38 見つかった
38 見つかった
あの町の魔獣の襲撃を思い出す。あの時はフェルナンドがいたから、町は助かった。
だが、今回は彼がいない。腕の立つ冒険者も、いるけど、基本的に彼は独立している。彼らをまとめてことに当たれるとは思えない。
フェルナンドだから彼らをまとめることが出来た。
だから、町は助かった。
でも今回は違う。
「フェルナンドさん、いないんだよな」
誰に言うでもなく、小さくつぶやく。
腕の立つ冒険者はいる。
けれど、彼らは基本的に独立している。
「まとめて動けるか……無理だろうな」
頭では分かっている。
それでも、焦りが消えない。
胸の奥がざわついて、息がうまく吸えない。
「僕に、何ができる……?」
問いかけても、答えは出ない。
だけど、なにかできることを見つけようと、二階にあるギルドの図書館に行った。
瘴気についての資料が増えている。ギルドマスターが取り寄せてくれたのだろう。
本棚から瘴気についての資料を引き抜く。
ぱらぱらとページをめくる。
「全部、推測か」
書かれている内容は曖昧で、確証のあるものは何一つない。
挿絵に目を落とす。
黒いもやのようなものと、それにひとりで対峙する神子の姿。
「これ、違うな」
僕たちが森で見た瘴気は、こんな形じゃなかった。
「もっと、網みたいに広がって、動いてた」
あのときの光景が蘇る。
黒いものが、魔獣に覆いかぶさって。
「あれ、本当にまずい」
挿絵の瘴気は、どこかで見たことがあるような形をしていた。
この世界にそんな概念はないはずなのに。
「悪魔、みたいだな」
思わず苦笑する。
似ているのが、少しだけおもしろいと思ってしまう自分がいる。
でも、現実は笑えない。
「クリフたちと行ったとき……」
手のひらを前に出したあの瞬間を思い出す。
「消えたんだよな」
確かに、瘴気は消えた。
でも、「あの数は、無理だ」
あれが一つや二つならいい。
けれど、あのとき見た数。
「速さで負ける」
ぞくりと背中が冷える。
「襲われるなんて、まっぴらごめんだ」
思わず本音が漏れる。
護衛がいたとしても。
「普通の人じゃ、どうにもならないだろ……」
あれに触れた魔獣がどうなったか。
見たはずだ。
「怪物になる」
それが人だったら? いやだ。想像したくない。
町に来たら、どうなるかなんて。
「逃げたい」
ぽつりと、口からこぼれた。
その言葉を振り払うように、本を閉じる。
そして、階段を降りた。
一階に出たところで、見覚えのある顔が目に入る。
「あっ」
森で会った女性だった。
彼女は僕を見つけると、ほっとしたように表情を緩めた。
「お礼が、ちゃんと言えなかったので」
「いえ、もう伝わっています」
僕は軽く頭を下げる。
「わざわざ、いらしたんですね」
「えぇ。それで……もしよければ、食事に招待したくて」
「……食事?」
一瞬、言葉に詰まる。
「ぜひ、いらしてください」
「いえ、それは……よくないです」
僕は慌てて首を振る。
「一応、僕も男ですので」
そう言うと、彼女は少しだけ目を丸くしたあと、柔らかく笑った。
「遠慮なさらないで」
「いえ、そういうわけには……」
困る。
すごく困る。
こういうのは、本当に苦手だ。
「どうしよう」
心の中で呟く。
瘴気のこともあるのに、こんなところで足止めされている場合じゃない。
「逃げたい」
さっきと同じ言葉が、また浮かぶ。
そのときだった。
「ルーク。探したぞ」
低く、よく通る声。
背筋がぴんと伸びる。
「え?」
振り返るよりも先に、空気が変わる。
「女、下がれ」
短く、鋭い一言。
間違いない。
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