街並み拝見
王との謁見を終えたゼンイチは、ティアに案内されながら城の回廊を歩いていた。重厚な扉を抜けて外気に触れると、風がひんやりと頬を撫でた。
「……こちらへ。町が一望できる場所があります」
ティアの言葉にうながされ、数段の階段をのぼる。やがて視界が開け、ゼンイチは思わず足を止めた。
「……すごいな、これは」
眼下には、壮大な都市の全景が広がっていた。
城を中心に、網の目のように整然と広がる街路と建物。その間を縫うようにして、無数の水路が町中を走っているのが見える。道の両端に寄り添うように設けられた細い水の流れは、まるで町全体を潤す静かな血管のようだった。
建物は三階から五階ほどの高さが多く、木材と灰白色の素材でできた不思議な外観。直線と曲線が入り交じるその構造は、近未来と中世のどちらともつかない印象を与える。遠くには都市をぐるりと囲う巨大な壁が見えた。
「……でかいな、あの壁」
ゼンイチがそうつぶやくと、ティアはうなずいた。
「都市の外からの侵入を防ぐための防壁です。大型の魔物にも備えられるように、厚みも高さもあります」
ふむ、と軽くうなずいたゼンイチだったが、しばらく町を眺めているうちに、ある違和感に気がついた。
「……なんか変だな。水路があちこちにあるのに、空気が乾燥してる気がする。風が冷たいわけでもないのに、喉が乾く」
その指摘に、ティアは「やっぱり!」とばかりに嬉しそうな顔をした。
「よく気づきましたね。実はこの都市、特に城下の居住区では、水魔法にかなり頼った生活が営まれているんです。水道や風呂、洗濯、掃除など、日常のほとんどの水回りを魔法で補っています」
「つまり……その分、空気中の水分がどんどん吸われてるってことか?」
「はい。水魔法は空気中の水分を素材として使うので、自然と乾燥しやすくなるんです。植栽や水路は、その影響を少しでも緩和するための工夫なんですけど……」
ゼンイチは、思わず頬をかいた。
「不思議な都市だな……便利そうだけど、思ったより繊細なんだ」
そんなやりとりを交わしながら、彼らは城の門をくぐり、石畳の町へと降りていった。通りは広く、建物の間には多肉植物のような分厚い葉を持つ低木が並び、水路の水がきらめいている。だがその美しさとは裏腹に、やはり空気の乾燥は肌に感じるほどだった。
「こちらが、あなたの新しい住まいです」
目の前にあったのは、五階建ての集合住宅だった。ロの字型に中庭を囲む構造で、中央には花壇とベンチ、小さな水盤がある。外観はやや素朴だが、丁寧に手入れされていることがわかる。
「三階のお部屋を用意しました。日当たりもよくて、風も通ります。家具や生活用品もひと通りそろってますよ」
「ほんとに……至れり尽くせりだな」
ゼンイチはそう言いながらも、どこか安心したように表情を緩めた。異世界とは思えないほど“暮らせそう”な空気に、ようやく緊張がほどけたのかもしれない。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、
ページ下部の☆を押して評価をお願い致します!
(人´ω`*)♡ ★★★☆☆




