17 伏し目がちの冒険者 フェルナンド目線
17 伏し目がちの冒険者 フェルナンド目線
一年ぶりにこの町へ戻ってきた。
ここは国で二番目の規模を誇る町で、冒険者も多い。俺にとっては居心地のいい場所だ。
ギルドに入ると、顔なじみの冒険者たちが一斉に声をかけてきた。
「フェルナンドさんだ!」と若い冒険者が声を上げる。
「お久しぶりです!」と別の者が続く。
「戻ったんですね!」
「あっ、フェルナンドさん!」
「戻ってきた。またよろしくな」と俺は軽く手を上げて応じた。
一年も経つと、皆の成長がよくわかる。
ひょろひょろだった少年が、がっしりとした体つきになり、顔つきも引き締まっている。
そのとき、視界の端で何かが光った。
そちらを見ると、茶色の髪に茶色の瞳の男がいた。
少し大きめのマントを羽織っている。光の加減で、何かがきらりとしたらしい。
ただの偶然だと思い、会話に戻った。
だが気づけば、その男を目で追っていた。
男は俺に気づく様子もなく、静かにギルドを出ていった。
翌朝、またその男を見かけた。
薬草採取の依頼を受けていたらしい。
そこへ赤毛の男が近づき、馴れ馴れしく話しかける。
「なぁルーク。そんなショボい依頼やめて、俺たちと一緒に行こうぜ。魔法士でソロなんて無理だろ。俺たちが守ってやるよ」と赤毛が笑う。
「僕は守ってもらうような所には行かないよ。薬草を採るのが好きなんだ」とルークは静かに答えた。
「俺たちが守って奥へ行けば、もっと薬草が採れるだろ? ついでに狩りもするから手伝ってくれよ」
「いや、俺は一人が好きだから」
赤毛が目で合図すると、他の男たちがルークを囲んだ。
少しの間を置いて、ルークがため息をつく。
「仕方ない、今日だけだぞ。それから薬草は必ず採るからな」
そう言って、ルークは歩き出した。
よく見ると、ルークの髪は金茶色で、瞳は黒に近い茶色だった。
あの目に、自分が映るところを見たい。
はっとする。
何を考えているんだ、俺は。
だが気づけば、彼らの後を追っていた。
赤毛の男はルークの隣を歩きながら、しきりに話しかけている。
一行はやがて森の中へ入っていった。
「ここからは魔獣が出るから静かにしてくれ。無駄に戦いたくない」とルークが言う。
「相変わらず慎重だな、ルークは」と赤毛が笑う。
「怖がりだからだよ」とルークは肩をすくめた。
その言葉に男たちは笑いながらも、足取りを緩めた。
「待って」とルークが声をかける。
しゃがみ込み、薬草を摘み始めた。
他の連中も一応、それに倣っている。
しばらくしてルークが立ち上がる。
「待たせてすまなかった。充分だ」
一行は再び歩き出した。
少し進んだところで、ルークがぴたりと足を止めた。
「三頭、向かってきている」
その言葉と同時に、ルークはすっと後ろに下がる。
赤毛ともう一人が剣を抜いた。
弓の男はルークの隣で構え、盾の男は位置をずらして備える。
次の瞬間、角狼が飛び出してきた。
盾の男が盾を叩き、注意を引きつける。
その瞬間、一頭がもんどりうって倒れた。
前足がまとめて拘束されている。
後ろの二頭がぶつかり、三頭とも転がった。
剣を持った二人が一気に斬りかかる。
一頭は起き上がり、盾に突進したが、盾の男がしっかり受け止めた。
弓の男が剣に持ち替えて斬り込むが、やや危なっかしい。
赤毛がすぐに加勢し、無事に仕留めた。
ルークは剣を抜いていたが、使う場面はなかった。
戦闘後、一行は角狼の毛皮を剥ぎ、魔石を取り出す。
手を洗いながら、盾の男が笑った。
「ルーク、さすがだな。この水、ありがたいよ。だけど俺たちがいて良かっただろ?」
「そうだよ、俺たち息が合ってるよな」と別の男も言う。
赤毛がルークの肩を抱いた。
その後も薬草を摘み、双角狼を討伐した。
このときもルークは「三頭来る」と事前に告げていた。
彼らは毛皮と肉を回収しているが、ルークの顔がわずかに青くなっているのに気づいた。
休憩を挟み、一行は帰路につく。
俺は見つからないよう脇道に潜んだ。
だがそのとき、ルークが足を止め、こちらをじっと見た。
「どうした? 何か来そうか?」と赤毛が聞く。
「うん……気配がしたような気がしたけど……気のせいかな」とルークが小さく答える。
「ルークの怖がりが出たんだな」と誰かが笑う。
「俺たちといれば安心だぞ」と赤毛が言い、ルークの手を取った。
「やめろよ。エスコートはいらないよ」とルークが苦笑する。
赤毛はあっさり手を離し、にっと笑った。
「よし、最後まで気を抜かずに帰るぞ」
その言葉に、ルークは小さくうなずいた。
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