16 慣れて来た
16 慣れてきた
僕はその後も薬草を採りながら、小さな魔獣をしとめていった。毛皮を剥ぎ、肉を取り、魔石を回収する。
最初の頃のように吐くことも少なくなって、清浄の使い方もだいぶ上手くなってきたと思う。
そして僕は、南へ向かう馬車に乗った。
この馬車の護衛は五人組の冒険者だった。
干した果物をかじっていると、女性の一人が僕に声をかけてきた。
「ねぇ、それどこで買ったの?」とマギーが言う。
「これは貰った」と僕は答えた。
「貰ったって、どうやって?」とマギーが目を丸くして聞く。
「畑を荒らす土猪を退治したら、くれたんだ」と僕は説明した。
「へぇ、それで?」とセシーが身を乗り出す。
僕は少し照れながら続ける。
「夕食もご馳走になった。美味しかった。……美人の娘さんがいた」
「なるほどね……手を出したの?」と別の女性が声を潜めて言う。
「手を出す?」と僕は首をかしげる。
「だから、その美人に手を出したかって聞いてるの!」とマギーが少し強い口調で言った。
そのとき、弓を持った青年が割って入る。
「ほら、怖がられてるよ。いい男にがつがつしすぎだって」と青年が笑う。
「俺はキール。こっちがマギー、そっちがセシー。盾を持ってるのがミント。すました顔してるのがポールだ」
「僕はルーク」と僕はキールに向かって名乗った。
「どこまで行くんだ?」とキールが聞く。
「南の国まで」と僕は答える。
「ソロなのか?」とキール。
「あぁ」と僕はうなずく。
「でも飯くらいは一緒に食うだろ。夕食は一緒に食おう」とキールが言う。
「他の人に聞かなくてもいいのか?」と僕は確認する。
「かまわん。歓迎だ」とキールが言うと、ミントとポールも手を上げて応じた。
教えられた店に向かうと、キールが待っていた。
「キール、一人?」と僕が聞く。
「あぁ。パーティだからって、いつも一緒に行動してるわけじゃない」とキールが答える。
「そういうものなのか……」と僕がつぶやくと、キールが笑って背中を押した。
「ほら、ここだ。揃ってるはずだ」
店に入ると、四人がジョッキを上げて迎えてくれた。
改めて乾杯すると、マギーが少し怒った口調で言う。
「キール、用事があるって言ってたけど、ルークを迎えに行くつもりだったの?」
「そうだとしたら、どう思う?」とキールが返す。
「相変わらず嫌な奴だと思う」とマギーが言う。
それを聞いてポールが笑う。
「そういう答え方はうまくないね、マギー」とポールが言った。
二人のやり取りにどう反応していいかわからずにいると、セシーが優しく声をかけてきた。
「この店、煮込みが美味しいよ。エールとも合うし」
「それを……あと、皆でつまめるものを」と僕は言った。
食事が進んだ頃、セシーが僕の腕にすがりつく。
「ルークってすごくかっこいいのに、自信なさそうで伏し目がちで……余計気になるのよ」とセシーが言う。
「セシー、やめろ」とミントが言い、セシーを引き剥がした。
僕は少し多めにお金を置いて席を立つ。
「ちょっと酔ったみたいだ。先に帰る。また」と僕は言った。
店を出て宿へ向かうと、キールが隣に現れた。
「俺も出てきた」とキールが言う。
しばらく無言で歩いたあと、キールが口を開く。
「僕たちの護衛は明日までだ。俺たちはダンジョンに行く。ダンジョンに入ってみないか?」
「いえ、怖いところは苦手なので……」と僕は答えた。
キールは少し驚いた顔をする。
「そういうところ……あっさり怖いって言えるんだな。それって、自分に自信があるってことだよ」
「そんなものないよ」と僕は言う。
「いや、大抵の人間は怖くないふりをするんだよ」とキールは言った。
キールが僕の頬に手を当てる。
僕はその手を振り払い、静かに言った。
「怖いものは怖い。怖い所には行きたくない。それだけだ」
翌朝、顔を合わせるとセシーが話しかけてきた。
「ルーク、昨日は酔っちゃって……私、失礼なことしなかった?」とセシーが言う。
「おはよう。どうだったかな?僕も酔って先に帰るくらいだったから、覚えてないんだ」と僕は答えた。
「そっか……」とセシーは肩を落とし、ミントの隣に座った。
無事に街に着いて、僕は翌朝の馬車を予約した。
屋台でいろいろ買い込んで宿へ戻る。
翌朝、馬車乗り場で待ちながら、僕は南の国、アガペーナ王国へ思いを馳せていた。
僕は馬車を乗り継ぎ、南の国へ入った。
いくつか、町を過ぎて海辺の町に落ち着くことに決める。
峠から見た町を一目で気に入ったからだ。少し歩いて見ても落ち着いていた。
なによりも図書館が充実していた。
食事が気に入った宿の一室を長期で借りた。
こうして僕の、ソロの冒険者としての生活が始まった。
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