↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/85

第60話 田中美月は、俺に会う前に紬を殺すつもりらしいです

「だから美月は」


鈴音が言った。


「今度こそ、拓真に会う前に」


一度。


息を呑む。


「紬を殺すつもりだって」


俺の隣で。


紬が。


息を止めた。


俺は。


鈴音を見る。


紬を見る。


一人目の俺を見る。


もう一度。


紬を見る。


「……駄目です」


口から出た。


「何が」


紬が聞く。


「今日から部屋を出ないでください」


「は?」


「新八さん」


「何だ」


「紬の部屋の前に兵を」


「待って」


「小十郎さん、城の出入りを」


「拓真」


「鈴音も安全な場所へ。千代と楓も一緒に――」


「拓真!」


紬が。


怒鳴った。


俺は。


止まる。


「何です」


「何です、じゃない」


「今は喧嘩してる場合じゃありません」


「喧嘩してるのはあんた!」


「してません!」


「してる!」


何で。


でも。


分かってる。


俺も。


声が大きい。


「だって!」


止まれなかった。


「あなたが殺されるって言われたんですよ!」


「だからって」


「だからって何です!」


「私を閉じ込めるの?」


「閉じ込めるんじゃない!」


「同じ!」


「違う!」


「どこが!」


俺は。


答えようとした。


でも。


うまく。


出なかった。


守る。


安全な場所。


危ないから。


全部。


言える。


でも。


紬は。


俺を睨んでいる。


「また勝手に私を隠すの?」


「今回は命がかかってる!」


「今までもずっとそうだった!」


言われた。


止まった。


そうだ。


山ノ瀬。


人買い。


志乃。


古堂。


一度目。


二度目。


ずっと。


命。


かかってた。


「でも今回は」


「何が違うの」


「美月さんは未来人で!」


「だから?」


「何度も歴史を知ってるかもしれない!」


「だから?」


「あなたが死ぬ未来を知ってる!」


「だから!」


紬の声が。


震えた。


「私に何も決めるなってこと!?」


俺は。


黙った。


「拓真が怖いから!」


紬は。


俺を見る。


「私の人生まで拓真が決めるの!?」


刺さった。


ものすごく。


痛かった。


でも。


「じゃあどうすればいいんです!」


俺も。


怒鳴った。


「あなたが死ぬかもしれないのに!」


「……」


「好きにしてください、自由にしてください、それで死にましたって!」


「……」


「そんなの!」


声が。


震える。


「耐えられないんですよ!」


部屋が。


静かになった。


言ってから。


息が。


苦しくなった。


もう。


隠せなかった。


「あなたが死ぬって言われるたび」


紬を見る。


「俺、もう考えられなくなるんですよ」


紬の顔が。


少し変わった。


「一度目で死んだ」


「……」


「二度目でも死んだ」


「……」


「今度は美月さんが殺す」


「……」


「天下を取った政宗様が殺す」


「……」


「俺が斬る」


俺は。


笑った。


たぶん。


ひどい顔だった。


「もう何回死ぬんですか、あなた」


紬が。


何も言わない。


「だから」


俺は。


息を吸う。


「せめて」


「嫌」


即答。


俺は。


止まる。


「まだ全部言ってません」


「分かる」


「分からないでしょう!」


「隠れてろって言う」


「そうです!」


「嫌」


腹が立った。


本当に。


腹が立った。


「何で!」


「私だから」


「答えになってない!」


「私の命だから!」


紬も。


叫んだ。


「死にたくないよ!」


俺は。


止まった。


紬の目が。


赤い。


「死にたくない!」


「……」


「でも!」


声が。


震える。


「死にたくないからって、全部拓真に決められるのも嫌!」


俺は。


何も言えなかった。


紬は。


続けた。


「怖い」


「……」


「美月って人も」


「……」


「死ぬって言われるのも」


「……」


「あんたが私を斬るかもしれないのも!」


胸が。


痛む。


でも。


紬は。


逃げなかった。


「でも」


俺を見る。


「怖いからって、私までなくなるのは嫌」


その時。


一人目の俺が。


言った。


「それが二度目の俺だ」


俺は。


振り向く。


「何です」


「今のお前だ」


「一緒にするな」


「した」


声。


静か。


だから。


余計に。


腹が立つ。


「紬を救うために」


一人目が言う。


「俺は全部決めた」


「……」


「どこへ行くか」


「……」


「誰に会うか」


「……」


「何を知るか」


俺は。


拳を握る。


「危険だからと隠した」


「……」


「守るためだと思った」


「……」


「俺が正しいと思った」


一人目の俺が。


今の紬を見る。


「結果」


少し。


間。


「紬は俺から逃げた」


紬が。


一人目を見る。


「逃げた?」


「ああ」


「何で」


一人目は。


少し。


苦く笑った。


「俺が、お前の人生まで奪ったからだ」


俺は。


何も言えなかった。


「そして」


一人目が。


今度は俺を見る。


「紬は自分で政宗のところへ戻った」


「それで死んだ?」


「そうだ」


胸の中。


ぐちゃぐちゃ。


腹が立つ。


怖い。


でも。


分かる。


一人目の言っていることが。


分かってしまう。


それが。


一番。


嫌だった。


     ◇


「守ることと」


政宗が言った。


全員。


そちらを見る。


「閉じ込めることを、同じにするな」


俺は。


政宗を見る。


「簡単に言いますね」


「簡単ではない」


「じゃあ」


俺は。


少し。


意地悪だった。


「愛姫様が殺されるって言われても、同じこと言えます?」


部屋が。


静まった。


愛姫様が。


俺を見る。


政宗は。


黙った。


俺は。


すぐ後悔した。


「すみません」


「いや」


政宗は。


愛姫を見る。


長い。


沈黙。


「言えぬかもしれぬ」


俺は。


少し驚いた。


政宗が。


続ける。


「閉じ込めるかもしれぬ」


愛姫様が。


ほんの少し。


眉を上げる。


「殿」


「だが」


政宗は。


俺を見る。


「だからこそ申している」


「……」


「守りたい者を失う恐れは、人を馬鹿にする」


俺は。


何も言えなかった。


愛姫様が。


小さく。


「殿も十分、普段から馬鹿でございます」


と言った。


俺は。


思わず。


愛姫様を見る。


政宗も。


「愛?」


と聞く。


愛姫様は。


涼しい顔。


「何でもございません」


紬が。


少し笑った。


俺も。


ほんの少しだけ。


息ができた。


     ◇


「鈴音」


小十郎さんが。


声をかけた。


「美月の居場所について、何か見ていませんか」


鈴音が。


目を閉じる。


「夢?」


俺が聞く。


「うん」


一人目の俺が。


「信用するな」


と低く言った。


俺は。


すぐに返す。


「全部信じるとは言ってません」


「なら」


「手掛かりは手掛かりです」


「美月はお前を誘っている」


「かもしれない」


「罠だ」


「でしょうね」


「なら行くな」


俺は。


一人目を見る。


「紬を殺すつもりだって言われて、何もしないと思います?」


一人目が。


何も言わない。


俺は。


分かっている。


この人も。


同じだ。


紬のことになると。


たぶん。


冷静じゃない。


「鈴音」


俺は聞く。


「何が見えた」


鈴音が。


ゆっくり。


言う。


「赤い糸」


志乃。


全員の顔が。


変わる。


「他は」


「水の音」


「川?」


「分からない」


「鐘」


小十郎さんの目が。


細くなる。


「寺か」


鈴音が。


さらに。


「白い花」


俺には。


分からない。


でも。


新八さんが。


何か思い出した顔。


「北東の山」


「何です?」


「古い尼寺がある」


「尼寺」


「今はほとんど使われておらぬ」


小十郎さんが。


考える。


「近くに沢があり、古鐘も残る」


「白い花は?」


新八さんが。


「山百合なら咲く」


俺は。


立ち上がった。


「行きます」


「拓真」


紬。


見る。


俺は。


迷った。


来るな。


そう言いたい。


でも。


言えば。


また。


二度目の俺。


「……どうします」


紬が。


少し。


驚いた顔をした。


「何が」


「行きます?」


長い。


沈黙。


紬が。


言った。


「行く」


「ですよね」


嫌だ。


本当は。


ものすごく。


嫌。


でも。


俺は。


頷いた。


「じゃあ」


言う。


「俺のそばから離れないでください」


紬が。


「それは命令?」


と聞く。


俺は。


少し考えた。


「お願いです」


紬が。


ほんの少し。


笑った。


「なら考える」


「そこは分かったって言って!」


     ◇


一人目の俺も。


立ち上がった。


俺は。


そちらを見る。


「あなたは来なくていいです」


「行く」


「紬を救わないんでしょう」


「ああ」


「じゃあ来るな」


一人目の俺が。


俺を見る。


「お前が美月を殺すのを止めるためだ」


空気が。


変わる。


「俺が」


声。


低くなる。


「美月さんを殺す?」


「鈴音の夢ではな」


「俺はそんなこと」


「俺もそう言った」


また。


それ。


腹が立つ。


「あなたは」


俺は。


一人目を見る。


「紬を守らない」


「ああ」


「でも美月さんは守る」


「……」


「何で」


一人目は。


答えなかった。


それだけで。


分かった。


何か。


まだ。


ある。


美月さんとの間に。


俺が。


思い出していない。


何か。


     ◇


古い尼寺は。


山の中にあった。


水音。


聞こえる。


小さな沢。


古い鐘。


錆びている。


道端。


白い花。


そして。


木の枝に。


赤い糸。


結ばれていた。


「当たりですね」


俺が言う。


新八さんが。


「だからこそ罠だ」


と返す。


正しい。


嫌になるくらい。


境内。


誰もいない。


静か。


風。


沢。


鐘が。


少し揺れて。


音。


低い。


本堂。


戸。


開いている。


俺は。


一歩。


入った。


暗い。


中央。


誰か。


座っている。


長い。


黒髪。


細い背中。


俺は。


止まった。


「紬?」


隣から。


声。


「私、ここにいるけど」


俺は。


隣を見る。


いる。


本物の紬。


じゃあ。


中央の少女は。


ゆっくり。


振り返った。


俺は。


息を止めた。


紬だった。


同じ顔。


同じ髪。


いや。


少しだけ。


違う。


目。


ずっと。


疲れている。


一人目の俺が。


後ろで。


息を呑んだ。


「……嘘だ」


少女が。


俺を見る。


今の俺。


四人目の神谷拓真を。


そして。


笑った。


悲しそうに。


「やっと来た」


俺は。


何も言えない。


少女は。


静かに。


言った。


「四人目の拓真」


一度。


息を吸う。


「今度こそ」


隣の紬が。


俺の袖を掴んだ。


少女は。


俺と同じように。


その手を見た。


そして。


最後に。


言った。


「私を殺して」


一人目の俺が。


震える声で。


名前を呼んだ。


「……紬」


目の前に。


今の紬。


そして。


もう一人。


一度目の紬が。


生きていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。