄ってきた。無駄のない動きだった。


マーシャルはしばらく黙っていたが、やがて息を吐く。


「分かった」


完全には納得していない顔だったけど、それでも背を向けた。


そのまま、森の外へと戻っていく。


足音が遠ざかっていくのを、ぼんやりと聞いていた。


ふっと、肩の力が抜ける。


「ふっ」


小さく息がこぼれた。


なんだろう。

怖かったわけじゃないのに。



なんか、ほっとして。


それから、少しだけ、嬉しかった。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。2026/6/2発売です。

挿絵(By みてみん)




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