04.魔女、藁をもすがる
女の子が一人、南池袋の公園の扉の前でうずくまっていたとしたら、それは何か重大な理由があるはずである。
星那は詳しいことを聞くことはやめた。まずは要件定義をしよう。重要なのはリリアの安全の確保と今夜泊まる宿。おそらくお金は所持していない。
かといって、男一人暮らしである南池袋のマンションにリリアを泊めることなんてできるはずもなかった。
星那は徐に電話をかける。
「お前のところ1部屋余ってただろ。女の子が池袋で困ってるんだよ。とりあえず連れていくからさ、一晩泊めてもらえないか?」
どうやら知り合いに電話をかけているようだ。電話が終わると、うずくまるリリアに手を差し出した。
「30分くらい歩ける?」
「歩けます!!」
リリアは藁にもすがる思いで、大きく頷いた。星那は悪い人ではなさそうだ。このままここでうずくまっていてもしょうがない。とにかくついていこうと決めたのだ。
南池袋公園から大塚駅側に向かって30分。道中、星那はリリアにいろいろと質問をした。
宿を提供してくれる友人のもとにつれていくのだ。全く情報がない、では話にならない。
「リリアさん、本名は何なの?」
「リリア・サクラトパーズです!」
「それは本当に本名?」
「はい!サクラトパーズ家の一人娘でした。」
「どこからきたの?」
「ソムスロリア王国の小さな町です。」
「えーっとそこは実家?」
「実家...ではないですね。身寄りは全て亡くなったので。しかし、育ててくれた祖母とずーっと住んでました。実家みたいなものです。」
「なるほど、苦労をしてきたんだね。ちなみにそこは日本なのかな?」
「いいえ、ソムスロリア王国です。」
星那はリリアの話に感心していた。これは徹底的に作られた設定だと。
リリアの見た目は少し堀の深めなアジア人、または欧米とアジア人とのハーフかクオーターだ。
流暢に話す日本語を聞く限りでは日本で生まれ育ったのではないかと確信していた。
そんなリリアが徹底してソムスロリア王国の出身だというのだ。嘘をついているようには見えない。
いずれにせよ、そのような設定は星那から友人に説明すれば混乱を極めるはず。
星那はリリア本人の口から語ってもらおうと決めて、道中では深く突っ込まないことにした。
そうこうしているうちに、目的地に到着したようだ。いつの間にかビル群がなくなり、閑静な住宅街が広がっていた。
同じ池袋でも、ここは上池袋。下町っぽさのある町である。
星那がインターホンを押すと家主がぬっと顔を出してきた。
「おー。ちょうど風呂の前に連絡もらってよかったよー。その子が例の子ね。とりあえずあがってあがって。」
「山音、ありがとなー。助かるわー。」
そういうと階段を登った先にあるリビングに通された。
山音と呼ばれるその人物は、リリアの魔女服姿に驚くこともなく、リビングにあがるとコーヒーの準備をはじめる。
おそらくこれから自分のことを色々と聞かれるのだろう。おそらく魔女狩りが横行していないこの世界では、誠実に答えればきっとわかってもらえる。大都会の隅で行倒れるくらいなら、ここで全てを正直に話そう。
リリアは覚悟を決めて自分のことを話そうと決心したのだ。




