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『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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第34話 七日後、伊達政宗は最愛の者に裏切られる

# 第34話 七日後、伊達政宗は最愛の者に裏切られる


「面白い」


政宗が言った。


俺は。


即座に言い返した。


「面白くない!」


寺の中。


全員の視線が。


俺に集まった。


政宗が。


不思議そうな顔をする。


「なぜだ」


「なぜって!」


俺は兵が持ってきた紙を指差した。


七日後。


伊達政宗は。


最愛の者に裏切られる。


どう考えても。


嫌な話だ。


「これ、予言ですよ!」


「知っておる」


「しかも最愛の者ですよ!」


「それも読めば分かる」


「じゃあ何で笑ってるんです!」


政宗は。


少し考えるような顔をした。


「最愛の者が誰なのか、俺にも分からぬからだ」


「そこ!?」


思わず。


声が裏返った。


紬が。


ぼそっと言う。


「最低」


「おい」


政宗が紬を見る。


紬は。


目を逸らさない。


「最愛の人が分からないって」


「では、そなたには分かるのか」


「私?」


「最も愛する者だ」


紬が。


黙った。


長い。


かなり。


長い。


「……いない」


「ほう」


政宗が笑う。


「同じではないか」


「違う」


「何が」


「私は最初からいない。政宗様は、いるのに分からないだけ」


「なぜ俺にはいると決めた」


「奥方いるでしょ」


俺は。


思わず。


「あ」


と声を出した。


愛姫。


いた。


そうだ。


政宗の妻。


俺。


完全に。


忘れていた。


「拓真」


政宗が俺を見る。


「今、忘れておったな」


「忘れてません!」


「嘘」


紬が言う。


「忘れてました!」


新八さんが。


ものすごく嫌そうな顔をした。


「お前は正直なのか嘘つきなのか、どちらなのだ」


「自分でも最近分からないです!」


     ◇


問題は。


笑って済む話じゃなかった。


最愛の者。


誰だ。


愛姫。


母親。


弟。


小十郎さん。


成実。


家臣。


伊達家。


民。


もしかしたら。


人とは限らない。


「馬」


俺が言った。


政宗が。


ゆっくりこちらを見る。


「何だ」


「いや、政宗様が一番好きなの、馬だったりしません?」


「拓真」


「はい」


「帰れ」


「追放されたから帰る場所ないですよ!」


政宗が笑う。


でも。


小十郎さんは。


笑っていなかった。


「殿」


「分かっておる」


政宗も。


すぐに真顔へ戻った。


「これは予言ではない」


俺は。


政宗を見る。


「どういう意味です」


「脅しだ」


小十郎さんが答えた。


「七日後。最愛の者。裏切り」


指を折るように。


一つずつ。


「曖昧な言葉ばかりです」


「あ」


俺は。


やっと気づいた。


「誰にでも当てはめられる?」


「はい」


小十郎さんが頷く。


「しかも、七日という期限がある」


俺は。


嫌な感じがした。


「待つしかなくなる」


「そして」


小十郎さんが続ける。


「疑うしかなくなる」


部屋が。


静かになった。


そうだ。


七日後。


最愛の者が裏切る。


そう言われたら。


六日間。


ずっと考える。


誰だ。


あいつか。


いや。


こいつか。


昨日。


変な動きをしていなかったか。


あの時の言葉。


もしかして。


疑う。


探る。


避ける。


問い詰める。


そして。


疑われた側は。


傷つく。


怒る。


「予言って」


俺は言った。


「当たるんじゃなくて」


全員が俺を見る。


「人間が、当たるように動いちゃうことがあるんですよ」


政宗が。


目を細めた。


「申せ」


「例えば」


俺は。


少し考える。


「お前は裏切るって言われた人がいる」


「うむ」


「周りがそいつを疑う」


「うむ」


「仕事を外す。話を聞かない。見張る。避ける」


紬が。


腕を組んで聞いている。


「そしたら」


俺は続ける。


「疑われた人は思うかもしれない」


声を落とす。


「どうせ信じてもらえないなら、本当に裏切ってやるって」


誰も。


すぐには。


何も言わなかった。


「……面倒」


紬が言った。


「そうなんですよ」


俺は。


ため息をつく。


「人間って本当に面倒なんです」


「拓真が一番面倒」


「何で今俺に戻るんです!」


「疑われたらずっと気にする」


「気にしますよ!」


「すぐ顔に出る」


「それは体質です!」


「この前、私がすぐ答えなかっただけで傷ついてた」


「今それ蒸し返す!?」


紬が。


ほんの少し。


笑った。


俺は。


腹が立つ。


でも。


その笑いで。


少しだけ。


空気が軽くなった。


     ◇


政宗は。


その日のうちに。


城へ戻ると言った。


俺は。


まだ表向き追放中。


「俺は?」


聞いた。


政宗が。


こちらを見る。


「寺におれ」


「何で!」


「追放されたのだろう」


「あなたが追放したんでしょう!」


「表向きな」


「だったら連れてってくださいよ!」


政宗が。


にやっと笑う。


「寂しいのか」


「違います!」


「顔がそう申しておる」


「顔を読むな!」


紬が。


横から。


「寂しいんだ」


「違う!」


千代まで。


「私たちいるよ」


「優しいけど今は違う!」


楓が。


ため息をついた。


「面倒」


「全員で言うな!」


結局。


俺たちは。


そのまま寺に残った。


政宗。


小十郎さん。


新八さんは城へ戻る。


新八さんも?


と聞いたら。


護衛だ。


と言われた。


「じゃあ俺の護衛は?」


「紬」


政宗が言った。


俺は。


紬を見る。


紬も。


俺を見る。


「いや」


俺が言う。


紬も。


「嫌」


声が重なった。


政宗が笑った。


「仲がよいな」


「よくない!」


また。


重なった。


最悪だ。


     ◇


その夜。


俺は。


眠れなかった。


七日後。


最愛の者に裏切られる。


頭から。


離れない。


そして。


もう一人の未来人。


そいつは。


俺が来る前から。


俺が来ることを知っていた?


伊達政宗が天下を取れない未来を。


知っている。


同じ未来から?


もっと後?


それとも。


全然違う時代?


考えても。


分からない。


「起きてる?」


声。


紬だった。


「起きてます」


「入る」


「返事待たないんだ」


戸が開く。


紬が入ってくる。


「何です」


「眠れない」


「珍しいですね」


「うるさい」


「はい」


紬は。


俺の向かいに座った。


黙る。


俺も。


黙る。


この人。


話がある時ほど。


なかなか話さない。


「拓真」


「はい」


「未来を知ってたら」


紬が。


俺を見る。


「人は幸せになるの?」


俺は。


答えられなかった。


簡単には。


「分かりません」


「また」


「だって」


俺は。


少し笑う。


「本当に分からないんです」


「未来人なのに」


「未来人だからですよ」


「何それ」


「未来知ってたって、幸せにはなれませんよ」


俺は。


天井を見る。


「俺のいた時代だって、明日の天気分かるし。会社が潰れそうなら噂になるし。病気だって調べられる」


「うん」


「でも」


思い出す。


田中。


倒れた同僚。


代わりをどうする。


それしか聞かなかった上司。


「未来が少し分かってても、嫌なものは嫌なんです」


紬は。


黙っていた。


「逆に」


俺は続ける。


「知らない方がよかったこともある」


「例えば」


「この予言」


即答した。


紬が。


少し笑う。


「確かに」


「知らなきゃ、政宗様は普通に七日過ごせた」


「でも」


紬が言う。


「本当に裏切られるなら?」


「……」


「知ってた方がいいんじゃない」


そう。


それも。


正しい。


「だから」


俺は。


頭を抱えた。


「分からないんですよ!」


紬が。


少し。


笑った。


「役に立たない」


「未来人への期待が重い!」


「もう一人の方が役に立つかも」


「それ言います!?」


「気にしてた?」


「少し!」


俺は。


即答した。


紬が。


また笑う。


「馬鹿」


「はいはい」


でも。


少し。


気が楽になった。


     ◇


翌朝。


城から。


使者が来た。


小十郎さんから。


二通目の紙。


俺たちは。


すぐに開いた。


読めないので。


使者に読んでもらう。


「何て?」


俺が聞く。


使者が。


少し。


言いにくそうな顔をした。


「一言だけです」


「何て」


「裏切るのは」


少し。


間。


嫌だ。


ものすごく。


「女」


紬の顔が。


変わった。


千代も。


楓も。


俺を見る。


俺は。


頭を抱えた。


「最悪だ……」


女。


愛姫。


義姫。


紬。


千代。


楓。


小鈴。


志乃。


他にも。


いくらでもいる。


その時。


使者が。


もう一つ。


小さな包みを出した。


「こちらも」


「何です?」


「同じ場所に」


中。


髪。


黒い。


長い。


一房。


そして。


紙。


一言。


――最愛の女は、もう政宗のそばにいる。


俺は。


何も言えなかった。


紬が。


自分の髪を。


ゆっくり。


触った。


そして。


小さく言った。


「これ」


俺を見る。


「私と同じ長さ」


部屋の空気が。


完全に。


凍った。


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