ひと狩りいこうぜ
やや酔いのまわった頃、ゲイルがジョッキを軽く掲げながら口を開いた。
「そういや明日は休みなんだ。久々に、森で体でも動かそうかと思ってな。おい、ゼンイチ、それに……ガルド、お前も。狩りに行かねぇか?」
その言葉に、ガルドがぴくりと眉を動かした。少しだけ視線を逸らしながら、渋い声で答える。
「……別に、構わない」
ほんのわずかに頬が赤らんでいるのは、酔いのせいか、それとも別の理由か。
「狩りって、何を狙うんです?」ゼンイチが身を乗り出す。
「さあな。出てきたもんを片っ端から、ってとこだ」
ゲイルはにやりと笑い、言葉の端に冗談のような、本気のような含みを持たせた。
「場所はどこなんですか?」ティアが、警戒を隠さない声で問いかける。
「プーの森だ。街から北西に半日ってとこだな」
「――プーの森ですか!?」ティアが椅子から身を乗り出した。「あそこは大型モンスターが出るエリアですよ。ゼンイチさんを、初めての狩りで連れて行くには……!」
「心配すんな。ガルドと二人いりゃ、守るくらい朝飯前だ」
ゲイルが肩をすくめる。
ゼンイチは少しだけ考えてから、苦笑交じりに言った。
「弱ったところにドリル剣を試すチャンス……って考えると、悪くないですね」
ティアは言い淀んだが、しばらくして意を決したように言った。
「……私も、行きます。放っておけません」
「よし決まりだ」ゲイルが楽しげに頷く。「馬は用意しておく。明日の朝、ギルド前に集合な」
「馬……ですか」
ゼンイチは少し顔をしかめる。
「乗れねぇのか?」ゲイルが笑いながら尋ねた。
「無理です。いや、観光地の乗馬体験で少しだけなら……でも、自信ないです」
すると、ガルドが口を開いた。
「……だったら、俺の後ろにでも乗れ。落ちないようにしがみついていればいい」
「えっ、いいんですか……?」
「それともティアの後ろがいいか?」
ガルドはわずかに口の端を吊り上げて、ジョッキを空にした。
「ガルドさん!あまりからかわないでくださいっ!」
ティアが真っ赤になってガルドに抗議すると、皆が笑いに包まれた。
ゼンイチも思わず笑いながら、こんな風に誰かと冗談を言い合うのは久しぶりだと感じた。
笑い声が交差する中で、ゼンイチはふと考えた。
――今まで、釣った魚を絞めたことはあっても、大型の生き物を殺したことなんてない。
いきなり本番で、ちゃんと戦えるんだろうか……。
笑顔の裏で不安が、静かに胸の奥で揺れていた。
初めての狩り…ワクワク
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