13 神官長と神官の話し合い
13 神官長と神官の話し合い
その頃、神殿の奥――厚い扉に閉ざされた会議室には、重たい空気が沈んでいた。燭台の火がゆらりと揺れ、三人の影が壁に伸びる。
神官長は机の前に立ったまま、指先でゆっくりと木目をなぞっていた。
ブラウン神官とマイル神官は向かいに控え、言葉を待っている。
やがて、神官長が低く口を開いた。
「……報告は受けている。だが、もう一度確認する。事実なのか」
その声は静かだが、押し殺した怒りが滲んでいた。
ブラウン神官が一歩前に出て、背筋を伸ばす。
「はい、神官長。複数の証言が一致しております」
神官長は視線を向けたまま、短く命じる。
「内容を言え」
ブラウン神官ははっきりと答えた。
「神子様が神官見習いに指示を出し、『給金を盗まれた』と申告させたと思われます」とブラウン神官が言った。
空気が一瞬で凍りつく。
神官長の手が止まった。
「……誰が盗んだと?」
その問いに、マイル神官が答える。
「オオヤナギです、とマイル神官が言う」
神官長の目が細くなる。
ブラウン神官が続ける。
「さらに、給金はオオヤナギの部屋から発見されました」
神官長の視線が鋭くなる。
「だが」
マイル神官が言葉を引き継ぐ。
「隠し方が不自然でした。まるで見つけさせるためのように置かれていました」
神官長はゆっくりと息を吐いた。
「仕組まれたものか」
「はい。偶然とは考えにくいかと。それにオオヤナギは空間収納ができますから」
「なるほど。そうだな」
マイル神官がうなずく。
「それに、あの者は規律を破らない人物です」
ブラウン神官も続ける。
「穏やかな人物です」
神官長はゆっくりと顔を上げた。
「問題は神子様だ」
その言葉に、場の空気がさらに重くなる。
「王家に寄りすぎている」
神官長は窓の前まで歩く。
「それだけではない。理由は見えぬが……明確にオオヤナギを排除しようとしている」
マイル神官が低く言う。
「嫉妬の可能性もあります」
神官長はわずかに首を振る。
「それにしては、やり方が露骨すぎる」
ブラウン神官が言葉を挟む。
「すでに神殿内で噂が広がり始めています。このままでは権威に関わります」
神官長はゆっくりとうなずく。
「放置はできぬな」
マイル神官が一歩前に出る。
「進言いたします。神子様を一度、神殿から遠ざけるべきです」
神官長が視線を向ける。
「方法は?」
ブラウン神官がすぐに答える。
「静養という名目で王宮へ戻っていただく形がよろしいかと」
神官長はしばらく黙って考える。
燭台の火が小さく揺れた。
やがて、ゆっくりと口を開く。
「……それならば角は立たぬ」
「はい、表向きはあくまで体調不良とします」
神官長は振り返った。
「オオヤナギはどうする」
マイル神官が力を込めて答える。
「保護すべきです」
ブラウン神官も続ける。
「オオヤナギこそ神殿の切り札です」
神官長の目が細くなる。
「理由を言え」
「資質、魔力の扱い、突出しています。神子としての実力は上です」
ブラウン神官が重ねる。
「その者が排除されるなど、あってはなりません」
神官長は二人を見つめたあと、静かにうなずく。
「……よし」
「神子様には静養として王宮に戻っていただく」
「承知いたしました」
「すぐに手配いたします」
二人が答える。
神官長はさらに言葉を重ねる。
「その間に、オオヤナギを見つけ出す。そして二度と同じことが起きぬように、神殿内を引き締めろ」
「はっ、と二人が答える」
神官長は窓の外を見た。
深い夜の闇が広がっている。
その奥を見据え、低く言い放つ。
「……必ず見つけ出せ」
「必ず見つけ出します」
その場にいた三人の意志は、一つに固まっていた。
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