14 脱出
14 脱出
三人が休みの日まで、僕は長屋の部屋に身を潜めていた。
門を出る方法は何度も考えた。
三人で出て二人で戻るのは、門番に怪しまれる。
かといって、僕ひとりで抜けるのは危険すぎる。
――三人に見せかけた四人が出て、三人が戻る。
これしかない。
問題は、どうやって見せかけるかだ。
三人は仕事の合間に門の出入りを観察し、ようやくひとつのやり方にたどり着いた。
借りた服を身につけ、僕はビルとケントの間に並んで歩いた。
できるだけ普段通りに、自然に振る舞う。
服と、ペギーからのマントの代金は餞別だと言われ、受け取ってもらえなかった。
ジョンは少し遅れて歩き、タイミングを合わせる役だ。
門へ向かう人の流れにまぎれ、他のグループとひと塊になる。
ビルが外出許可証を出そうとして、わざと手間取った。
「なんだよ」「早くしろ」
後ろから苛立った声が飛ぶ。
その瞬間、僕とケントは門の外へ出た。
門番があわてて止めに入り、ケントがすぐに戻って頭を下げる。
「すみません、うっかりです」
「二人出ただろ。もう一人は?」と門番が眉をひそめる。
「ここです」とジョンが手を上げて合流する。
「俺たち、いつも三人です」とジョンが平然と言った。
ビルが三人分の許可証を差し出す。
門番は一瞬だけ違和感を抱いたはずだ。
だが後ろからの怒号に押され、確認は流された。
僕はそのまま、人の流れに溶け込んで離れた。
振り返らない。
振り返れば終わる気がした。
こうして、僕は姿を消した。
そして、僕は西へ向かう馬車に乗っていた。
それが最初に乗れる馬車だったから、そうした。
護衛として四人組の冒険者が同乗している。
盾の男、弓の男、大剣の男、杖を持つ女。
彼らは場慣れした空気をまとっていた。
「ねぇあなた、冒険者?」と杖の女が声をかけてきた。
「うん、登録だけだけど」と僕は答える。
「私はイジュ。回復とか支援をやってるの。あなたの名前は?」と女――イジュが言う。
「僕はルーク。取り柄は特にない」
「そう? 大丈夫よ、わたしが回復できるから」とイジュが笑う。
「イジュの悪い癖だな。いい男を見るとすぐこれだ」と盾の男が茶化す。
「俺はサミーだ。弓がデイビー、大剣がクロス」とサミーが名乗る。
「よろしく、ルーク」とデイビーが軽く手を上げる。
「よろしくな」とクロスが低く言った。
ルーク。
それが今の僕の名前だ。
他人からその名で呼ばれたのは、これが初めてだった。
――ここからが、本当の始まりだ。
胸の奥が、少しだけ軽くなる。
四人は王都を拠点にしているが、この先のダンジョンで稼ぐ予定らしい。
護衛依頼で移動費も浮き、報酬も入る。
うまい話だと、素直に思った。
「今夜泊まる町って、どんなところ?」と僕は尋ねる。
「近くに寂れた鉱山があってね。そこから出るクズ宝石で作った装身具の店が多いんだ。宝石はクズだけど、おまじない程度に付与が施してあるんだ」とサミーが答える。
「付与?」
「大した付与じゃないけど、『魅惑の香り』『出会い率増』『補足』とかね。効き目があるのかどうかわからないけどね」
「だけど、意外と人気で、王都からも仕入れに来るよ」と続ける。
「へぇ。でも僕には関係なさそうだ」と僕は肩をすくめる。
「だな」とサミーが笑った。
そのとき、馭者の声が鋭く響いた。
「右から来る!」
護衛の四人が一斉に立ち上がる。
窓に板をはめ、外へ飛び出していく。
「中から閂をかけろ!」とサミーの声が飛ぶ。
扉が閉まる。
僕は息をのんだ。
静かに始まると思っていた。
そんな甘い考えは、一瞬で吹き飛ぶ。
どうやら僕の異世界生活は、最初から騒がしいらしい。
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