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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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37 近寄る瘴気

 37 近寄る瘴気


 僕は、森で足をくじいた女性を家まで送り届けたあと、ふと足を止めた。


「あ……」


 名前、聞いてない。


 家の場所も顔も覚えているのに、一番大事なところが抜けている。


「まぁ、いいか……」


 また会うこともあるかもしれないし、その時に聞けばいい。


 そう思い直して、僕はギルドへ向かった。


 森の浅いところで森猫を見たことも、報告しておかないといけない。


 ギルドの扉を押して中に入ると、森猫のことを頼んだグリスたちが戻ってきたところだった。


「ルークさん、ちょうど良かった!」


 一人が駆け寄ってきて、袋を差し出してくる。


「魔石と毛皮、持って来たんですよ」


 僕は首を横に振った。


「それは、君たちのだよ。後を任せたのだから」


「でも……」


「いや、本当に。君たちのでいい」


 少し押し問答になりかけて、僕は話題を変えた。


「それより、ちょうど良かった。森のことで報告したいんだ」


 彼らが顔を見合わせる。


「森の浅いところに森猫が出ただろう。場所が場所だからね」


「確かに、あの場所ってやばいですね」


「うん。ギルドから注意喚起を出してもらった方がいいと思う。一緒に言ってくれる?」


 一瞬迷ったようだったけど、


「はい」


 と素直にうなずいてくれた。


 僕たちは一緒に窓口へ向かった。


「今朝、薬草採りに森へ入ったんです」


 僕は受付に声をかけた。職員が顔を上げる。


「森の浅いところで森猫が二頭出ました。倒しましたが、注意喚起をお願いしたくて」


「まぁ、そうですか……最近、妙な報告が増えているんです」


 職員は少し眉をひそめた。


「本部にも連絡は入れていますが……とりあえず張り紙を出しておきますね」


「お願いします」


 僕は軽く頭を下げて、その場を離れた。


 するとグリスたちが、


「ルークさん。森猫、ありがとうございます。それで……一杯、おごらせてください」


「え?」


 思わず聞き返すと、他の三人もにこにこしている。


 断る理由も思いつかなくて、


「それは、嬉しい」


 と答えた。


 ギルドのロビーの一角。簡単な食事と酒が出る場所に、僕は腰を下ろした。


 僕がここで飲むのは珍しいからか、周りの視線を少し感じる。


「ルーク、珍しいな」


 顔なじみの冒険者が笑いながら声をかけてきた。


「うん、たまには」


「飲むこともあるんだな。今度一緒にどうだ?」


「機会があればね」


 そう答えていると、急に扉が勢いよく開いた。


「仲間が大怪我をした!」


 息を切らした男が叫ぶ。


「今、運んでる! でもポーションが足りない!」


 一瞬で空気が変わった。僕は立ち上がる。


「僕が行くよ。案内して」


「ルークさん……お願いします!」


「行ってくる」


 グリスにそう声をかけて、外へ出ようとした瞬間。


 普段、大盾を背負った男が、息を切らして倒れそうな案内役をひょいと担ぎ上げた。


「道を教えろ」


 男は森の方を指差す。その案内に従って走った。


 湿った土の匂いが鼻をつく。やがて、前方に人影が見えた。


 二人が、それぞれ怪我人を背負って必死に歩いている。


 大盾の男がすぐに駆け寄り、片方を抱え上げた。もう一人も引き受ける。


 近づいて見た瞬間、僕は息を呑んだ。


 片方は腕がなく、わき腹が深くえぐられている。


 もう一人は顔の半分が潰れ、足もひどい状態だった。


 生きているのかもわからない……普通なら、助からない。


 それでも、僕は声を出す。


「大丈夫。出血が多いだけです」


 周囲が一瞬、静まり返った。


「え?」


「出血が多いだけですね」


 僕はそのまま手を当てて、魔力を流す。


 肉が繋がり、骨が整い、血が止まっていく。


「出血が多くて、驚きましたね」


 わざと軽く言うと、


「あ……そうですね」


 と誰かがぎこちなく答えた。


「ありがとうございます」


 別の男が小さく言う。


「そうだな。出血が多くて大変だった」


 皆、合わせてくれた。


 しばらくして、怪我人がゆっくりと目を開けた。


「生きてる?」


「命拾いしたな」


 大盾の男が肩を叩く。僕は少し息を吐いた。


「ちょっと傷が深かったけど、間に合って良かった」


 血は戻らないけれど、命は繋がった。


「ゆっくり戻ろうか」


 僕が言うと、皆がうなずく。怪我人は支えられながら立ち上がった。


 そのとき、前方から足音がした。


「ルーク!」


 グリスたちが駆けてくる。


「水と食べ物、持って来ました!」


「助かる。水を」


 怪我人に水を渡すと、震える手でそれを受け取った。


 グリスとアズルも肩を貸し、怪我人を支える。


 僕はその様子を見ながら、ゆっくりと歩き出した。


 瘴気の影響はもう、ここまで来ている。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

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