表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/61

街並み拝見

 王との謁見を終えたゼンイチは、ティアに案内されながら城の回廊を歩いていた。重厚な扉を抜けて外気に触れると、風がひんやりと頬を撫でた。


 「……こちらへ。町が一望できる場所があります」


 ティアの言葉にうながされ、数段の階段をのぼる。やがて視界が開け、ゼンイチは思わず足を止めた。


 「……すごいな、これは」


 眼下には、壮大な都市の全景が広がっていた。

 城を中心に、網の目のように整然と広がる街路と建物。その間を縫うようにして、無数の水路が町中を走っているのが見える。道の両端に寄り添うように設けられた細い水の流れは、まるで町全体を潤す静かな血管のようだった。


 建物は三階から五階ほどの高さが多く、木材と灰白色の素材でできた不思議な外観。直線と曲線が入り交じるその構造は、近未来と中世のどちらともつかない印象を与える。遠くには都市をぐるりと囲う巨大な壁が見えた。


 「……でかいな、あの壁」


 ゼンイチがそうつぶやくと、ティアはうなずいた。


 「都市の外からの侵入を防ぐための防壁です。大型の魔物にも備えられるように、厚みも高さもあります」


 ふむ、と軽くうなずいたゼンイチだったが、しばらく町を眺めているうちに、ある違和感に気がついた。


 「……なんか変だな。水路があちこちにあるのに、空気が乾燥してる気がする。風が冷たいわけでもないのに、喉が乾く」


 その指摘に、ティアは「やっぱり!」とばかりに嬉しそうな顔をした。


 「よく気づきましたね。実はこの都市、特に城下の居住区では、水魔法にかなり頼った生活が営まれているんです。水道や風呂、洗濯、掃除など、日常のほとんどの水回りを魔法で補っています」


 「つまり……その分、空気中の水分がどんどん吸われてるってことか?」


 「はい。水魔法は空気中の水分を素材として使うので、自然と乾燥しやすくなるんです。植栽や水路は、その影響を少しでも緩和するための工夫なんですけど……」


 ゼンイチは、思わず頬をかいた。


 「不思議な都市だな……便利そうだけど、思ったより繊細なんだ」


 そんなやりとりを交わしながら、彼らは城の門をくぐり、石畳の町へと降りていった。通りは広く、建物の間には多肉植物のような分厚い葉を持つ低木が並び、水路の水がきらめいている。だがその美しさとは裏腹に、やはり空気の乾燥は肌に感じるほどだった。


 「こちらが、あなたの新しい住まいです」


 目の前にあったのは、五階建ての集合住宅だった。ロの字型に中庭を囲む構造で、中央には花壇とベンチ、小さな水盤がある。外観はやや素朴だが、丁寧に手入れされていることがわかる。


 「三階のお部屋を用意しました。日当たりもよくて、風も通ります。家具や生活用品もひと通りそろってますよ」


 「ほんとに……至れり尽くせりだな」


 ゼンイチはそう言いながらも、どこか安心したように表情を緩めた。異世界とは思えないほど“暮らせそう”な空気に、ようやく緊張がほどけたのかもしれない。

もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ページ下部の☆を押して評価をお願い致します!

(人´ω`*)♡ ★★★☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ