表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/41

39 フェルナンド

 39 フェルナンド


 突然だった。


 後ろから気配がしたと思った瞬間、左右から腕を掴まれた。


「え……?」


 振り返る間もなかった。


「ルーク、静かにしてもらおう」


 低く押さえた声。聞き覚えがある。


「ここで騒ぐな」


 僕の腕をつかんだ手は優しくなかった。


「すぐに行くぞ」


 反対側から声がする。


「どこへ?」


 答えは返ってこない。ただ、力が強くなった。


「ちょ、ちょっと待ってください。どういうことですか?」


「説明は後だ。今は動くな」


 短く切り捨てられる。


 周囲を見れば、護衛らしき男たちがすでに囲んでいて、冒険者に向かっている。


 逃げられない。


 そう理解した瞬間、喉の奥がひゅっと鳴った。


「わかりました」


 抵抗しても無駄だと判断して、僕は力を抜いた。


 そのまま、有無を言わさず外へ連れ出される。


 メアリーとポールもいたが、なにも言えなかった。


 豪華な馬車が待っていた。


 場違いなくらいに、立派なものだった。


「乗れ」


 促されるまま、僕は中に押し込まれる。続いてマーシャルが乗って来る。


 扉が閉まる音がやけに重く響いた。


 すぐに馬車が動き出す。


 がたん、と揺れて、町の石畳を進んでいく感覚が伝わってくる。


「どこへ行くんですか」


 返事はない。



 ただ、速度が上がっていくのだけは分かる。


 町を出るつもりだ。


 その事実が、じわじわと胸を締めつける。



 僕はただの冒険者だと言いかけて、言葉が詰まる。


 僕は何だ。


 ただの薬草採りだ。


 でも、ここの瘴気をなんとかしたいと思っていたのに……


「ここを動けない……」


 小さく呟いた、そのときだった。


 外がざわついた。


 馬のいななき。


 急に、馬車が大きく揺れて止まる。


「止まれ!」


 鋭い声が響いた。


 その声を聞いた瞬間、胸が跳ねた。


「フェルナンドさん?」


 思わず、名前がこぼれる。


 外で言い争う声が聞こえる。


「ローレンス、何をしている」


「邪魔をしないでください」


 はっきりと聞こえた。


 間違いなくフェルナンドさんだ。なんだかほっとした。


 逃げ出したのに……黙って。だけど会いたかったんだ。


 会いたかった。その言葉は本当だ。フェルナンド。会いたかった。


 だから、僕は大声で名前を呼んだ。


「フェルナンド!」


「ルーク」


「フェルナンド!」


 馬車の扉が外から開けられた。


 僕は飛び降りて、まっすぐフェルナンドの胸に飛び込む前に、ぎゅっと胸に抱え込まれた。


 フェルナンドの腕は、思っていたよりも強くて、逃げ場なんて最初からなかったみたいに、僕を閉じ込めた。


「ルーク」


 低く、押し殺した声が耳元で響く。


 その声に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。


「勝手に、いなくなるな」


 怒っている。


 はっきりと分かる。


 けれど。その腕は震えていた。


「ごめんなさい」


 自然と、言葉がこぼれる。


 言い訳なんて、出てこなかった。


 ただ、胸の奥にあったのは、逃げたことへの後ろめたさと、会えたことへの、安心だった。


 フェルナンドは、しばらく何も言わなかった。


 そのまま、僕を抱えたまま動かない。


 周囲の空気が、ぴりついているのが分かる。


「フェルナンド、手を離してもらえますか」


 ローレンスの声が、静かに割り込んできた。


「その者は、こちらが保護する」


 マーシャルがいらいらとした声で言った。


「保護?」


 フェルナンドが、ゆっくりと顔を上げる。


 その視線が、鋭くローレンスを射抜いた。


「拉致の間違いだろう」


 そこにギルドマスターをはじめとして冒険者がやってきた。


「ギルド員に御用ですか?」


「今、瘴気対策について話していたのですよ」


「なに?」「瘴気?」


 とローレンスとマーシャルが反応した。


「フェルナンドがいてくれたらと思っていたら来てくれた。よかった」


 僕は全員に聞こえる様に大きな声で言った。


「あぁ瘴気だ。勇敢なやつらが確認してくれている。時間がない」


「よし、話し合いの続きをしなくてはいけないな」


 フェルナンドはそう言うと僕の腰をしっかりと抱いて


「ギルドで話せばいいな」と言った。


 ◆◇◆◇◆


「報告によれば、そこには瘴気が漂っている。ただし、報告によれば、瘴気はシーツくらいの大きさの網状の黒い霧と言うか塊で、地面をはいずり回っている。そしてそれが魔獣に覆いかぶさると魔獣が大きく、狂暴になるそうだ。そして瘴気は気配がなく、近づかれてもわからないそうだ」


「なるほど、文献とは少し違うな」とマーシャルが偉そうに言った。


「矢に浄化を付与して打ち込んだらどうでしょうか?」とローレンスが僕を見ながら言った。


 そこに、クリフたちが入って来た。


「おぉ、帰ってきたな」とマスターが言うと


「はい。もう一か所ありました」とクリフは言いながら僕を見た。


 僕はうなずいた。フェルナンドがいるんだ。悪い事にならない。


「そちらのほうが瘴気は多かったのですが、ルークからお守りに石を貰っていたので、それを投げつけてみました。え――と」


「そこからはわたしが説明します。最初、瘴気に一個投げつけると、その石が重りになったみたいに瘴気が地面に縫い付けられました。そこに何個か石を投げつけると瘴気は消えました」


「なんと、石でもいいのか」とローレンスが立ち上がった。












いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ