05.ロムスロリアが日本にありそうな件
星那は友人の山音にリリアの紹介を完璧にできずにいた。
彼女はロムスロリア王国からきたといい、本名をリリア・サクラトパーズだというのだ。
星那は彼女は日本で生まれ育ち、日本人もしくはアジア人の血をひいているとふんでいたのだ。
その考えは山音も一緒だった。
「僕の名前は山音。星那の友人だ。この上池袋でアパートとコミュニティスペースの管理人をしてるよ。よかったらコーヒー飲んで。」
「ありがとうございます。懐かしい味がします。私の名前はリリア・サクラトパーズ。ロムスロリア王国からきました。」
「ロム...ロムス...?それはどこにあるのかな?」
「私にもわからないです。きっと私は生まれ変わってここにきたのだと思います。」
「生まれ変わってねぇ...魔法使いの服装をしているけれども、君の職業は?」
「見ての通り、魔法使いですよ!」
リリアはコーヒーを飲みながら胸をはる。
リリアが答えるたびに星那と山音の頭は混乱した。
目の前にいる少女は嘘をついているように見えない。かといって、全てを信じるには無理がありすぎるのだ。
星那は頭の中で仮説をたてた。
これはきっと彼女の設定なのだ。生まれ変わったというのはきっと地元を出て、新天地である東京で頑張ろうとしていることだろう。
そして、職業が魔法使いというのは何かを生み出す職業、または異業種から見ると魔法に見えるような摩訶不思議なことをしている職業ではないかということ。技術者とか、研究職とか、クリエイターとか。
「魔法使いってどんなことをしているのかな?実際の仕事内容を教えてもらえると嬉しいのだけど...」
「町の人に依頼されたものを魔法で作ってました。そこそこ腕はよくて、たまに国外からも依頼がきてたんですよ!」
なるほど、依頼されたものを作っていたということはクリエイティブ職であっているだろう。
そうすれば奇抜な魔女服も合点がいく。きっとブランディングなのだと思う。
「リリアさん、つかぬことを聞くけど、年齢はいくつかのかな?僕よりも若く見えるけど。」
「240歳です!」
いやいや、そんなことはないだろう。どう見ても20代前半、多少プラスに見積もっても24歳だ。
しかしこの返答で星那と山音にはあるヒントが浮かんだ。『彼女は自分の本当の境遇を盛り込んだ設定を演じているのではないか』『ブランディングの一環ではないか』と。
2人は『リリア・サクラトパーズ』という名前を聞いた時から何か怪しいと思っていた。
どれも英語や日本語、宝石の名前を組み合わせた様な名前だからだ。
リリアは百合を意味するlily、そこに『ア』がつくということは差し詰め『ユリア』あたりが本名ではないだろうか。
そして苗字のサクラトパーズ。まずはトパーズは11月の誕生石、または本人が好きな宝石。そしてサクラはそのまま桜で『桜井』や『桜庭』など、桜がつく苗字なのではないか。
これはもしかして、ロムスロリア王国も何か元ネタがあるのではないか。
「リリアさんの住んでいたロムスロリア王国って何か有名なものやランドマークはないのかな?」
「そうですね、ロムスロリアには茨に囲まれた立派なお城があります。近寄りがたい城ですけど、とても綺麗なお城なんですよ。王様は農業に力を入れていて、王様と同じ名前がつけられた果実も有名です。」
この一言で、星那と山音は答えにたどり着いた。
茨に囲まれた城、それは北関東の茨城だ!!!
目の前にいるリリア・サクラトパーズという女性は茨城出身の桜庭ユリアまたは桜がつく苗字のユリアさん。年は24歳前後。茨城から家出をしたクリエイター職であると。
しかし彼女は徹底した設定管理のもと、生活をしているようだ。
その設定を無下にして真実に踏み込むというのは野暮というものである。
星那と山音は全てを悟ったような顔をして、リリアを見つめた。
そして山音はあることに気づいた。
「ってことは星那と出身地同じじゃない!?リリアさんもなまってないから出身地方近いかもよ??」
「え!?」
驚いくリリアを見て、茨城出身だということを語りたがらない星那はそんなことはいいだろ、と話を本題に戻すのだった。




