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神子の余分  作者: 朝山 みどり


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18/19

18 ギルドマスターの頼み フェルナンド目線

 18 ルークという冒険者


 彼らより少し早くギルドに戻ってきた。


 若いのに囲まれつつ、ルークたちを観察した。



 精算を終えると、赤毛の男が周囲をけん制するように声を上げた。


「ルーク、やっぱり俺たち、いい組み合わせだよな」と赤毛の男が言う。


「そうだ、今日よくわかった!」と弓の男が声を張る。

「間違いない!」と剣の男が続く。

「やりやすかった」と盾の男も加わる。


 男たちはルークを取り囲み、口々に言った。


 ルークは苦笑して肩をすくめる。


「悪いが、やっぱりソロが気楽でいい」とルークが答える。


「そうか。しつこく誘って嫌われたくないが……時々は一緒に行こうぜ。明日はどうする?」と赤毛の男が聞く。


「明日は休みだ。図書館に行く」とルーク。


「そうか。ゆっくり休め」と赤毛の男。


「ありがとう。それじゃ」とルークは軽く手を上げ、そのままギルドを出ていった。



 仲間だの絆だのと言いながら、いざとなれば切り捨てる連中を何度も見てきた。

 だからこそ、ああして最初から踏み込みすぎないのは、ある意味で誠実だ。


 ルークが去ったあと、弓の男が口を開く。


「お高く止まってるよなぁ」


「お高くないさ。話せばちゃんと返事が来る」

 と赤毛の男が肩をすくめる。



「一緒にいてやりやすいのは確かだ」と盾の男がうなずく。


「確かに、やりやすい」と剣の男も言う。


 赤毛の男が笑う。


「とりあえず飯に行こう。今日は少し贅沢できる」

 四人は上機嫌でギルドを出ていった。


 悪くない連中だ。

 ああいう連中が増えれば、無駄死には減る。


 だが現実は違う。

 判断を誤るやつ、欲に負けるやつ、命の重さを軽く見るやつ。

 そういう連中が、結局は周りを巻き込んで死ぬ。


 その尻拭いをするのが、いつも決まった側だ。



 俺が考えを巡らせていると、受付から声がかかる。


「フェルナンドさん、マスターがお呼びです」


 やはり来たか。


 呼ばれる前からわかっていた。

 この状況で、放っておかれるはずがない。


 案内されてマスター室に入ると、マスターは深刻な顔でこちらを見た。


「あぁフェルナンド、戻ってくれて助かる。予想より遅かったが……瘴気はやはり広がってきている」


 遅かった、か。


 わざわざ口にするあたり、焦りが滲んでいる。


「ハイタック王国の神子は?」


「二人現れたと聞いたが、はっきりしない。浄化を始めたらしいが……どうにも遅いようだ」


 期待している顔じゃない。

 あてにしていない顔だ。


 賢明だな。


「魔獣はなんとか倒せるが、負担が大きい。神子に頼るのもいいが、ハイタック王国は……強気というか、扱いづらい国だからな」とマスター。


 扱いづらい、で済ませているが、実態はもっと厄介だ。

 あの手の国は、恩を売ることには貪欲だが、責任は取らない。


 こちらが消耗したあとに、成果だけ持っていく。

 そういう連中だ。


「確かに。自分たちでなんとかできるなら、それに越したことはない」


 誰かに任せるということは、主導権を渡すということだ。

 それだけは避けたい。


 マスターは机の地図を指で叩く。


「冒険者を集めて訓練する案が出ている。国が冒険者を正式に雇う形だ」


 ようやくそこまで来たか。


 遅い。だが、悪くない。


「国で冒険者を……?」


「あぁ。騎士団も頑張っているが、魔獣相手は冒険者のほうが慣れている。連携して対処すれば被害も減るだろう、という意見だ。それにこの近くで瘴気が増えてきている」



 そうか、迷ってる暇はないってことか。


 統率が取れるか。

 命令が通るか。

 そして――誰が責任を取るのか。


 そこが決まらない限り、この案はただの理想論だが、瘴気も魔獣も待ってくれない。


 少し考えてから口を開く。


「冒険者を無駄に死なせないという意味では、悪くない」


 マスターは静かにうなずいた。


「だが、まとめ役が必要だ。冒険者に尊敬され、国にも顔が利き、騎士団とも話ができる人間が」とマスター。


 来ると思っていた言葉だ。


 視線がまっすぐこちらに向けられる。


 逃げ道は最初から用意されていない。


「お前が帰ってきて良かった。この町に戻ってきてくれて良かった」


 そう言うしかない状況に追い込まれているのは、理解できる。


 だが、それでも軽くは受け取れない。


 背負うことになるのは、人の命だ。

 一つでも判断を誤れば、簡単に崩れる。


 それを知っていて、なお頼んでいる。


「神子が来てくれればいいが、頼む気はないようだ。あてにせず、我々で対処する」とマスターは言い、深く頭を下げた。


 やめろ。


 頭を下げられれば、断る選択肢が消える。


 いや、最初からそんなものはないか。


 ここで引けば、この町は崩れる。

 その先に何が起きるかも、想像できる。


 逃げる理由はいくらでもある。

 だが、残る理由は一つで十分だ。


「あぁ。できるだけのことはする」と俺は答えた。


 口にした瞬間、すべてが決まる。


「助かる」とマスター。


 しばらく沈黙が流れる。


 その沈黙は、確認だ。

 互いに引き返さないという確認。


「動きやすいように、こちらも協力する」とマスター。


 当然だ。それがなければ話にならない。


 俺は短くうなずいた。


 もう後戻りはない。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

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