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『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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第79話 政宗様が俺を殺さなかったせいで、五人死ぬそうです

――その判断で、五人死ぬ。


俺は。


紙を持ったまま。


しばらく。


動けなかった。


政宗が聞く。


「何と書いてある」


言いたくない。


でも。


言わない方が。


もっと嫌だ。


「あなたが」


俺は。


傷のある拓真を見る。


「この人を殺さなかったせいで」


一度。


喉が鳴る。


「五人死ぬそうです」


誰も。


何も言わなかった。


風。


古井戸。


草。


それだけ。


傷のある俺が。


目を閉じた。


政宗は。


笑わなかった。


「五人とは誰だ」


俺は。


紙を見る。


裏。


何もない。


「書いてません」


「いつ死ぬ」


「書いてません」


「どうやって」


「書いてないです」


政宗の片目が。


細くなる。


俺は。


腹が立った。


紙に。


書いた誰かに。


今まで。


何度も。


何度も。


「またこれですか」


俺が言う。


紬が。


そちらを見る。


「何が」


「一人殺せば、他が助かる」


声が。


少しずつ。


大きくなる。


「紬を殺せ」


「……」


「政宗様を殺せ」


「……」


「俺を殺せ」


「……」


「今度は、この人を殺せ」


俺は。


紙を握った。


「そうすれば五人助かる」


本当に。


嫌になる。


「誰が死ぬかも書いてない!」


「……」


「いつかも!」


「……」


「何で死ぬかも!」


「……」


「何一つ書いてないくせに、五人って数だけは具体的!」


小十郎さんが。


静かに。


紙を見る。


「数は具体的ですが」


「はい」


「内容は何一つ具体的ではありません」


「ですよね!」


そう。


恐怖だけ。


残す。


五人。


誰。


今日?


明日?


十年後?


老衰?


戦?


毒?


分からない。


なのに。


怖い。


「これ」


俺は。


政宗を見る。


「俺たちを動かしたいだけじゃないですか」


「その可能性はある」


「じゃあ無視します?」


「それも危険だ」


「また!」


俺は。


頭を抱えた。


信じても危ない。


信じなくても危ない。


未来って。


便利すぎる。


何が起きても。


ほら。


言った通り。


そう言える。


「五人は」


傷のある俺が。


静かに言った。


全員。


そちらを見る。


「知ってる」


俺の背中が。


冷えた。


「……誰です」


男は。


俺を見ない。


紬を見る。


「一人目」


俺の胸。


鳴る。


「紬」


紬の手が。


少し。


動く。


「二人目」


男が続ける。


「小鈴」


「……」


「三人目」


少し。


間。


「千代」


「……」


「四人目」


「楓」


俺は。


何も言えなくなった。


「最後」


男が。


政宗を見る。


「愛姫」


空気。


凍る。


俺の周り。


俺が。


関わった人たち。


いや。


紬。


拾った。


小鈴。


毒。


千代。


救出。


楓。


助けた。


愛姫様。


未来の予言。


全部。


俺が来たから。


歴史が。


変わった。


人。


五人。


「何で」


俺の声。


掠れる。


「その五人なんです」


「俺が聞いた」


「誰に」


答えない。


「美月さん?」


男。


黙る。


「志乃?」


黙る。


「最初の千代?」


黙る。


「誰ですか!」


「分からない」


俺は。


止まった。


「……は?」


「声だけだった」


「また夢?」


「違う」


「じゃあ」


「扉の向こう」


胸。


嫌な音。


「神谷拓真が増え続ければ」


男は言う。


「その五人が、順番に死ぬ」


俺は。


男を見る。


「だから」


「俺が死ねば止まる」


また。


それ。


「だからって」


声。


震える。


「あなたが死ねばいい話にはならない!」


男が。


俺を見る。


「お前は」


疲れた顔。


「自分に関係ある人間だからそう言う」


言葉。


刺さる。


俺は。


止まった。


「紬だから」


「……」


「小鈴だから」


「……」


「千代だから」


「……」


「楓だから」


「……」


「愛姫だから」


男が。


静かに言う。


「助けたいんだろ」


俺は。


何も言えなかった。


その通り。


知らない五人なら?


全然知らない。


遠い場所の。


顔も。


名前も。


知らない。


五人。


それでも。


同じことを。


言えた?


分からない。


俺は。


そんなに。


立派じゃない。


「はい」


俺は言った。


男の目が。


少し。


動く。


「関係あるからです」


「……」


「知ってるから」


「……」


「嫌だから」


「……」


「それの何が悪いんですか」


男が。


黙る。


俺も。


続ける。


「身勝手ですよ」


「……」


「知ってます」


「……」


「でも」


紬を見る。


「俺は、紬に死んでほしくない」


次。


「小鈴にも」


「……」


「千代にも」


「……」


「楓にも」


政宗を見る。


「愛姫様にも」


声。


少し。


震える。


「あなたにも」


傷のある俺を見る。


「死んでほしくない」


男が。


笑った。


苦しそうに。


「欲張りだな」


俺は。


少し。


笑い返した。


「政宗様の家臣なんで」


政宗が。


「よい答えだ」


と満足そうに言う。


「今だけ自分の手柄にしないで!」


     ◇


「全員を呼べ」


政宗が言った。


俺は。


「誰を」


と聞く。


「五人だ」


「……本人に言うんですか」


「当然だ」


「でも、自分が死ぬって」


「拓真」


政宗が。


俺を見る。


「自分が死ぬ話を、本人抜きで決めるなと」


少し。


間。


「お前たちは散々申しておったではないか」


俺は。


何も言えなくなった。


その通り。


紬。


閉じ込めようとした。


怒られた。


小鈴。


勝手に守ろうとした。


千代。


決めつけた。


ずっと。


俺たちは。


本人の人生を。


本人抜きで。


決めようとした。


「分かりました」


俺は。


息を吐く。


「呼びましょう」


     ◇


集まった。


紬。


小鈴。


千代。


楓。


愛姫様。


それから。


俺。


政宗。


小十郎さん。


新八さん。


傷のある俺。


人数。


多い。


新八さんが。


「今こそ紙に書け」


と言う。


「今は人物相関図を作ってる場合じゃないでしょう!」


でも。


少し。


欲しい。


本当に。


政宗が。


説明した。


五人。


死ぬ。


傷のある拓真を。


殺さなければ。


順番に。


しばらく。


誰も。


何も言わなかった。


最初に。


口を開いたのは。


紬。


「嫌」


男を見る。


「何が」


傷のある俺が聞く。


紬は。


即答。


「勝手に私のために死なないで」


「でも」


「嫌」


「お前が死ぬ」


「かもしれない」


「そうだ」


「でも」


紬が。


眉を寄せる。


「だからって、あんたが死ぬって勝手に決めるのも嫌」


俺は。


少し。


笑いそうになった。


それ。


今の紬。


本当に。


変わらない。


次。


小鈴。


顔。


青い。


手。


震える。


「私」


小さい声。


「死にたくない」


誰も。


笑わない。


「怖い」


「……」


「嫌」


「……」


「でも」


傷のある俺を見る。


「あなたに死んでっても、言えない」


涙。


落ちる。


「言ったら」


「……」


「私、生きられても、ずっと覚えてると思う」


俺の胸。


痛い。


千代は。


もう泣いていた。


「分からない」


それだけ。


「分からないよ」


泣く。


「私、死にたくない」


「……」


「でも、誰かが死ぬのも嫌」


「……」


「分からない!」


それで。


いい。


分からない。


それも。


答え。


楓は。


腕を組んで。


言った。


「まず証拠」


俺は。


少し。


安心した。


楓。


本当に。


現実的。


「本当に五人死ぬのか」


「……」


「その男が死ねば止まるのか」


「……」


「誰が言ったのか」


「……」


「何も分かってない」


政宗が。


少し笑う。


「正しい」


楓が。


「褒められても嬉しくない」


と返す。


強い。


そして。


愛姫様。


静か。


少し。


考える。


「恐れたまま決めれば」


全員。


見る。


「誰かの言葉通りに動かされるだけです」


俺は。


胸。


刺さる。


前。


愛姫様自身。


予言。


手紙。


疑い。


揺れた。


だから。


言える。


「怖くないわけではありません」


愛姫様。


少し。


笑う。


「とても怖いです」


政宗が。


そちらを見る。


「愛」


「はい」


「死ぬな」


愛姫様が。


少し。


困った顔をする。


「命令で止まれるなら、そういたします」


俺は。


笑いそうになった。


政宗も。


少し。


笑った。


     ◇


政宗が。


傷のある俺を見る。


「聞いたな」


「……ああ」


「お前を殺すかどうかは」


政宗。


片目。


鋭い。


「お前一人にも決めさせぬ」


男が。


顔を上げる。


「俺の命だ」


「俺の天下でもある」


「……」


「俺の家臣も」


「……」


「俺の妻も」


「……」


「拓真の家族も」


俺。


少し。


止まる。


家族。


そう。


言った?


政宗。


普通に。


でも。


今。


掘れない。


「全部」


政宗が言う。


「俺が考える」


俺は。


すぐ。


「独裁!」


と言った。


政宗が。


睨む。


「黙れ」


「でも本人たちにも決めさせてくださいよ!」


「分かっておる」


「本当に?」


「疑い深いな」


「最近いろいろありすぎた!」


小十郎さんが。


小さく。


笑った。


少し。


空気。


緩む。


その時。


音。


小さな。


何か。


落ちた。


ころ。


俺は。


そちらを見る。


小鈴。


立っていた。


いや。


違う。


揺れた。


「小鈴?」


楓が呼ぶ。


返事。


ない。


小鈴の目。


焦点。


合わない。


次の瞬間。


倒れた。


「小鈴!」


俺。


走る。


抱く。


軽い。


軽すぎる。


「小鈴!」


返事。


ない。


胸。


動かない。


「息!」


俺は。


顔。


近づける。


分からない。


「新八さん!」


「どけ!」


新八さん。


すぐ。


しゃがむ。


首。


胸。


小十郎さん。


呼ぶ。


人。


薬師。


でも。


俺は。


何も。


聞こえない。


「小鈴」


紬が。


名前。


呼ぶ。


一回。


二回。


「小鈴!」


声。


大きい。


小鈴。


動かない。


傷のある俺が。


呟いた。


「始まった」


俺は。


振り向く。


「黙れ!」


叫ぶ。


「今それ言うな!」


男。


黙る。


俺は。


小鈴を見る。


胸元。


何か。


落ちた。


紙。


小さい。


俺の指。


震える。


拾う。


現代日本語。


一行。


――あと四人。


俺は。


止まった。


予言?


違う。


これ。


誰か。


小鈴に。


持たせた。


あるいは。


入れた。


つまり。


五人死ぬ。


未来じゃない。


誰かが。


今。


殺そうとしてる。


「政宗様」


俺は。


紙を。


見せる。


声。


震える。


「これ」


政宗が。


読む。


いや。


読めない。


俺が。


言う。


「あと四人」


空気。


変わる。


新八さんが。


刀へ。


手。


かける。


小十郎さん。


顔。


冷える。


愛姫様。


千代。


楓。


紬。


全員。


いる。


まだ。


生きてる。


今は。


「予言じゃない」


俺は。


言った。


「これは」


小鈴を見る。


「殺人予告です」


その瞬間。


小鈴が。


小さく。


息を吐いた。


俺は。


止まる。


「小鈴?」


本当に。


微か。


でも。


息。


した。


新八さんが。


「生きている!」


俺の体。


力。


抜けそう。


でも。


まだ。


終わってない。


小鈴の唇。


青い。


薬師。


来る。


そして。


小鈴の袖。


中。


赤い糸。


一本。


出てきた。


紬が。


それを。


見て。


顔色を変えた。


「これ」


「何です」


紬が。


震える声で。


言った。


「小鈴のじゃない」


俺の胸。


冷える。


「じゃあ」


紬が。


廊下。


見る。


「この部屋に」


少し。


間。


「さっきまで、あの女がいた」


誰も。


動かなかった。


戸。


閉まっている。


窓。


閉じている。


でも。


誰か。


いた。


そして。


五人のうち。


一人目を。


殺そうとした。


俺は。


残りの四人を見る。


紬。


千代。


楓。


愛姫様。


誰が。


次。


その時。


部屋の外。


女の声。


聞こえた。


「次は」


全員。


振り向く。


「誰がいい?」


俺は。


息を止めた。


聞き覚えがある。


最初の千代を名乗った。


あの女の声。


でも。


戸を開けた先には。


誰も。


いなかった。


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