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『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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第85話 本物を名乗る片倉小十郎が、今の小十郎さんを殺しに来ました

戸が開いた。


そこに。


小十郎さんがいた。


いや。


違う。


小十郎さんは。


俺の隣にいる。


じゃあ。


戸の向こうにいるのは。


誰。


右頬。


小さなほくろ。


古い肖像画。


同じ。


男は。


政宗を見た。


俺たちを。


見なかった。


最初から。


政宗だけ。


見た。


「殿」


声。


同じ。


本当に。


同じ。


「お迎えに上がりました」


俺は。


隣の小十郎さんを見る。


こっちも。


同じ顔。


同じ声。


でも。


右頬に。


ほくろ。


ない。


「……もう本当に増えるな!」


我慢できなかった。


すると。


二人の小十郎さんが。


同時に。


俺を見た。


そして。


同時に。


「今は黙っていてください」


と言った。


俺は。


本気で。


叫んだ。


「そこまで同じなんですか!?」


新八さんが。


小さく。


「黙れ」


と言う。


「新八さんまで!」


でも。


黙った。


だって。


怖い。


本当に。


空気が。


違う。


政宗は。


新しい小十郎を。


じっと見ている。


笑ってない。


面白いとも。


言わない。


「名を申せ」


政宗が言った。


男は。


すぐに。


答えた。


「片倉小十郎景綱」


今の小十郎さんの顔が。


ほんの少し。


動く。


「本物か」


政宗が聞く。


男は。


答えた。


「はい」


迷わない。


「では」


政宗。


片目を細める。


「証明しろ」


     ◇


証明。


始まった。


幼い政宗様が。


右目を失った夜。


答えた。


政宗様が。


初めて戦の後に。


誰にも見せず。


吐いた日。


答えた。


愛姫様と。


政宗様しか。


知らないはずの。


言葉。


答えた。


輝宗様が。


亡くなる前。


小十郎さんだけに。


残した言葉。


答えた。


筆。


渡される。


書く。


今の小十郎さんも。


書く。


並べる。


俺。


分からない。


でも。


小十郎さん自身が。


見て。


顔を曇らせた。


新しい小十郎の方が。


古い文書の筆跡に。


近い。


次。


刀。


構える。


足。


運ぶ。


政宗が。


じっと見る。


新八さんも。


見る。


新しい小十郎。


古い傷。


正しい場所。


右頬。


ほくろ。


全部。


合う。


俺は。


だんだん。


嫌になった。


証拠が。


増えるほど。


今の小十郎さんが。


偽物に。


見えてくる。


でも。


隣にいる。


この人が。


俺の知ってる。


小十郎さん。


「なるほど」


政宗が言った。


それだけ。


新しい小十郎が。


今の小十郎さんを見る。


初めて。


ちゃんと。


見る。


目。


冷たい。


「退け」


今の小十郎さんは。


何も言わない。


「私の名を使い」


「……」


「私の顔で」


「……」


「殿のおそばにいた」


「……」


「退け」


今の小十郎さんが。


静かに。


答えた。


「お断りいたします」


俺は。


少し。


驚いた。


もっと。


譲るかと。


思った。


自分が偽物なら。


殿が決めてください。


そう。


言うかと。


でも。


違う。


新しい小十郎の顔。


怒る。


「何だと」


「私は」


今の小十郎さんが。


政宗を見る。


「殿にお仕えしております」


「それは私の役目だ!」


初めて。


新しい小十郎が。


声を荒らげた。


今の小十郎さん。


少し。


目を細める。


「役目とは」


「何」


「誰か一人の所有物でしょうか」


空気。


張る。


俺は。


何も言えない。


新しい小十郎が。


刀の柄へ。


手を置く。


「私の人生を奪った男が」


低い。


声。


「よく申す」


今の小十郎さんも。


顔。


変わる。


「奪ったつもりはありません」


「知らぬで済むか!」


声。


響く。


俺。


胸。


痛い。


だって。


分かる。


新しい小十郎。


もし。


本当に本物なら。


半年前。


消えた。


誰かが。


自分の顔。


名前。


居場所。


殿。


全部。


持っていた。


帰ってきたら。


自分が。


偽物みたい。


扱われる。


怒る。


当然。


でも。


今の小十郎さんも。


知らなかった。


気づいたら。


ここにいた。


政宗を。


守ってた。


どっちが。


悪い。


分からない。


     ◇


「一つ」


俺が言った。


全員。


見る。


二人の小十郎さんが。


同時に。


嫌そうな顔をする。


「何です」


また。


同時。


「やめて! それ怖い!」


紬が。


「早く聞けば」


と言った。


「はい!」


俺は。


新しい小十郎を見る。


「あなた」


「何だ」


「本当に本物だとします」


男の顔が。


険しくなる。


「失礼な」


「すみません。でも今は仮定でしか話せないので」


俺は。


続ける。


「どうして今まで戻らなかったんです」


新しい小十郎が。


黙った。


「政宗様のところへ」


「戻れなかった」


「何で」


男の手。


拳。


握る。


「半年前」


声。


低い。


「私は襲われた」


全員。


静か。


「白面衆か」


小十郎さんが聞く。


新しい小十郎。


一瞬。


今の小十郎さんを見る。


「名は知らぬ」


「それで」


俺が促す。


「殺されかけた」


右腕。


袖。


捲る。


傷。


新しい。


いくつか。


「意識を失い」


「……」


「気づけば閉じ込められていた」


「どこに」


「山中の古い寺」


「逃げたのは」


「十日前」


俺は。


少し。


考える。


筋。


通る。


半年前。


記録上。


小十郎死去。


今の小十郎。


いる。


本物。


捕らえられた。


代わり。


置かれた。


あり得る。


嫌なくらい。


「じゃあ」


俺は聞く。


「何で今の小十郎さんを殺すんです」


男。


即答。


「偽物だからだ」


「それだけ?」


「十分だ」


「十分じゃない!」


俺は。


思わず。


強く言った。


男が。


俺を見る。


「何だと」


「だって」


俺は。


今の小十郎さんを指す。


「この人がこの半年」


「……」


「何をしたか知ってます?」


新しい小十郎。


黙る。


「政宗様を守った」


「……」


「俺を助けた」


「……」


「紬のことも」


「……」


「小鈴のことも」


「……」


「千代も」


「……」


「愛姫様も」


「……」


「何も聞かないんですか」


男の顔。


固くなる。


「偽物が何をしたかなど」


俺は。


その言葉。


嫌だった。


本当に。


嫌。


「それ」


俺が言う。


「俺も何度も言われました」


男が。


眉を寄せる。


「お前は」


「俺が偽物かもしれない」


「……」


「作られた俺かもしれない」


「……」


「でも」


俺は。


今の小十郎さんを見る。


「俺がやったことまで、偽物になるわけじゃないって」


声。


少し。


震える。


「この人が教えてくれたんです」


今の小十郎さん。


何も言わない。


新しい小十郎。


俺を。


睨む。


「ならば」


言う。


「私の十年はどうなる」


俺は。


止まった。


「何」


男の声。


震える。


初めて。


怒りだけじゃない。


「幼い殿に仕えた」


「……」


「右目を失った夜」


「……」


「そばにいた」


「……」


「戦へ出た」


「……」


「輝宗様を失った」


声。


大きくなる。


「十年だ!」


俺は。


何も言えない。


「十年!」


男が。


胸を叩く。


「私が生きた!」


「……」


「私の場所だ!」


「……」


「私の殿だ!」


政宗の目が。


少し。


動く。


男。


涙。


浮かぶ。


「それを奪われた者に」


俺を見る。


「何が分かる!」


俺は。


答えられない。


分からない。


本当に。


でも。


今の小十郎さんが。


突然。


声を荒らげた。


「私だって!」


全員。


見る。


初めて。


だった。


今の小十郎さんが。


怒鳴る。


「奪ったつもりはない!」


新しい小十郎。


止まる。


「気づけば!」


声。


震える。


「私はここにいた!」


「……」


「殿のおそばに!」


「……」


「名前があった!」


「……」


「記憶があった!」


「……」


「殿を守りたかった!」


顔。


歪む。


「それだけです!」


部屋。


静か。


二人。


同じ顔。


違う。


涙。


違う。


怒り。


でも。


どっちも。


痛い。


     ◇


政宗が。


立ち上がった。


「二人とも」


止まる。


「一つ聞く」


二人の小十郎。


同時に。


政宗を見る。


「俺が」


政宗。


片目。


鋭い。


「天下を取った後」


「……」


「狂ったらどうする」


今の小十郎さんは。


すぐ。


答えた。


「必要なら」


一度。


間。


「お止めします」


政宗。


新しい小十郎を見る。


男。


少し。


困った顔。


でも。


答えた。


「殿は決して狂いません」


政宗の顔から。


何か。


消えた。


笑い。


怒り。


全部。


静か。


「そうか」


男。


少し。


不安そう。


「殿」


政宗は。


今の小十郎さんを見る。


そして。


言った。


「俺の小十郎は」


少し。


間。


「そちらだ」


新しい小十郎の顔が。


止まった。


俺も。


息。


止まる。


「殿」


「お前が本物かもしれぬ」


政宗。


言う。


「傷も」


「……」


「記憶も」


「……」


「筆跡も」


「……」


「お前の方が正しい」


男の目。


揺れる。


「だが」


政宗。


今の小十郎を。


見る。


「俺が今、背を預けるのは」


「……」


「こいつだ」


新しい小十郎の目から。


涙。


落ちた。


静かに。


一滴。


それから。


もう一滴。


「では」


声。


掠れる。


「私の十年は」


誰も。


答えられない。


「何だったのです」


政宗も。


答えない。


男。


笑った。


壊れた。


みたいな。


笑い。


「そうですか」


刀。


抜いた。


新八さん。


動く。


今の小十郎さん。


前へ。


出る。


俺。


その後ろ。


でも。


男の目。


小十郎さんじゃない。


俺を。


見た。


「全部」


言う。


「お前が来てからだ」


俺の胸。


冷える。


「未来人」


刀。


構える。


「お前が来た日から!」


踏み込んだ。


速い。


俺。


動けない。


本当に。


戦。


無理。


刃。


俺へ。


来る。


「拓真!」


紬。


叫ぶ。


今の小十郎さんが。


間に。


入る。


でも。


新しい小十郎。


叫ぶ。


泣きながら。


「お前さえいなければ!」


刀。


振り下ろされる。


俺は。


ただ。


思った。


また。


俺か。


本当に。


何で。


最後は。


いつも。


俺なんだ。


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