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『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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第31話 政宗のそばに、未来を売ろうとしている裏切り者がいます

「なるほど」


政宗が言った。


それだけだった。


俺は。


少し待った。


小十郎さんも。


新八さんも。


紬もいる。


昨夜。


山で捕らえた男たちから聞き出した話。


敵は。


俺が未来人だと知っていた。


携帯電話。


電気。


そこまで。


知っていた。


しかも。


知りたいのは。


伊達政宗の未来。


この男が。


天下を取るのか。


それとも。


死ぬのか。


そして。


情報を漏らした人間は。


伊達家の中にいる。


俺たちは。


そこまで。


報告した。


なのに。


政宗は。


「なるほど」


それだけ。


俺は我慢できなかった。


「いやいやいや!」


政宗が俺を見る。


「何だ」


「なるほど、じゃないでしょう!」


「では、何と言えばよい」


「もっとこう……驚くとか!」


「驚いておる」


「見えない!」


「拓真」


新八さんが横から言う。


「殿にお前と同じ反応を求めるな」


「俺の反応、そんなに悪いですか?」


紬が言った。


「うるさい」


「それだけ!?」


小十郎さんが。


静かに。


「拓真殿」


と呼ぶ。


「はい」


「今は少し」


「黙ります」


もう。


分かるようになってきた。


成長した。


嫌な成長だけど。


政宗は。


捕らえた男から聞き出した内容を。


もう一度。


ゆっくり聞いた。


「俺が天下を取るか」


「はい」


「死ぬか」


「はい」


「それを知って、勝つ側につく」


「そう言ってました」


政宗が。


鼻で笑った。


「くだらぬ」


俺は。


少し驚いた。


「くだらないです?」


「未来を知って勝つ側につく?」


政宗の片目が。


細くなる。


「その程度の者は、未来を知っても負ける」


格好いい。


ものすごく。


格好いい。


俺が。


少し感動していると。


政宗がこちらを見た。


「何だ、その顔は」


「いや」


「気味が悪い」


「せっかく格好いいと思ったのに!」


「気味が悪い」


「二回言うな!」


紬が。


少し笑った。


政宗も。


口元を上げる。


でも。


すぐに。


顔が戻った。


「小十郎」


「はっ」


「何人だ」


「現時点で、拓真殿が未来より来たと知る可能性のある者は」


小十郎さんが。


少し間を置く。


「正確には分かりませぬ」


俺は。


嫌な予感がした。


「どういう意味です?」


「殿との最初の会話を、誰がどこまで聞いていたか」


「……」


「拓真殿が携帯電話なる物を見せた時、誰が近くにいたか」


「……」


「その後、誰が誰へ話したか」


「……」


小十郎さんが。


俺を見る。


「分かりませぬ」


俺は。


頭を抱えた。


「最悪じゃないですか!」


「ですから」


小十郎さんが言う。


「最初から秘密は、完全には守られていなかったのかもしれません」


怖い。


本当に。


俺。


もっと。


適当に考えてた。


未来人だって言って。


携帯見せて。


政宗と叫んで。


電気なんて作れないって。


大声で。


……大声?


「ちょっと待ってください」


「何です」


「俺」


嫌な記憶。


「かなり大声で、未来人を万能だと思うなって叫びました?」


新八さんが。


即答した。


「叫んだな」


紬も。


「叫びそう」


「お前、その時いなかったでしょう!」


「でも叫びそう」


「否定できない!」


俺は。


畳に手をついた。


「俺じゃん……」


「何がだ」


政宗が聞く。


「情報漏らしたの、半分俺じゃん……」


政宗が。


笑った。


「はははは!」


「笑い事じゃない!」


「安心せよ」


「何を!」


「半分ではない。もっとであろう」


「安心できるか!」


本当に。


この人は。


人の傷を広げる。


     ◇


「では」


小十郎さんが話を戻した。


「今後、どうなさいます」


政宗は。


少し考えた。


ほんの。


数秒。


そして。


言った。


「俺を餌にするか」


俺は。


政宗を見る。


新八さんを見る。


小十郎さんを見る。


もう一度。


政宗を見る。


「……は?」


「聞こえなかったか」


「いや」


聞こえた。


聞こえたから。


嫌だ。


「あなたまで自分を餌にするの!?」


俺は叫んだ。


新八さんが。


ぼそっと言った。


「似た者同士だな」


「どこが!」


「すぐ自分を餌にする」


「違います! 俺は仕方なく!」


政宗が言う。


「俺も仕方なく」


「絶対楽しんでるでしょう!」


政宗が。


笑った。


ほら。


やっぱり。


「何をする気です」


俺は聞く。


政宗は。


俺を見る。


「未来を流す」


「未来?」


「偽の、だ」


嫌な感じがした。


「どういう」


「伊達政宗は」


政宗が。


自分のことを。


まるで他人みたいに言った。


「近いうちに大敗する」


俺は黙る。


「そして」


政宗は。


笑った。


「死ぬ」


「嫌です」


即答した。


部屋が。


少し静かになった。


政宗が。


「何がだ」


と聞く。


「その嘘」


「なぜ」


「嫌だからです」


「理由になっておらぬ」


「なってます!」


俺は。


少し。


腹が立っていた。


何に。


自分でも分からない。


でも。


嫌だった。


「未来を」


言葉を探す。


「そんなふうに使うの、嫌です」


政宗の目が。


少し変わった。


「お前は未来を知っておる」


「大筋だけです」


「ならば、その大筋を少し曲げて流せばよい」


「簡単に言うな!」


俺は。


声を上げた。


「俺だって怖いんですよ!」


誰も。


何も言わなかった。


止まれない。


「俺が何か言ったせいで、本当に歴史が変わったらどうするんです!」


「もう変わっておるかもしれぬぞ」


政宗が言った。


正しい。


腹が立つくらい。


「それでも!」


俺は続ける。


「あなたが死ぬなんて嘘を、未来人の俺から聞いたって形で流したら」


「うむ」


「それを信じて、本当に何かする人が出るかもしれない!」


政宗は。


静かだった。


「だから炙り出す」


「でも!」


「拓真」


声。


低い。


俺は。


口を閉じた。


「嘘で俺を殺せるなら」


政宗が言う。


「安いものだ」


俺は。


黙る。


「本当に死ぬよりな」


何も。


言い返せなかった。


悔しい。


でも。


分かる。


分かってしまう。


「……そういう言い方、ずるいですよ」


「そうか」


「反論できなくなる」


「ならば俺の勝ちだ」


「そういうところですよ!」


小十郎さんが。


少しだけ。


笑った。


     ◇


結局。


作戦は決まった。


偽情報。


伊達政宗は。


近いうち。


東の戦で大敗する。


重傷。


あるいは。


死亡。


俺は。


最後まで。


嫌だった。


でも。


認めた。


条件つきで。


「誰にでも流すのは駄目です」


「うむ」


「一人ずつ、少しずつ内容を変える」


小十郎さんが頷く。


「先日の方法ですね」


「はい」


「誰から漏れたか分かるように」


「そうです」


政宗が俺を見る。


「未来人らしい知恵か」


「会社員らしい知恵です」


「同じではないのか」


「全然違います!」


俺の未来人要素。


だんだん。


会社員経験に負けてる気がする。


少し悲しい。


「では」


政宗が。


にやり。


「拓真も一つ預かれ」


「嫌です」


「即答するな」


「また部屋からメモ盗まれたらどうするんです!」


紬が言った。


「書かなければいい」


「正論やめて!」


小鈴の件。


まだ。


刺さる。


俺は。


もうメモしない。


絶対。


たぶん。


「拓真」


紬が呼ぶ。


「何です」


「この前」


少し。


言いにくそう。


珍しい。


「何です?」


「志乃に」


「ああ」


「拓真を渡せって言われた時」


俺は。


一瞬。


黙った。


「はい」


「私」


「はい」


「すぐ答えなかった」


胸。


少し。


痛い。


まだ。


残ってたのか。


俺。


面倒くさいな。


「そうですね」


「怒ってる?」


「怒ってません」


「嘘」


「紬に言われたくない!」


紬は。


黙る。


俺も。


黙る。


部屋の端にいた新八さんが。


嫌そうな顔をした。


「外でやれ」


「何を!?」


「痴話喧嘩」


俺と紬が。


同時に言う。


「違います!」


「違う」


また。


重なった。


政宗が笑う。


「仲がよいな」


「よくない!」


俺と紬。


また。


重なった。


最悪。


「で」


紬が。


俺を見る。


「傷ついた?」


真っ直ぐ。


聞かれた。


ずるい。


俺は。


少し考えた。


そして。


「少し」


正直に答えた。


紬が。


目を逸らした。


「ごめん」


小さかった。


聞き間違いかと思った。


「今、何て?」


「もう言わない」


「いや、もう一回!」


「うるさい」


「貴重なんですよ! 紬の謝罪!」


「死ね」


「急に悪化した!」


でも。


少し。


嬉しかった。


本当に。


少しだけ。


     ◇


三日後。


偽の未来情報を。


五人に流した。


少しずつ。


違う内容で。


一人には。


東で負ける。


一人には。


冬までに死ぬ。


一人には。


重傷を負う。


一人には。


家督が揺らぐ。


そして。


最後の一人には。


政宗は。


夜襲で死ぬ。


俺たちは。


待った。


誰が。


動くか。


一日。


何もない。


二日。


何もない。


三日目。


小十郎さんが。


俺を呼びに来た。


「拓真殿」


顔が。


いつもと違った。


「何かありました?」


「はい」


「漏れた?」


「はい」


心臓が。


鳴る。


「どの情報です」


小十郎さんが。


俺を見る。


「夜襲で死ぬ」


俺は。


息を止めた。


その情報を。


誰に渡した。


小十郎さんは。


静かに。


名前を言った。


伊達家に。


長く仕えた。


古参の家臣。


俺は。


その名を。


まだ。


よく知らなかった。


だが。


小十郎さんの顔を見れば。


分かった。


軽い相手ではない。


「その人が」


俺は聞く。


「内通者ですか」


小十郎さんは。


首を振った。


「分かりませぬ」


「でも漏れた」


「はい」


「じゃあ」


「拓真殿」


遮られた。


「その者は」


小十郎さんが。


低い声で言った。


「昨夜、死にました」


俺は。


何も言えなかった。


「……え?」


「首を吊って」


小十郎さんの顔が。


硬い。


「遺書を残しております」


嫌な予感。


また。


強くなる。


「何て」


俺が聞く。


小十郎さんは。


一度。


目を伏せた。


そして。


答えた。


「伊達政宗を」


言葉。


重い。


「未来人の災いから守るために死ぬ、と」


俺は。


息ができなくなった。


俺?


俺が。


災い?


その時。


廊下の向こうから。


政宗の声がした。


「拓真」


振り返る。


政宗が。


立っていた。


笑っていない。


「今度は」


片目が。


冷たい。


「お前が餌だ」


俺は。


一瞬。


言葉を失った。


それから。


叫んだ。


「だから何で毎回そうなるんですか!」


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