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ゼンイチの日記 ≪異世界での日常≫

ゼンイチの日常を日記で書いてみました。

 この世界に来てから、気づけばもう二週間以上が経った。

 最初はベッドから起き上がるだけでも現実味がなかったけど、人間というのは、意外とどこでも順応するらしい。


 服装について言えば、最初に用意されたものを今でも着続けている。ティアが揃えてくれた、茶色い上着とズボンのセット。それに同じ素材の下着。着心地は悪くないが、選択肢がないというのは思った以上に退屈だ。……まあ、文句を言える立場でもない。こっちではあまり“おしゃれ”という文化が根付いていないらしく、みんな似たような服を着ている。装飾品をつけてる人もいるけど、ほとんどが魔法道具だったりする。


 朝は簡単に済ませる。前日に買っておいた、ちょっと硬めのパンと、焼いたベーコン、そして卵。キッチンと呼ぶには簡素すぎるが、流しと作業台、それに魔石が仕込まれた鉄製のフライパンがあるだけでもありがたい。このフライパン、原理は不明だが魔力を流すと加熱される仕組みになっていてとても便利だ。火魔法よりもずっと実用的だ。


 というのも、俺はいま火魔法の練習中なんだけど――まだ炎を安定して操れない。可燃性ガスの操作が難しく、勢いが足りなかったり、逆に暴発しかけたり。最近になって、ようやく手のひら30㎝先くらいで炎を維持することが出来るようになった。だが、水魔法の応用でお湯が出せるようになったのはラッキーだった。


 風呂といっても、湯を張った大きな桶に浸かるだけだ。部屋に専用の浴室なんてものはないし、公共浴場もあるにはあるけど、いろんな意味でハードルが高い。だから、自前で湯を沸かせるようになったのは、大きな進歩だった。最初は水を魔法で桶にためて、そこに両手を突っ込んで必死に魔力を送って……気づけば湯気が上がったときは、ちょっと感動した。


 問題は洗濯だ。洗濯機なんてもちろんないし、石けんすら貴重品のようだ。川や井戸で洗ってる人もいるらしいけど、俺は魔法で水を出し、洗濯板とたらいで地道にやっている。水魔法はもう慣れてきたが、泡立てたり汚れを落としたりするのはやっぱり手作業だ。

 “汚れを落とす魔法”とか、探せばあるのかもしれないけど、今の俺には到底使えそうにない。いっそ、全自動洗濯乾燥魔法とかあったらどれだけ助かるか……。何度そう思ったか分からない。


 昼は、図書館の近くにある食堂でティアと一緒に食べる。温かいスープと豆の煮込み、それに香辛料の効いた焼き肉。素材の味がしっかりしていて、案外クセになる。ティアは礼儀正しくて、気配りもできる。でも、あまり私生活の話はしない。家は近所らしいけど、家族のことや休日の過ごし方なんかは、聞いたことがない。


 たぶん、それでいいのかもしれない。

 図書館での勉強も、魔法の練習も、彼女のサポートがなければ成り立たない。でもその分、つい頼りすぎてしまいそうになる。だからこそ、自然と距離を取っているんだと思う。


 夕食は、図書館から帰る途中の酒場で一人で済ませる。焼き魚や塩味のスープ、それにエールを少し。常連客に混じって静かに飲んでいると、不思議と落ち着く。最初は物珍しそうに見られたけど、毎日通ううちに「タカダさん」と呼ばれるようになった。


 帰宅すれば、1LDKの部屋は静かで、少し肌寒い。けれど、暖かい湯を自分で作れるようになった今は、湯を張った桶に手足を浸しながら、心も少しずつほぐれていく。

 トイレは洋式で木製の便座がついている。タンク付きだけど、自分で水を溜めなきゃいけない。そういう“ちょっとした不便”に慣れるのに、最初は苦労した。でも今は、それがこの世界の日常なんだと、少しずつ思えるようになってきた。


 日本にいた頃の“当たり前”が、どれだけありがたかったのか、今になってしみじみと思う。

 でも、この世界の生活にも、少しずつ馴染み始めている自分がいるのも、また事実だった。事実だった。

違和感や矛盾があれば教えて頂ければ幸いです。

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