02 もう一つのプロローグ
予備校の帰りだった。
どうせまた落ちる。
そんな未来しか見えない、つまらない一日。
そのはずだった。
あいつを見るまでは。
オオヤナギ・ライト。
長年のうさばらしの相手。
そして、俺が落ちた大学に受かった男。
なんでお前なんだよ、と思った。
目が合う。
あいつが驚いた顔をする。
その顔が、妙に癪に障る。
次の瞬間、理解できない光景が広がった。
あいつの足元に、光る魔法陣。
何だそれ、と息を呑む。
まさか召喚か、と直感した。
またあいつが選ばれるのか。
胸の奥から、どろりとした怒りが湧き上がる。
オオヤナギは魔法陣から逃げようというのか、よたよたと走る。
違うだろ。
選ばれるのは俺だ。
そう思った瞬間、必死に念じていた。
俺を選べ。
俺だ。
オオヤナギじゃない。
魔法陣がゆらりと動いた。
一瞬、俺の足元へ寄る。
来た、と思った。
だがすぐに、あいつの方へ戻っていく。
ふざけるな。
逃げるオオヤナギを見て、体が勝手に動いた。
腕を掴む。
そのまま力任せに引き寄せる。
俺を選べ、と叫んだ。
俺だ、と叫んだ。
オオヤナギじゃないと。
そのまま、魔法陣の中へ。
落ちた。
視界が反転する。
衝撃はあったが、痛みはない。
下に柔らかい感触。
オオヤナギの上に落ちたらしい。
最後くらい役に立つじゃないか、と思う。
立ち上がろうとして、違和感に気づいた。
手が小さい。
細い。
そして、手の甲の火傷の跡。
昔、自分があいつに押し付けたタバコの跡。
なるほど、と理解する。
体をまさぐる。
軽い。小さい。
入れ替わりか。
思わず笑いそうになる。
これはいい。
そのとき、声がした。
「神子様、よくおいで下さいました」
顔を上げると、二人の男が跪いている。
整った顔の男と、年老いた男。
どちらが上かを一瞬で測る。
「どうぞ王宮へ」
王子か、と判断する。
「教会は全力で支援を」
こっちは神官だろう。
状況は完璧だった。
だがここで調子に乗るのは愚かだ。
声を震わせる。
「ありがとうございます……なにもわかりません……神子様って……僕が……」
自分でも笑えるほど、弱々しい声だった。
「まずはお座りを」
差し出された手を取る。
この立場は悪くない、と思う。
「神子様……あの男は?」
オオヤナギを見る。
処分対象か、と瞬時に判断する。
だが今はまだ早い。
「彼に悪気はありません……罰を与えないでください……」
嘘だが、問題ない。
「彼は決して……」
適当に言葉を濁す。
「大丈夫だ。悪いようにはしない」
当然だろう、と思う。
「はい……お願いします」
名前を聞かれる。
一瞬、オオヤナギと名乗るか迷う。
だが口は勝手に動いた。
「……ミツルギ・ダイト。ミツルギが家名です」
しまったと思ったが、どうでもいい。
この世界に俺を知る者はいない。
視線を向けると、オオヤナギは連れて行かれるところだった。
振り返るあいつに、笑いかける。
安心しろよ、と心の中で呟く。
これからも役に立ってもらう。
ずっと腐っていた。
何も上手くいかなかった。
だが今は違う。
選ばれたのは俺だ。
神子。
王宮。
教会。
そして、あいつ。
全部、俺のものだ。
気弱そうに答えながら、内側では笑っている。
いい世界だ。
最高じゃないか。
俺の異世界無双が、始まった。
◇◆◇◆◇
ミツルギ・ダイト 茶色の髪 こげ茶の目 背が高く 足が長く イケメン
オオヤナギ・ライト 黒髪 黒い目 小柄 可愛い 手の甲に煙草の火傷の痕
異世界に転移した時に、体が入れ替わった。名前はそのまま。
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