43 町をあげて
43 町をあげて
フェルナンドとローレンス、マーシャルといった目立つ人物が町に現れたことで、町は一気に沸き立った。
さらに、すぐに騎士団まで上陸してきた。
そのことでマーシャルがフェルナンドに食ってかかっていたが、
「手際が悪いな」
と軽くあしらわれていた。
瘴気と戦うのに石を投げつけた話が広まると、
「石がいいなら木の実はどうだ?」
という意見が出た。
そのうえ、それなら、スリングショットだなと意見がでた。
試しにスリングショットで木の実を飛ばしてみると、随分とよく飛ぶ。
提案した老人たちは子供の頃、飛ばして遊んだそうだ。
それからは町中の人が木の実を拾い始めた。子供たちも熱心に働いている。
僕は木の実に付与をしながら、ふと思い立って剣にも付与することにした。
途中で魔獣が出てきたら危ないからだ。
マーシャルとローレンスは自分たちだけで、別々に行きたがったが、案内できるのはクリフのパーティだけだ。
パーティを分けるなんて冗談じゃない。
そこで一緒に向かうことになった。
順番は、二番目に偵察した方が先だ。そちらのほうが危険そうだからと、クリフが言ったからだ。
さらに冒険者たちは瘴気を見ておいたほうがいいという判断で、希望者は全員行くことになった。
騎士団の半分は町を守るために残る。
そして、今日、出発だ。
フェルナンドは道案内のクリフたちと共に先頭を歩いている。
僕は騎士団に囲まれて歩いていた。
ローレンスとマーシャルが僕に近づこうとするが、そのたびに騎士団がさりげなく遮る。
そのときだった。
横手の茂みから、迷彩狼が一斉に飛び出してきた。
十頭以上の群れだ。
騎士たちは落ち着いていた。
「前列、構え!」
指示が飛び、矢が一斉に放たれる。
動きが鈍ったところへ、スリングショットで石と木の実が撃ち込まれる。
スリングショットはフェルナンドがそれを気に入り、木工職人と相談してかなり高度なのを作らせた。
家具の端材を使ったもので、もはや、子どもの玩具と言えないものになっている。
僕もそこに、硬度強化と命中率向上の付与をしている。
動かなくなった迷彩狼から魔石を抜き取り、戦闘は終了した。
やがて、前方にそれが見えてきた。
黒い網のようなものが、地面を這っている。
音はないはずなのに、ごそごそ、とか、しゃっしゃっ、とか、
そんな音が聞こえる気がして、背筋が冷える。
フェルナンドが大きく息を吸い「撃て!」
と、なんと大声で号令をかけた。
一斉に矢が放たれる。
いや、なんで大声なんだ。こっそり死角から狙うんじゃないのか?
怖いだろ!
案の定、瘴気が一斉にこちらへ向かってきた。
「来るぞ!」
その瞬間、フェルナンドは逆に前へ踏み込んだ。
迷いなく瘴気に向かって走り、剣を振るう。
一閃。
それだけで、瘴気が霧のように崩れて消えた。
「すごい」
思わず声が漏れる。
でも、やめてほしい。
心臓に悪い。
それを見た騎士や冒険者たちも、次々と剣で瘴気を斬り始めた。
やめて!
本当にやめて!
だが結果として、瘴気はすべて浄化された。
その先。
地面にぽっかりと空いたくぼみを、皆が取り囲んでいる。
「ルーク」
呼ばれて、僕は前に出た。
そのくぼみは……
うまく言えないけど、
そこから、瘴気が生まれていると直感で分かった。
これは、僕の仕事だ。
僕は両手をくぼみに向けた。
「もう、だめだよ」
そう思った瞬間、
何かが流れ出した。
最初は少しずつ。
やがて、一気に。
ごそっと力が抜ける感覚。
足元が揺れる。
そのとき、後ろから体を支えられた。
「無理をするな」
フェルナンドの声だった。
地面に崩れ落ちずに済んだ。
そして「そこに、木の実を打ち込んで」
なぜか、自然にそう口にしていた。
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