表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/61

ひと狩りいこうぜ ~プーの森5~

辺りは、静寂に包まれていた。


まるで、あの狂獣の咆哮が幻だったかのように。


ゼンイチは地面に転がり、息を切らしながら空を見上げていた。鼓動がうるさいほどに響いている。全身の力が抜け、指先が痺れている。


「……終わった……のか?」


誰にともなく呟いたその声に、草を踏みしめる足音が近づいてくる。


「やったな、ゼンイチ」


泥まみれのガルドがにやりと笑って立っていた。マントの端が破れ、大剣はひび割れていたが、彼の目は生きていた。


「……俺、本当に倒せたのか……?」


ゼンイチがぼんやり呟くと、別の声が飛んできた。


「本当に刺して、爆発までさせたじゃないですか。あの巨体の脇腹を、あそこまで抉るなんて……すごいです、ゼンイチさん!」


ティアが駆け寄ってきた。彼女の髪は風に揺れ、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。それでも笑顔は、いつも以上に輝いていた。


「風魔法、合わせてくれてありがとう。あれがなかったら届かなかった」


「いいえ、私はきっかけを作っただけ。最後に決めたのは、ゼンイチさんです」


ゼンイチははにかみながらうなずいた。達成感と恐怖と安堵が、胸の奥で入り混じっていた。


「……お前ら、いちゃついてる場合じゃねえぞ」


どさりと何かが落ちる音。見ると、ゲイルが大剣を杖代わりにしながら歩いてきた。その顔には大きな青あざができており、肩が明らかにおかしい角度に傾いている。


「ゲイルさん! 大丈夫ですか!?」


「大丈夫じゃねぇけど……まあ、命はある。あいつの右腕と張り合っただけでこのザマとはな」


「無茶しすぎです……!」


ティアが慌てて回復薬を取り出すと、ゲイルは苦笑して手を振った。


「あとでいい。今はまず、こいつの確認だ」


そう言って、マッドグリズリーの死体へと歩み寄る。巨大な体は完全に動かなくなっていた。体表の金色の体毛は、血と泥で汚れ、輝きは失われている。


「……やはり、呪いの痕跡がある」


ガルドが低く唸る。


「この額の黒斑。魔力が変質してる……誰かが意図的に変えたか、あるいは……」


「魔族か?」


ゲイルが唇を歪めた。


「どうだろうな…今更奴らが攻撃してくるとは思えない。しかも都心から離れた森で呪いを使う意味はない。しかし、ただの自然発生じゃあり得ねぇ」


ゼンイチはその会話を聞きながら、少しずつ立ち上がる。


「つまり……これは、偶然じゃないってことですか?」


「ああ、そういうこった。」


重たい空気が、その場を支配した。


だがその中で、ティアだけが微笑みを浮かべたまま、ゼンイチの肩にそっと手を添えた。


「でも、ゼンイチさんがいたから助かりました。今日、あなたがいなければ……きっと誰かが命を落としていた」


ゼンイチは言葉を失い、ただ頷いた。


手のひらには、まだドリル剣を使った余韻が残っている。あの一撃が、仲間を救ったのだと、ようやく実感が湧いてきた。


ゲイルがぽつりと呟いた。


「まさか、ゼンイチにここまで助けられるとはな……見直したぜ、お前はもう立派な戦士だ」


ゼンイチは照れくさそうに笑った。


「……まあ、俺、マンション管理士なんですけどね」


一同の顔に、疲れと安堵の入り混じった笑いが広がった。

もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ページ下部の☆を押して評価をお願い致します!

(人´ω`*)♡ ★★★☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
皆さん感謝してますが多分狙われたのは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ