ひと狩りいこうぜ ~プーの森4~
ガルドが低く唸るように言った。
「……あれは呪いを受けた狂獣だ」
ゼンイチはごくりと唾を飲み込み、震える足で馬に乗ろうとする。しかし、馬は完全にパニック状態に陥っていた。いななきながら跳ね回り、ゼンイチを振り落とさんばかりに暴れている。
ゲイルとガルドも馬の手綱を必死で抑えていたが、制御するだけで手一杯の様子だった。
「仕方ねぇ……やるしかねえか」
ゲイルが馬を降り、剣を抜く。ガルドも肩を回しながら、久しぶりだなと呟いた。
「狂獣を相手にするのは何年ぶりだか……よし、さっきのフォーメーションで行くぞ!」
4人は即座に陣形を整え、武器を構える。
怒気をはらんだ咆哮をあげながら、マッドグリズリーが森を揺らして迫ってくる。
「全力で行きます」
ティアが静かに宣言し、素早く3本の矢をつがえる。風をまとった矢は先ほどより凄まじい速度で飛翔し、マッドグリズリーの胸元に連続で突き刺さった。
直後、ティアが《真空球》の呪文を放つ。矢の刺さった部位で、爆発的な風の音と共に真空球が炸裂した。
ぶしゅっ、と大量の血が噴き出し、黄金に輝いていた体毛が赤黒く染まる。
だが――。
「止まった……!?」
ゼンイチが呟いた。
マッドグリズリーの血が、見る間に止まっていく。筋肉が収縮し、矢を中から圧し潰しているようだった。
「いくぞっ!」
ゲイルが叫び、ガルドと共に前へ飛び出す。
マッドグリズリーが吼え、右腕を大きく振りかぶった。
ゲイルが咄嗟に大剣で迎撃するが――
「ぐおっ!!」
重すぎる一撃。ゲイルの体が宙を舞い、数本の木をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。
「う、嘘だろ……!」
ゼンイチはその光景に足がすくむ。しかし、ガルドが振り返り、怒鳴った。
「ビビってる暇はねぇ!俺がフォローする。お前はそのドリルを奴にぶっ刺せ!」
「っ……はい!」
ゼンイチは震える足を叱咤し、ガルドと並走して突進する。
マッドグリズリーが左手を大きく薙ぎ払ってくる。
「くそっ!」
ガルドがゼンイチを片腕で抱え上げ、反対の手で大剣をマッドグリズリーの手に突き立てた。
凄まじい力に引き上げられ、二人の体は空中へと跳ね上がる。
「今だ、ゼンイチッ!」
ガルドがゼンイチの体を放る。ゼンイチは空中で槍を構え、落下の勢いに任せて狙いを定める。
「……お願いします!!」
ティアがタイミングを見計らって風魔法の衝撃波を放つ。空中のゼンイチにその追い風が加わり、彼の体は一直線にマッドグリズリーへと射出された。
ドリル槍が、猛獣の脇腹に突き刺さる。
「今だっ!!」
ゼンイチが全力で水蒸気爆発を発動。轟音とともに、マッドグリズリーの脇腹が内側から大きく抉られた。
狂ったように暴れまわる巨体。しかしその足取りは次第に鈍り、赤い血とともに力を失っていく。
ゲイルがボロボロの姿で戦線に復帰したとき――
マッドグリズリーは、ようやく地面に膝をつき、そのまま崩れ落ちた。
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