氷竜刀 爆誕!
ローガンが現れたのは、朝の光が斜めに差し込む時間だった。背には長い包みを担ぎ、顔はやつれていたが、目だけは輝いていた。
「ゼンイチ!」
その声に、ゼンイチは思わず駆け寄る。
「できたんですか!?」
「できたぜ」
ローガンはニッと笑って包みを軽く叩く。しかしその顔色は青白く、目の下には濃い隈が浮かんでいる。
「あの……顔色、やばいですよ。寝てないんじゃないですか?」
「寝るの忘れてただけだ。問題ねぇよ。造ってる間は気にならなかったしな」
ゼンイチは心配そうに眉をひそめたが、ローガンの目が冗談ではなく、本気で“満たされている”ことに気づいて、それ以上何も言えなかった。
「じゃあ、広場に移ろうか。試し切り、してみたいだろ?」
場所を移し、広場に出る。そこは訓練や演武にも使われる場所で、見晴らしの良い石畳の空間だ。
ローガンがゆっくりと包みをほどくと、そこから現れたのは、一振りの刀だった。
「……うわ」
ゼンイチは思わず声を漏らした。
刀身は淡い青緑を帯び、角度によって光が複雑に乱反射する。まるでエメラルドの結晶を研ぎ澄ましたような美しさ。鍔にはアイスドラゴンを模した緻密な金属細工が施され、持ち手は黒染めされた革が丁寧に編み込まれている。握った瞬間、吸い付くように手になじむ。
「強度は申し分ない。靭性もあるから、よほどの相手じゃなければ刃こぼれはしねぇ。さらに魔力を流せば、軽度の傷は自己修復するぜ」
「マジっすか……?」
ゼンイチは唖然としながら刀を構える。
ティアが横から声をかけた。
「あそこの木、もうすぐ伐採する予定なので、試しに切っても構いませんよ」
「……え、これで木なんか斬って大丈夫かな……?」
「安心しろ。そのために造ったんだ」
ローガンが自信満々にうなずく。
ゼンイチは気力を整え、軽く刀を振った。
風を切る音とともに、木の幹に深い切れ込みが走る。まるで斧でも入れたかのような破壊力に、ゼンイチ自身が目を丸くした。
「……すごい強度ですね。これだけ強く振ったら、普通の刀なら折れてますよ」
ローガンはニヤリと口角を上げた。
「今度は、冷気を纏わせてみな」
「え?」
「その刀は、アイスドラゴンの牙でできてる。冷やすと素材が収縮して、さらに硬く、鋭くなる」
ゼンイチは刀を握り直し、魔力を流して《アイス》の魔法を発動させた。すると刀身が一瞬で霜に覆われ、周囲の空気が白く揺らぐ。
「……あれ、これ……なんか……」
「気づいたか。そうだ、僅かに震えている。アイスドラゴンの牙の特性だろう」
ティアが「かなりの高音ですね」という。
「超音波かな、俺にはあまり聞こえないけど…」
「まぁ、一度切ってみますね」
ゼンイチはさきほどと同様、木に斬りかかった。
ズバン、と音もなく、木はまるでバターのように切れた。数秒後、ゴウ、と重たい音を立てて倒れ込む。
「うわ、やばっ!」
ゼンイチは倒れてくる木を慌てて避けながら叫んだ。
「恐ろしい切れ味ですね、ほんとに」
ティアも驚いて声を漏らす。
「これは……斬る、というより“断つ”って感じ……」
ローガンは満足そうにうなずき、ゆっくりと言った。
「名前をつけた。“氷竜刀”だ」
「……シンプルで安直な気がしないでもないけど……いい名前ですね」
「ははっ。どうせまたお前が変な名前つける気だっただろ? 先に決めといた」
ローガンの笑顔に、ゼンイチも笑ってうなずいた。
氷竜刀は、確かに彼の手の中で、静かに、けれど確かな存在感を放っていた。




