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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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47 あるギルドマスター

 47 あるギルドマスター



 朝一番に届いた通達書を読んだとき、わたしはしばらく言葉を失った。


 紙の上に並ぶ文字は簡潔だったが、その一行一行に込められた重みは、軽く受け流せるものではなかった。


 フェルナンドの名で出された命令。


 思わず、低く息を吐く。


「あのフェルナンド、か……」


 知らない者はいない。あの男が動くとき、それは単なる対処ではない。事態はすでに、放置できる段階を越えているということだ。


 通達書に目を戻す。


 国内すべてのギルド、騎士団に対しての一斉指示。


 瘴気の偵察。


 討伐ではない。まず確認。


 だが、これはただの注意喚起ではない。


「完全な動員だな」


 思わず口に出る。


 瘴気の報告は、ここ最近じわじわと増えていると連絡があるが、このあたりは、平和なもんだ。


 黒い網のような瘴気。気配がなく、魔獣に取りつき、強化する。


 今日、報告がないからと言って明日が安全とは言えない。


 どうしたもんか?なんでこの時期にギルドマスターなんかになったんだ。


 そのとき、扉が叩かれた。


「マスター、こんなものが届きました」


「入れ」


 短く返すと、職員が箱を抱えて入ってくる。


 机の上に置かれたそれを見て、眉をわずかにひそめた。


 蓋が開けられる。


 中身を見て、思わず目を細めた。


「この石か」


 ただの石にしか見えない。


 だが、通達にはこの石のことも書いてある。


「これ、石ですよね。なんでこんなものを……」


 職員が首をひねる。


「そうだな」


 短く返し、箱を見つめる。


 だが、内心では別の考えが浮かんでいた。


 石を投げて瘴気を消す。防ぐ。


 馬鹿げている。


 だが、実際にそうやって瘴気を浄化したと書いてある。



「いいだろう。使わせてみる」


 そう決めて、顔を上げた。



 今、町にいるパーティを確認する。



「赤い疾風を呼んでくれ」


 職員が慌てて出て行く。


 しばらくして、五人が揃って部屋に入ってきた。


「呼び出して悪いな」


 そう言って、全員を見渡す。


「今朝、上から通達が来た。瘴気の偵察を行え、だ」


 リーダーのポールが一歩前に出る。


「偵察……ですか?」


「ああ。討伐じゃない。確認だ」


 机の書面を指で叩く。


「瘴気って、どんなものなんですか?」


 弓を持ったキールが尋ねてくる。


「あくまで報告ベースだがな」


 少し間を置いてから言う。


「黒い網のような形で、地面を這う」


「網……?」とミントが呟いた。


「霧に近いが、形がある。だが気配がない」


 場の空気が一瞬で変わる。


「気配がないって、それ……」


「ああ。近づかれるまで分からん」


 はっきりと言い切る。


「さらに魔獣に取りつくと強化される」


「強化って……」


「大きくなり、硬くなり、理性も飛ぶ。別物になると思え」


 沈黙が落ちる。


「やばいですね」


「ああ、やばい」


 迷いなくうなずく。


「この辺りでそんな魔獣がでたんですか?」


「いや、報告はまだだ」


 マギーがほっと息を吐いた。



「だから言う。見つけても戦うな」


 視線を鋭くする。


「確認して戻れ。それが最優先だ」


 五人がうなずいた。


 一拍置いて、箱を指さした。


「それと、これだ」


 一人が箱を開ける。


「石ですね」


「そうだ。通達と一緒に送られてきた」


 腕を組む。


「瘴気に接触された場合、それを使え」


「どう使うんです?」


「投げろ、としか書いていない」


「投げるだけ?」


「ああ。投げると瘴気の動きが止まるそうだ」



 ゆっくりと、三本の指を立てる。


「任務は三つ」


「一つ。瘴気の有無を確認」


「二つ。発見次第、即撤退」


「三つ。接触された場合のみ、その石を使え」


 最後に、はっきりと言い切る。


「生きて戻れ。それが最優先だ」


 リーダーが力強くうなずく。


「了解しました」


「行け。準備して出発だ」


「どの方向へ?」


「西門の森だ。出来るだけ奥まで行ってみてくれ」


 少し視線を細める。


「分かりました」


「無理はするな」


 念を押す。


「異常を感じたら、即戻れ」


「はい」


 一礼して、五人は部屋を出ていった。


 扉が閉まる。


 静かになった部屋で、わたしは再び通達書に目を落とした。


 フェルナンドが、ここまで動く。


 それは


「もう、始まっているということか」


 小さくつぶやき、石の入った箱に視線を向ける。


 ただの石。


 だが、それが命を分けるかもしれない。


 わたしは深く息を吐いた。


「面倒なことになったな」


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

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