15 魔獣との戦い
15 魔獣との戦い
馬車は急に速度を上げたかと思うと、ぎゅっと止まった。
戦闘は少し離れた場所で行われている。
僕は板を少しずらして外を覗いた。
――迷彩狼だ。
四人で相手をするには、数が多すぎる。
恐怖を押し殺しながら、僕は外へ出た。
残った乗客に向かって言う。
「もう一度、閂をかけてください」
サミーの大盾に敵を集めきれず、迷彩狼が散開しているのが見えた。
僕はサミーの背後に立ち、できるだけ迷彩狼を狙って石を打ち出す。
当たりはしない。
だが、迷彩狼の注意はサミーに集中する。
――二十メートル。
そこまで来れば、口の中に水を発生させられる。
僕は集中して、迷彩狼の口内に水を生み出した。
突然の水に、迷彩狼がむせる。動きが乱れた。
「今だ!」とデイビーが叫ぶ。
デイビーとクロスが切り捨てていく。
断末魔。
血の匂い。
……無理だ。
僕は耐えられなかった。
馬車に戻ろうとして、地面に四つん這いになり、そのまま吐いた。
「大丈夫か」とデイビーが背中をさする。
だが止まらない。
胃が空になるまで吐き続けた。
イジュが来てくれて、「任せて」と言いながら清浄で服や顔をきれいにしてくれる。
デイビーの手を借りて馬車に戻り、僕は崩れるように座席に座った。
乗客の一人が「これを」と水を差し出す。
「ありがとうございます」と僕は小さく礼を言い、それを飲んで目を閉じた。
ふっと目が覚めた。
「目が覚めた?」とイジュが覗き込む。
「あぁ……寝てたのか」と僕は答える。
「ああいうのは初めて?」とイジュが聞く。
「うん、参った」と僕は苦笑する。
「自然と平気になるさ」とデイビーが言う。
「そういうもんだ」とサミーも続ける。
「そうなんですね」と僕はうなずきながら体を伸ばした。
「もうすぐ町だ。ゆっくり休むといい」とデイビーが言う。
宿で休みながら、僕はさっきの光景を思い出していた。
迷彩狼から魔石を取り出す作業。
魔石を抜くと魔獣の体が消えていく。
毛皮が欲しければ先に剥ぎ、肉が欲しければ先に取る。
最後に魔石を抜く。
小説とは少し違う。
でも、この世界はこういう仕組みらしい。
四人は慣れた手つきで魔石を取り出していた。
僕は思う。
この世界で生きていくと決めた以上、これは克服しなければならない。
魔石を売った代金を分けてもらい、南の国へ向かう資金の目処が立った。
終点で四人と別れたが、南行きの馬車は来週だという。
僕はギルドで依頼を受けてみることにした。
初心者らしく、薬草採取の依頼を受けて森へ向かった。
周囲を見回しながら歩いていると、叫び声が聞こえた。
急いで向かう。
森猫と子供たちが戦っていた。
いや、逃げようとして逃げられない状態だった。
「伏せろ!」と僕は叫ぶ。
子供三人は素直に従った。
まず石を出して森猫の注意を引く。
向かってきた森猫の口に水を出す。
突然の水に混乱する森猫。
子供たちも驚いていたが、僕は叫ぶ。
「倒せ!」
その声に、子供たちは剣を構えて斬りかかった。
最後に僕へ向かってきた森猫に剣を向けたが、結局は子供が斬って倒した。
「ありがとう、お兄さん!」と三人が声をそろえる。
「どういたしまして」と僕は答える。
「この魔獣、魔石以外に使い道ある?」
「あるよ、毛皮。肉は臭いから誰も食べない」と子供の一人が答える。
「じゃあ、毛皮の取り方を教えて」
僕は三人に教わりながら、吐き気をこらえて毛皮を剥いだ。
魔石を抜くと、森猫は消えていく。
水を出して、自分と三人の手を洗う。
「お兄さん、水かぁ……それだけ出せるといいよね」と一人が言う。
「僕も水だけど、やっとコップ一杯くらい」と別の子が少し残念そうに言う。
僕はおへその下を指しながら言った。
「この辺に何かあるって感じる?」
「わからない……」と少年が首を振る。
「こんな場所じゃわからないか。ベッドに入ったとき、探してごらん」
「見つかったら?」と少年が聞く。
「それを右とか左に動かしてみて。水の量が増えるかもしれない」
そう言うと、少年は目を輝かせた。
「寝るとき暇だし、やってみる!」
僕は毛皮と魔石を三人に渡した。
「これは君たちのだ」
「いいの!? 本当に?」と三人が驚く。
「うん。僕は薬草を採るからね」
「もう少し奥に行くから、ここでお別れ。気をつけて」
僕は手を振り、森の奥へ向かった。
背後で三人の声が聞こえる。
「あの人、強いのか弱いのかわからないね」
「とりあえず、いい人だ」
「違いない」
その言葉に、僕は少しだけ笑った。
町を歩いて装身具を見てみたら、付与が見えた。
おぉここまで能力が上がったのか自分に驚く。
「魅惑の香り」「清浄」三人の顔が浮かんだ。かならず恩を返す。
「幸運」「減量」
まちまちだけど、売り場には「恋の出会い」って書いてある。
誰も気にしないで買うんだな。それに付与があるのとないのが並んでいるし……
「幸運」の付与がある腕輪と、なにもない腕輪を買った。
自分で付与をつけてみるつもりだ。
すんなり、付与が出来たが、商売にするなら装身具やになるしかないな。
これは封印しよう。
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