04 鑑定!やっぱり余分だ
04 鑑定!やっぱり余分だ
案内された部屋には、誰もいなかった。
連れてきた若い神官見習いは、僕を中に置くと、何も言わずに静かに扉を閉めた。
……取り残された。
部屋は妙に広くて、静かで、落ち着かない。
なんとなく見回していると、扉が開いた。
入ってきたのは――僕だった。
いや、違う。
あれはミツルギだ。
なのに、僕の顔をしている。
胸の奥がざわつく。
やめろよ、と思う。
王子と神官長に囲まれて歩いてくるミツルギは、完全にこの場の中心だった。
王子レオナードは堂々としていた。
まるで玉座から降りてきたみたいに、空気ごと支配している。
金糸の外套が揺れて、青い目は冷たく光っていた。
隣の神官長も同じだ。
杖をコツンと鳴らしながら、顎を上げて歩く姿は、神の代弁者気取りにしか見えない。
「おや、ちゃんと早く来ていたのですね」
柔らかい声なのに、圧がある。
間違った返事をするなと言われているみたいだ。
「オオヤナギ、神官長にご挨拶を」
ブラウン神官に促されて、僕は頭を下げた。
「おはようございます。オオヤナギと言います」
神官長は鼻で笑った。
「ほう。余分はオオヤナギというのか」
わざとゆっくり、余分と言った。
隠す気もない。
王子が続ける。
「神子様が言った通りだな」
疑いが一切ない声だった。
ミツルギの言葉が絶対になっている。
ミツルギが王子にすがるように言う。
「レオナード様、僕は……」
王子はその手を軽く取った。
優しい笑顔。
でも違う。
人に向ける笑顔じゃない。
「神子よ。様はいらぬ。レオナードでいい」
柔らかいのに逆らえない。命令だ。
ミツルギは――僕の顔で、嬉しそうにうなずいた。
その様子を見て、吐き気がした。
自分の顔が媚びた表情を浮かべるのを見て、胃がねじれる思いだった。
媚び売るな! 売られる側だろ……僕の顔で……やめてくれ
やめろ。
「なにを睨みつけている」
ブラウン神官の声で、はっとする。
「……なにも」
そのとき、神官が箱を持って入ってきた。
鑑定だ。
神官長が杖を鳴らす。
「神子様、こちらへ」
ミツルギが前に出る。
「箱の上に手をかざして下さい」
手をかざした瞬間、光が爆発した。
白い光に、虹色が混ざる。
渦を巻いて、部屋を満たした。
神官長が声を震わせる。
「おお……浄化の他にも多属性……魔力量は1000を超えておりますぞ……」
目が完全に変わっていた。
宝を見つけた顔だ。
王子は満足そうに頷き、ミツルギの手を取る。
「やはりダイトは素晴らしい」
そのとき、ミツルギがこっちを見た。
そして笑った。
完全に勝った側の顔だった。
「……行け」
「さっさと行け」
ブラウン神官に肩を押される。
僕は箱の前に立った。
手をかざす。
……何も起きない。
いや、少しだけ。
白とも青ともつかない煙が、ふわっと出て消えた。
それだけだった。
神官長が露骨に顔をしかめる。
「魔力はあるようだが……少なすぎて測定できぬな」
王子が言った。
冷たく、興味もなく。
「やはり余分だ。神殿で面倒をみてやれ」
終わった、と思った。
ここで全部決まった。
ブラウン神官が何も言わず、頭を下げた。
そのあと、僕は神官見習いとして働くことになった。
でもすぐに命令が来た。
神子のそばで働け。
初日、王子に言われた。
「ダイトがお前のことを心配してな。向こうでは散々いじめられたと言うのに、さすがダイトは優しい」
何を言っているんだと思った。
「いいか、神子になにかしてみろ。俺が許さないからな」
優しさじゃない。
完全に脅しだ。
うんざりした。
いじめたのはミツルギだ。
なのに僕が悪いことになっている。
しかも、そばに置く。
同じことをする気だ。
そうとしか思えない。
僕は決めた。
ここを出る。
神子は午前中、座学を受ける。
歴史、貴族、国の仕組み。
僕はその後ろに立たされる。
ずっと。
動くなと言われる。
ただ立っているだけ。
講義が終わるころには、足が棒みたいになっていた。
完全に嫌がらせだ。
午後は魔法の実技。
浄化は神子だけの力らしい。
でも他の魔法を使えば、コツがわかると聞いた。
図書室の本にもそう書いてあった。
……でも、僕には何もできない。
部屋に戻るころには、もう限界だった。
足音がうるさいくらい響く。
どうでもよくなっていた。
ここを出る。
絶対に出る。
それだけを、何度も繰り返していた。
◇◆◇◆◇
ミツルギ・ダイト 茶色の髪 こげ茶の目 背が高く 足が長く イケメン
オオヤナギ・ライト 黒髪 黒い目 小柄 可愛い 手の甲に煙草の火傷の痕
異世界に転移した時に、体が入れ替わった。名前はそのまま。
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