魔法の再確認
昼過ぎ、ゼンイチとティアは図書館の裏手にある広場へと移動していた。二人で魔法訓練をするのは本当に久しぶりだった。ある程度魔法を扱えるようになってからは、週に一、二度の基礎練習をするだけで、ティアと一緒に訓練をする機会は減っていた。
「さて、訓練する前に……ゼンイチさんが今、使える魔法を一通り確認させてもらえますか?」
ティアが穏やかに言うと、ゼンイチは少し照れくさそうに頷き、順番に魔法を披露しはじめた。
「じゃあまず……《水球》。これはトイレとか風呂掃除でよく使ってるやつ」
ゼンイチの手のひらに、バレーボールサイズの透明な水球がぷかりと現れる。ティアが静かに頷く。
「次、《スチーム》。服のシワを伸ばしたり、風呂を温めたりするのに便利」
軽く手を突き出しながら魔法名を唱えると、手のひらから少し離れた場所からシューっと白い蒸気が噴出される。触れればかなり熱そうだ。
「あと、《アイス》もできるよ。最近は暑い日にかき氷作ったり、部屋を冷やしたりしてる」
水球を出したと思ったら、それが一瞬で氷に変化して地面に落ちた。氷は石畳にぶつかり、砕け散った。
「それから、《ヘドロソウジ》……これは最近、洗濯にも応用してる。威力を制御しないと服が傷むけど、汚れがすごくよく落ちるんだよね」
ゼンイチは冗談めかして笑った。
「生活魔法なら、結構覚えた方だと思うけど……自画自賛かな?」
ティアはくすりと笑って首を振る。
「いえ、十分すごいですよ。《スチーム》に関しては、昔の転移者の方が似た魔法の特許を取得していて、登録はできませんが、魔石に記録すれば商品として流通させられるかもしれませんね」
「へえ、そうなんだ」
「はい。今市場に出ている水を温める魔石は、すべて過去に作られたもので、希少性が高くて割高なんです」
「そういえば、最近は稼ぐって意識が抜けてたな……。訓練のついでにでも、《スチーム》入り魔石を作っておくか」
ゼンイチは呟きながら、しばし顎に手を当てた。
「そうだ、《アイス》って、使える人他にいたっけ?」
ティアは少し考えてから答えた。
「王都には三名ほどいます。全員、元転移者の子孫で、冷却魔石を使った冷蔵庫の発明で莫大な得た一族として知られています」
「冷蔵庫って便利だものね。でも冷蔵庫の魔石って俺の《アイス》に比べると出力が弱い気がするんだけど、本人はもっと強い冷気を出せるのかな?」
「私の知り合いが、そのうちの一人なのですが、彼の冷却魔法は…恐らくゼンイチさんのアイスより少し弱いと思います。ただ、初代の方は氷と雪が混ざった冷気を飛ばし、魔物を凍らせたという記録が残っています」
「……魔法の名前は?」
「たしか《ダイヤモンドダスト》ですね。いまでは誰も使えない、伝説の魔法です」
ゼンイチは思わず苦笑いを浮かべた。
「なんとなく、どの世代の転移者か想像つくな……白い鎧を着ていたんじゃないだろうか……」
私は再放送の世代ですが、絶対零度という単語はアニメから学びました




