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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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45 クリフ目線

 

 45 クリフ目線


 ルークが目立つことを嫌うのは、すぐにわかった。


 最初に会ったときから、妙に控えめだったからだ。


 力があるやつは、それを見せたがる。評価されたいと思う。


 だが、あいつにはそれがない。


 だから俺は決めていた。話しかけるのは、ギルドの外で、なるべく目立たないようにする。




「ルーク、少しいいか」


 通りの端で声をかけると、あいつは少し驚いた顔をしてから、ほっとしたように笑った。


「あ、クリフさん……はい」


 周囲を気にしているのがわかる。


 だから長話はしない。用件だけ、短く伝える。


 それくらいが、あいつにはちょうどいい。




 一度、一緒に狩りに行ったときのことだ。


 正直、あれには驚いた。




 あいつは前に出ない。


 だが、下がりすぎもしない。




「そこか」


 思わず、口の中で呟いた。




 前衛の邪魔にならない位置。


 だが、何かあればすぐに手が届く距離。




 計算してやっているのか、無意識なのか。


 どちらにせよ、長く一緒にやっているパーティに溶け込んでいる。




「ダグラス、左だ!」


 指示を飛ばしながらも、視界の端でルークの位置を確認する。




 動かない。


 いや、違う。




 動く必要がない場所にいる。




 戦闘が終わると、その瞬間には、もう動いている。




「ちょっとじっとしてて」


 ルークがそう言って、ナタリーの腕に手を当てた。




 淡い光が広がる。


 傷が、目に見えて塞がっていく。




「楽になった」


 ナタリーが息を吐いた。


 その顔を見て、ようやく緊張が抜ける。




 痛みに耐えて戦うことはできる。


 それくらいの覚悟は、最初からある。




 だが「痛みなんて、ない方がいいに決まってる」


 ダグラスがぼそりと言った。




 その通りだ。




 ルークは、それを当たり前みたいにやる。


 どれだけ価値があることかも、分かっていない顔で。




「ありがとな」


 そう言うと、あいつは少し困ったように笑った。


「いえ、これくらいしかできないので」




 本気で言っている。




 だから、それ以上は言わなかった。




 瘴気の偵察に、一緒に来てもらえたのは運が良かった。




 黒い網みたいなもの。あれが瘴気なのか?


 気配がないくせに、確実に近づいてくる。




 視界の端に、黒いものが映った。



「……っく」


 声を上げる前に、



「だめ!」



 ルークが手を突き出した。



 次の瞬間、瘴気が消えた。




「は?」


 思わず声が出た。




 だが、あいつは何でもないみたいにしていた。



 だから、気が付かない振りをした。




 町に戻ってから、悩んだ。


 ギルドマスターに報告するべきか。




 あれは、明らかに普通じゃない。


 だが、話したらどうなる。ルークが信用してくれなくなったら?


 その方が怖い。



 結局、報告はしなかった。




 そして、もう一度、瘴気の様子を確認しに行くことになったときだ。



 今度は、俺たちだけで行く。



 そのとき、ルークが少し迷うようにしてから言った。




「これ……持って行ってもらっていい?」




 差し出されたのは、袋一杯の石だった。



「石?」


 思わず聞き返す。




 ルークは少しだけ気まずそうに笑って、


「えっと……瘴気よ消えろって思いながら、付与しました」


 と言った。



 一瞬、意味を考える。


 瘴気に効く?


 すごいことをさらりと言われた? 信用してくれている!



「重いよな、これ」


 ダグラスが笑う。



 確かに軽くはない。



 それでも、俺は受け取った。



「いい。持っていく」




 あいつが、わざわざ渡してきたものだ。


 無駄なはずがない。



「ありがとう、ルーク」



 そう言うと、あいつは少し安心したようにうなずいた。



 そして実際に使ってみて分かった。



 石を投げる。


 瘴気に当たる。



 動きが止まる。




「効いてるぞ」




 さらに投げる。今度は、消えた。




「本当かよ」


 ダグラスが目を見開く。




 俺は、思わず息を吐いた。



「石を投げながら逃げるぞ」



 俺たちでも、瘴気と戦える。




 そして、フェルナンド。あの男が来た。




 一目で分かった。ただの冒険者じゃない。



「騎士団はもうすぐ着く」



 当たり前みたいに言っていた。


 実際、その通りになった。




 それからは、早かった。




 瘴気の発生地点の状況を説明した。


 戦力の配置や、作戦を考える。



 迷いがない。



「撃て!」



 その一声で、全員が動いた。



 そして、あっという間に、浄化が終わった。



「すげえな」



 思わず、ダグラスが呟く。



 そして、最後にルークが手をくぼみにかざした。


 手から何かが出るのがわかった。辺りの重苦しさが消えた。


 崩れ落ちそうなルークをフェルナンドさんが支える。


「木の実を打ち込んで」


 ルークの声に従って俺たちはスリングショットで木の実をそこに撃ち込んだ。



「神子様。か」



 小さく呟く。



 あの浄化。


 間違いない。



 ルークは、神子様だな



 そう確信して、俺は静かに息を吐いた。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

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