03 神子の余分だと言われたよ
03 神子の余分だと言われたよ
神官にあの部屋から連れ出された。
部屋の準備ができるまでお茶でも、と案内された部屋で、テーブルを挟んで向かい合って座った。
「わたくしは神官のアーサー・ブラウン。あなたの名前は?」
ブラウンがそう名乗る。
「僕はオオヤナギ・ライトです」
「オオヤナギですね」
「はい」
「ではオオヤナギ。突然のことで驚いたと思いますが、我々も驚きました。一人、余分がいたので」
勝手に呼んでおいて余分扱いかよ、と思ったが黙っておく。
「まあ、来たものは返せませんので面倒は見ます」
「帰れないんですか?」
「はい、帰れません。返せるなら返したいのですが……」
帰れないのか。この居心地の悪い場所で。しかもミツルギもいる。
「明日、神子様の魔力などを鑑定させていただきます。ついでにオオヤナギも鑑定します。よろしいですね」
「はい」
「質問は?」
「いえ、特に」
「では行きましょう。そろそろ準備ができた頃でしょう」
――お茶、出なかったよ!!
そう思いながら、僕はブラウン神官についていった。
案内された部屋にはトイレと浴室があり、お湯も使えた。
浴室の鏡に映った自分の顔を見た瞬間、僕は叫んでしまった。
ブラウン神官が慌てて浴室に入ってくる。
「なんでもない、ちょっと」
そうごまかすと、怪訝な顔をされたが、それ以上は何も言われなかった。
魔力について知りたいと思い、僕は図書室に行きたいと頼んだ。
少し考えたあと、ブラウン神官が言う。
「いいでしょう。許可します。図書室まで一緒に行きましょう」
「お願いします」
「その格好で歩き回るのは禁止です。そこにある服に着替えてください」
クローゼットには、ゆったりした灰色のズボン、白いシャツ、水色の膝丈の上着が入っていた。
鏡を見る。
そこにいるのはミツルギの顔。
茶色の髪、茶色の目、整った顔立ち。背が高く、足も長い。
手足の位置が本来より遠く、歩くとぎこちない。
ボタンを留めるのも難しかった。
着替えて出ていくと、ブラウン神官が言う。
「それは神官見習いの制服です。今後はそれを着てください」
図書室で受付と話したあと、ブラウン神官は帰っていった。
僕は入門書や初級書を数冊選び、椅子に座った。
座るときにガタンと大きな音がして、思わず首をすくめる。
おへその下あたりにもわもわしたものを感じたり、手のひらが暖かくなる。
本に書いてある通りの感覚があった。
余分扱いでも、異世界チートはあるのかもしれない。
外が暗くなっていたので受付に挨拶して図書室を出ると、ドアがバターンと大きな音を立てた。
どうも手足が変に動く。
肩をいからせて歩いているようで、自分でも萎縮してしまう。
部屋に戻ると、テーブルに食事が置かれていた。
見た瞬間、お腹がグゥーーーと鳴る。
コンビニを出たのは昼前。
こっちに来て色々あって……向こうでは真夜中くらいの時間かもしれない。
興奮していて疲れを感じなかったのだろう。
ナイフとフォークを持つが、扱いが難しい。
がちゃがちゃ音を立てながら食べ終え、シャワーを浴びようと思ったが、そのままベッドに倒れ込んだ。
翌日。
シャワーを浴びて着替える。クローゼットの服はすべて神官見習いのものだ。
鏡に映る自分の顔を見て、今日も「うわっ」と声が出た。
無理もない。
僕に対して嫌がらせといじめを繰り返してきた相手の顔が、自分の顔になっているなんて。
ミツルギは見た目だけは完璧だった。
茶色の髪、茶色の目、彫りの深い顔。背が高く、足も長い。
勉強も運動もできて、当然モテた。
それに対して僕は黒髪黒目、小柄で細い。
成績は良かったが運動はダメ。
そんな僕を、ミツルギは目の敵にしていた。
取り巻きも右に倣えで、昼休みはジュースやコーラを買いに行かされて、まともに食事もできなかった。
やっと高校を卒業して、目標の大学に入り、ほっとしたところでまたあいつに会い、こんな場所まで連れてこられた。
これから鏡を見るたびにぎょっとするのはごめんだ。
何か方法はないかと考えるが、何も浮かばず、ため息だけが出た。
ノックの音。
「はい」
ブラウンが朝食の乗った盆を持って入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう。これをどうぞ。時間になったら迎えをよこします」
がちゃがちゃ音を立てながら食事を済ませ、神子についての本を読む。
神子は想像以上にすごかった。
治癒ができる。
治癒ができる者はそこそこいるが、神子は桁違い。
大抵の怪我は治せる。
そして浄化。
これをしてもらうために神子を呼ぶ。
歴代の神子は浄化で国を救ってきた。
瘴気が溜まるのは大抵遠くの怖い場所。
魔獣が凶暴化し、被害が出る。
その瘴気を浄化するのが神子の役目。
浄化するとは書かれているが、どうやって浄化するとは書かれていない。
これは神殿の人が教えてくれるのかな。
だけど、神子じゃなくてよかった。
そんな怖い場所、行きたくない。
魔力を感じようと床に座って足を組むと、驚くほど柔らかく組めた。
流石ミツルギ、と一瞬思ってしまい、少しへこむ。
へその下を意識すると、昨日はゴルフボールより小さかった。それが、今日はゴルフボール大になっていた。
これもミツルギの体の影響か、と感心しつつ悔しい。
ノックの音。
立ち上がりながら返事をすると、迎えに来たのはブラウンではなく神官見習いだった。
僕を見上げて少し驚いたようだが、
「どうぞ、こちらです」
そう言われ、僕は肩をいからせ、足音高くついていった。
◇◆◇◆◇
ミツルギ・ダイト 茶色の髪 こげ茶の目 背が高く 足が長く イケメン
オオヤナギ・ライト 黒髪 黒い目 小柄 可愛い 手の甲に煙草の火傷の痕
異世界に転移した時に、体が入れ替わった。名前はそのまま。
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