披露宴
武器の完成を祝して、ゼンイチはティア、ガルド、ゲイル、ローガンの四人を酒場に招いた。
夜の帳が降りる頃、賑わいを見せる〈緋色の盃亭〉。石造りの壁に灯されたランタンが、温かな光を落としている。人々の笑い声と、木製のジョッキが打ち合う音が混ざり合う中、奥まった席に五人分の椅子が並んでいた。
ゼンイチは上機嫌だった。テーブルの中央には、布に包まれた「ドリル剣(仮称)」が、どんと置かれている。
「みんな、今日は来てくれてありがとう! さっそくだけど、見て欲しい。これが完成品!」
そう言って布を払うと、銀と蒼の金属が螺旋を描く、美しくも異様な武器が姿を現した。
「ドリル剣!(仮だけど)」
ゼンイチは胸を張って宣言した。
……しかし、その瞬間、場に微妙な沈黙が流れた。
ティアがぱちぱちと拍手するのが、唯一の反応だった。
「わぁ……すごいです! あまり見たことのない形ですが……この刃先の形状といい、鍔の装飾といい……こんなに美しい武器は、初めて見ました。」
「おう。まあ、材料も良かったしな」とローガンは満足げに腕を組む。
だが、その隣のガルドの表情は硬い。ジョッキに口をつけながらも、目線はどこか外れていた。
「刃先は……回転するのか。剣、いや……槍か? 面白ぇもんだな」と、ゲイルが手に取るふりをして、触れずに眺めた。
「この螺旋の側面にある穴…これは毒を仕込む穴にしちゃぁ深くないか?」
「ははっ、ここから蒸気が出るんですよ。」
「そういえば、蒸気を使うって言っていたな。刀じゃなかったから忘れていたぜ」
「コホンッ、ゼンイチさん…」
ティアがさりげなく咳払いしながら、目で静かに釘を刺した。場の空気に気づいたのか、ゼンイチは苦笑いしつつ背筋を伸ばす。
「……ま、まあ、細かい仕組みはさておき! ガルドさん、どう思います? 一発撃ったらブワァーって回るんですよ、刃が!」
「…………ふん」
ガルドは重い音を立ててジョッキを置いた。眉間に皺を寄せたまま、ローガンとゲイルをちらと見る。
「素材も良いし、細工も見事だ。……ただし、柄の長さが中途半端だ、あと50㎝あれば槍として使えるかもしれないが」
「まぁ見てください。ここを押しながら引っ張ると──」
柄の長さが伸びて、一般的な槍と同様の長さになった。
「ほぉ」
ガルドが低く呟いた。
「良いだろ、この構造は俺のアイディアだぜ。やっぱり、前線を離れるとカンも鈍っちまうか」と、ローガンが皮肉気に笑う。
「言いたいことがあるならはっきり言え。ローガン」
「言ったつもりだが?」
一触即発の空気に、ティアが焦ったように手を広げた。
「お、落ち着いてください! 今日はお祝いの席なんですから!」
「まあまあ」ゲイルが手を挙げ、穏やかな笑みを浮かべる。「昔の話はこの場じゃ無粋ってもんだ。俺も今日は、ゼンイチの門出を祝いに来たんだからよ」
その一言でようやく場が和らぎ、ゼンイチもほっとした顔で再び武器に視線を落とした。
「……でも、ほんとに、作ってよかったなぁ。当初思っていた形ではありませんが、自分専用の武器ができるなんて、まさにロマンですね」
誰かが軽く笑い、誰かが黙って酒をあおった。テーブルに置かれた螺旋の刃が、酒場の灯りを受けて鈍く光った。
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