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『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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第74話 政宗様は、明日から俺を伊達政宗にすると言いました

「明日から」


馬上の政宗が言った。


「お前を伊達政宗にする」


俺は。


しばらく。


何も言えなかった。


紙を見る。


政宗を見る。


もう一度。


紙を見る。


『神谷拓真が政宗になったから』


政宗を見る。


「……嫌です」


「まだ何も説明しておらぬぞ」


「聞かなくても嫌です!」


政宗が馬から降りる。


月明かりの下。


ものすごく楽しそう。


嫌な時の顔。


いや。


この人、大体いつも楽しそうだけど。


特に。


俺へ無茶振りする時。


目が違う。


「拓真」


「はい」


「未来には、お前が俺になると書いてある」


「そうらしいですね」


「ならば」


政宗が笑う。


「先にやってしまえばよい」


「未来を答えにするなって、昨日言われたでしょう!」


眼帯の一人目が言った。


未来の答えを、この時代の人間から奪うな。


つい昨日。


いや。


もう時間感覚。


めちゃくちゃだけど。


「答えにはしておらぬ」


政宗が言う。


「では何です」


「餌だ」


俺は黙った。


紬も。


新八さんも。


小鈴も。


志乃まで。


政宗を見る。


屋根の上にいた女。


最初の千代を名乗った女は。


いつの間にか。


消えていた。


逃げ足。


速すぎ。


「餌?」


俺が聞く。


「ああ」


政宗は。


俺が持っている紙を指した。


「敵は、お前が俺になる未来を知っている」


「らしいですね」


「ならば、お前を俺にしてやる」


「だから意味が分からない!」


「敵が食いつく」


「俺に!?」


「そうだ」


「餌、俺ですよね!?」


「そう申した」


「もっと申し訳なさそうに言え!」


新八さんが。


横で。


小さくため息をついた。


「予想通りだな」


「何がです!」


「お前が囮になる」


「俺が言ったんじゃない!」


今回は。


そこ。


大事。


俺から。


囮になりたいとか。


一言も。


言ってない。


政宗が。


勝手に。


俺を餌にした。


被害者。


完全に。


俺。


「お断りします」


「駄目だ」


「何で!」


「俺の命令だからだ」


「権力!」


俺は。


本気で。


独裁者って嫌だと思った。


いや。


戦国大名だから。


当然なんだけど。


     ◇


城へ戻った翌朝。


俺は。


伊達政宗になった。


正確には。


なり損ねていた。


「弱そう」


紬が言った。


「最初にそれ!?」


俺は。


政宗の衣装を着ていた。


普段の俺には。


明らかに。


立派すぎる。


黒を基調にした装束。


伊達家の意匠。


腰には刀。


飾りじゃない。


本物。


でも。


俺が持つと。


刀の方が迷惑そうに見える。


そして。


右目に。


眼帯。


鏡。


ない。


でも。


みんなの顔で分かる。


似てない。


「どうです」


俺は聞いた。


新八さん。


じっと見る。


「弱い」


「紬と同じ!」


楓。


首を傾げる。


「普通」


「もう少し!」


小鈴。


少し考える。


「眠そう」


「朝だから!」


俺は。


全員を指差した。


「一人くらい褒めて!」


その時。


愛姫様が。


静かに。


俺を見る。


助かった。


この人なら。


きっと。


優しいことを。


「殿より」


はい。


「話しかけやすそうです」


政宗が。


不満そうな顔をした。


俺は。


思わず。


「勝った」


と呟いた。


政宗が。


俺を見る。


「何にだ」


「親しみやすさ」


「要らぬ」


「負け惜しみ!」


小十郎さんが。


額を押さえていた。


「殿」


「何だ」


「本当に、この者を殿として出すのですか」


「面白かろう」


「面白いかどうかで兵を動かさないでください!」


俺と。


小十郎さん。


同時。


言った。


政宗が。


笑う。


「息が合うな」


俺は。


泣きたかった。


     ◇


問題は。


服じゃない。


馬。


俺は。


馬の前に立った。


馬も。


俺を見る。


嫌そう。


たぶん。


気のせい。


でも。


絶対。


嫌そう。


「無理です」


俺が言う。


新八さんが。


「乗れ」


「無理です」


「乗ったことはあるだろう」


「乗ったことがあるのと、乗れるのは違うんです!」


「同じだ」


「違う!」


馬。


大きい。


高い。


怖い。


俺が。


恐る恐る。


鐙へ足をかける。


滑る。


「うわっ!」


落ちる。


まだ。


乗ってすらいないのに。


紬が。


ため息。


「天下人になる前に落馬で死にそう」


「やめて!」


新八さんが。


真顔。


「それでは小十郎殿の出番がないな」


「未来を雑に消費するな!」


小十郎さんまで。


少し。


笑っている。


敵。


多い。


俺の周り。


本当に。


敵。


多い。


     ◇


出発は。


その日の夕方。


俺。


偽政宗。


新八さん。


数名の兵。


離れたところに。


別働隊。


本物の政宗は。


別の道。


小十郎さんと。


城へ戻る。


予定。


「嫌です」


俺が言った。


紬が。


横を見る。


「何が」


「全部」


「広いね」


「俺が政宗様の格好をして峠へ行って、敵を釣る」


「うん」


「本物の政宗様は別行動」


「うん」


「俺が死ぬかもしれない」


紬の顔が。


少し。


険しくなる。


「死なないで」


俺は。


止まった。


言い方。


普通。


でも。


胸。


少し。


痛い。


「はい」


俺は答えた。


「努力します」


「努力じゃなくて」


「でも絶対は言えません」


紬が。


俺を見る。


俺も。


見る。


最近。


こういう話。


何度もした。


絶対。


守る。


絶対。


死なない。


言えば。


楽。


でも。


嘘になる。


「だから」


俺は。


少し。


言葉を探す。


「逃げられるなら逃げます」


「……」


「新八さんの後ろに隠れます」


新八さんが。


前から。


「聞こえているぞ」


と怒鳴る。


「頼りにしてます!」


「迷惑だ!」


紬が。


少しだけ。


笑った。


「それでいい」


「え」


「拓真は」


少し。


考える。


「格好つけない方がまし」


「褒めてます?」


「たぶん」


「最近、その言葉嫌いなんですけど!」


でも。


悪くない。


たぶん。


     ◇


峠。


夜。


風。


冷たい。


俺は。


馬の上。


怖い。


敵より。


馬。


今。


正直。


馬が一番怖い。


「新八さん」


「何だ」


「俺、ちゃんと政宗様に見えます?」


「見えぬ」


「即答!」


「だが暗い」


「闇頼み!?」


最悪。


その時。


矢。


飛んだ。


「伏せろ!」


新八さん。


叫ぶ。


俺。


伏せる。


遅い。


いや。


早い。


もう。


分からない。


兵。


動く。


馬。


嘶く。


俺。


必死。


落ちないように。


それだけ。


「いた!」


声。


敵。


木々。


岩陰。


出てくる。


予想通り。


来た。


十人。


二十人。


もっと。


「政宗を討て!」


叫び。


聞こえる。


俺は。


心の中で。


言う。


俺じゃない!


いや。


今は。


俺が政宗。


ややこしい!


新八さん。


刀。


抜く。


兵。


ぶつかる。


金属音。


叫び。


馬。


土。


俺。


降りたい。


でも。


降りたら。


もっと。


邪魔?


「政宗!」


一人。


俺へ。


走ってくる。


「違います!」


思わず。


叫んだ。


新八さんが。


「馬鹿!」


と怒鳴る。


「だって!」


敵。


一瞬。


止まる。


その隙に。


新八さん。


倒す。


「黙っていろ!」


「はい!」


反省。


本当に。


反省。


でも。


敵。


次。


来る。


俺。


刀。


抜く?


無理。


絶対。


自分。


斬る。


その時。


後ろ。


人。


気配。


口。


塞がれた。


「んっ!」


馬から。


引きずり降ろされる。


痛い。


背中。


地面。


「拓真!」


紬。


声。


遠い。


俺の首。


刃。


当たる。


男。


顔。


布。


「動くな」


俺。


動かない。


すごく。


素直。


命。


大事。


「やっと」


男が。


耳元で。


言った。


声。


笑っている。


「政宗になったね」


俺の体。


止まる。


「神谷さん」


知ってる。


俺が。


偽物だって。


最初から。


「あなた」


俺は。


小さく。


言う。


「俺だって知ってたんですか」


「もちろん」


「じゃあ」


喉。


乾く。


「全部」


「そう」


男。


笑う。


「最初から」


俺は。


寒くなった。


囮。


作戦。


偽政宗。


本物。


別行動。


全部。


知られていた。


「何のために」


俺が聞く。


男は。


耳元で。


囁いた。


「お前をここへ出すため」


「俺を?」


「違う」


刃。


少し。


強く。


「小十郎を」


俺の胸。


鳴る。


「……何」


「片倉小十郎は」


男が。


笑う。


「今、本物の政宗を殺しに行った」


俺は。


何も言えなかった。


「嘘だ」


「そう思う?」


「小十郎さんが」


「未来では、そうなる」


「未来を」


俺は。


歯を食いしばる。


「勝手に決めるな!」


男が。


少し。


黙る。


俺は。


続ける。


「何度も言われたんですよ!」


「……」


「未来を答えにするなって!」


「……」


「小十郎さんが政宗様を殺すって書いてあるから!」


声。


大きくなる。


「今の小十郎さんまで、殺す人間にするな!」


男の刃が。


少し。


震えた。


でも。


次の瞬間。


遠く。


鐘。


一つ。


鳴った。


合図。


男が。


笑う。


「遅いよ」


俺の背中。


冷える。


「もう始まった」


     ◇


その頃。


城。


政宗は。


一人。


座っていた。


いや。


一人ではない。


小十郎が。


いた。


静かな部屋。


灯り。


風。


そして。


小十郎は。


刀を抜いた。


政宗が。


その音を聞く。


ゆっくり。


振り向く。


小十郎。


刀。


正面。


政宗。


向ける。


政宗は。


驚かなかった。


むしろ。


笑った。


「やはり」


片目。


細くなる。


「お前か」


小十郎は。


何も言わない。


刀。


構える。


そして。


静かに。


答えた。


「殿」


少し。


間。


「お覚悟を」


政宗が。


笑う。


「面白い」


刀。


光る。


そして。


小十郎が。


踏み込んだ。


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