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『奥州から始める伊達政宗との天下統一 〜未来人の俺、独眼竜の無茶振りに今日も振り回されています〜』  作者: 藤原朝臣御神常陸介釋寛浩


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第24話 俺だけに教えられた嘘が、翌朝には敵へ漏れていました

朝。


俺は。


政宗の部屋に呼ばれた。


嫌な予感しかしなかった。


そもそも。


朝一番で伊達政宗に呼ばれて。


ろくなことがあった記憶がない。


米を増やせ。


兵を増やしたい。


電気を作れ。


水路を直せ。


大体。


俺の仕事が増える。


「失礼します」


部屋へ入る。


政宗がいた。


小十郎さんはいない。


代わりに。


新八さんがいた。


そして。


床の上に。


小さな紙が置かれていた。


「拓真」


政宗が言った。


「座れ」


「嫌です」


「なぜだ」


「絶対、嫌な話でしょう」


「座れ」


「はい」


座った。


命は大事だ。


「これを見ろ」


紙を渡される。


俺は見る。


「読めません」


「知っておる」


「じゃあ何で見せたんです!」


朝から腹が立つ。


政宗が言った。


「昨夜、お前に話したことが書かれておる」


「え?」


俺は。


もう一度紙を見た。


昨夜。


政宗と。


二人だけで話した。


俺に渡された偽情報。


三日後。


政宗がわずかな兵だけを連れ。


東の堤を視察する。


本当は。


そんな予定はない。


完全な嘘。


政宗が。


俺だけに教えた嘘。


「これ」


俺は顔を上げる。


「どこにあったんです」


新八さんが答えた。


「屋敷の外へ出ようとした小僧が持っておった」


「小僧?」


「薬草を売りに来る者だ」


「誰から受け取ったんです?」


誰も。


すぐには答えなかった。


それで。


分かった。


嫌な答えだ。


「誰です」


俺は聞いた。


政宗が言う。


「紬だ」


心臓が。


嫌な音を立てた。


「……は?」


「小僧は、紬から渡されたと申しておる」


「違います」


即答した。


政宗が俺を見る。


「何がだ」


「紬じゃない」


「なぜ分かる」


「だって」


言葉が止まる。


だって。


何だ。


紬だから?


俺が拾ったから?


一緒に飯を食ったから?


俺の魚を盗ったから?


道端で死にかけて。


人を信じなくて。


それでも少しずつ笑うようになって。


千代を助けるために。


怖い場所へ戻った。


だから。


裏切らない?


それは。


証拠になるのか。


「……昨日の話」


俺は言った。


「俺、誰にもしてません」


「知っておる」


「紬にも」


「うむ」


「じゃあ紬は知りようがないでしょう!」


政宗は。


黙った。


新八さんも。


「俺が話してないなら!」


声が大きくなる。


「紬が漏らせるわけない!」


「拓真」


政宗の声。


静かだった。


「では、なぜ小僧は紬から紙を渡されたと申しておる」


「それは」


分からない。


「誰かが紬に持たせたとか」


「誰が」


「……分かりません」


「中身を知らずに渡したか」


「そうかもしれない!」


「証は」


「ありません!」


自分で言って。


苦しくなる。


証拠。


何もない。


「ですが」


俺は言った。


「紬じゃない」


政宗は俺を見る。


長い。


沈黙。


「それは」


言った。


「信じているのか」


俺は。


答えられなかった。


信じている。


そう言えばいい。


簡単だ。


でも。


昨日。


俺は小十郎さんを疑った。


信じたいから疑わなくていい理由にはならない。


紬自身が。


そう言った。


「……分かりません」


正直に答えた。


「最低ですね、俺」


誰も。


何も言わなかった。


     ◇


紬を呼んだ。


千代も来た。


なぜか楓まで。


「何で楓さんも?」


俺が聞く。


「紬が呼ばれたから」


「理由になってません」


「気になる」


「正直だな」


紬は。


いつも通りだった。


少なくとも。


見た目は。


「何」


俺を見る。


「朝飯の途中なんだけど」


「魚は?」


「食べた」


「俺の?」


「今日は違う」


「今日は、って言いました?」


「話は何」


逃げた。


絶対。


今度問い詰めよう。


でも。


今は。


それどころじゃない。


俺は。


紙を見た。


紬を見る。


言いにくい。


ものすごく。


「昨日」


「うん」


「薬草売りの男の子に、何か渡しました?」


紬の顔が。


少し変わった。


「渡した」


俺の胸が。


沈んだ。


「何を」


「紙」


「中身は?」


「知らない」


「誰から?」


紬は。


一瞬。


黙った。


その一瞬が。


嫌だった。


「紬」


「……楓」


俺たちは。


楓を見る。


楓が。


目を細めた。


「私?」


「昨日、紙を渡したでしょ」


「渡した」


今度は。


全員が楓を見る。


俺は頭を抱えたくなった。


何これ。


一人増えた。


「楓さん」


「何」


「何の紙です?」


「布と薬草の注文」


「本当に?」


聞いた瞬間。


後悔した。


楓の顔が変わった。


冷たく。


「疑ってる?」


「違っ」


「違わないでしょ」


「いや」


「聞いたじゃない。本当に、って」


正しい。


完全に。


正しい。


俺は。


楓を疑った。


今。


確かに。


「……すみません」


「謝ればいいと思ってる?」


「思ってません」


「じゃあ何」


「分からないです」


楓は黙る。


紬が言った。


「楓から紙を受け取った。私は字が全部読めるわけじゃない。だから中までは見てない」


「それを薬草売りの子に?」


「渡した」


「なぜ紬が」


「頼まれたから」


「誰に」


また。


一瞬。


沈黙。


「……千代」


俺たちは。


千代を見る。


千代が。


泣きそうな顔になった。


「ち、違う」


「千代?」


「私じゃ」


「頼んだでしょ」


紬が言う。


「昨日、私に」


「でも」


千代の目に涙が溜まる。


「そんな紙だと思ってない!」


空気が。


ぐちゃぐちゃになった。


楓が紙を書く。


千代が紬に頼む。


紬が薬草売りの少年へ渡す。


その紙の中から。


俺だけが知っているはずの偽情報が見つかる。


「ちょっと待ってください!」


俺は両手を上げた。


「順番に! お願いだから順番に話しましょう!」


紬が言う。


「うるさい」


「今はうるさくさせてください!」


俺は千代を見る。


「どうして紬に渡してもらったんです?」


千代は。


泣きながら答えた。


「あの子」


「薬草売りの?」


頷く。


「小さい子たちに、薬を持ってきてくれたから」


助け出した少女たちの中には。


まだ具合の悪い子もいる。


「お礼をしたくて」


「それで?」


「楓に聞いたら、布を買うついでがあるからって」


楓が続ける。


「私は必要な物を書いただけ」


「その紙を千代へ?」


「そう」


「千代から紬へ」


千代が頷く。


「紬から少年へ」


紬も。


「そう」


俺は。


頭を抱えた。


全員。


怪しい。


全員。


怪しくない。


何なんだ。


これ。


「で」


楓が言う。


「その紙に何が書いてあったの」


俺は。


政宗を見る。


政宗が頷いた。


「偽の軍議情報だ」


紬の顔が。


変わった。


楓も。


千代は。


意味が分からないらしい。


「私たちを」


紬が言った。


「疑ってるの」


俺は。


答えられなかった。


その沈黙が。


答えになった。


紬が。


笑った。


嫌な笑いだった。


全然。


楽しくない笑い。


「そう」


「紬」


「別に」


「違うんです」


「何が」


「俺は」


言葉が出ない。


信じてる。


でも。


疑ってる。


矛盾している。


俺は。


自分でも嫌になる。


「信じたいです」


やっと。


言った。


紬の目が。


少し細くなる。


「信じたい?」


「はい」


「信じてる、じゃなくて?」


痛い。


本当に。


痛い。


「……はい」


紬は。


しばらく俺を見た。


そして。


「正直だね」


と。


言った。


褒めてはいない。


「最低ですけど」


「うん」


「そこは否定してくださいよ」


「無理」


少し。


いつもの紬に戻った。


でも。


ほんの少しだけ。


距離ができた。


それが。


分かった。


「紬」


「何」


「怒ってます?」


「別に」


「絶対怒ってる」


「怒ってない」


「そう言う時は」


「しつこい!」


怒ってる。


間違いない。


「信じてなんて頼んでない」


紬が言った。


俺は黙った。


「最初から」


続ける。


「誰も信じない方が楽だから」


それ。


前にも。


似たようなことを聞いた気がする。


でも。


今は。


違って聞こえた。


「でも」


俺は言った。


紬が見る。


「俺は」


言葉を探す。


「疑ったことを、なかったことにはしたくないです」


「……」


「疑って。確認して。それでも違ったら」


一度。


息を吸う。


「ちゃんと謝ります」


「今も謝ったじゃない」


「もっと本気で」


「何それ」


「分かりません」


紬が。


ほんの少し。


笑った。


「馬鹿」


「知ってます」


     ◇


その後。


紙を。


もう一度調べた。


小十郎さんは。


まだ呼ばれていない。


政宗。


新八さん。


俺。


それから。


なぜか紬も残った。


「帰らないんです?」


聞く。


「疑われたまま嫌だから」


「怒ってるじゃないですか」


「怒ってない」


絶対怒ってる。


新八さんが紙を見る。


「この紙」


「はい」


「二枚重なっておる」


俺たちは。


見る。


本当に。


薄い紙が。


二枚。


ぴったり重ねられていた。


表。


楓が書いた注文。


裏。


偽の軍議情報。


「楓さんが書いた時から?」


俺が聞く。


紬が言う。


「知らない」


「千代が持っていた時は?」


「分からない」


「紬が受け取った時」


「見てない」


また。


分からない。


誰かが。


途中で差し込んだ。


誰が。


いつ。


「拓真」


政宗が呼ぶ。


「はい」


「お前は昨夜、俺の部屋を出てからどこへ行った」


「自分の部屋です」


「誰かと話したか」


「話してません」


「本当か」


「……」


俺は考えた。


本当に?


部屋へ戻った。


紬が。


寝具を直していた。


少し話した。


いや。


軍議のことは言っていない。


その後。


千代が。


小さい子が眠れないから来てほしいと言った。


行った。


戻った。


楓とすれ違った。


新八さんにも会った。


誰にも。


話していない。


「話してません」


答えた。


政宗が言う。


「ならば」


紙を見る。


「お前が話さずとも、知る方法があった」


「盗み聞き?」


「あるいは」


政宗が。


俺を見る。


「お前の部屋を探った者がいる」


「俺の部屋?」


「お前は」


嫌な予感。


「紙に書いたな」


俺は。


凍った。


「……」


書いた。


忘れないように。


未来の癖。


メモ。


小さな紙に。


東の堤。


三日後。


三十。


自分にだけ分かるように。


「書きました」


政宗がため息をつく。


「馬鹿」


紬も言う。


「馬鹿」


新八さんまで。


「馬鹿だな」


「三人で言わなくてもいいでしょう!」


でも。


その通りだ。


「その紙は」


政宗が聞く。


俺は。


答えようとして。


止まった。


どこだ。


確か。


部屋。


寝具の横。


いや。


しまった?


「……部屋です」


「行くぞ」


政宗が立った。


「今から?」


「当然だ」


「朝飯まだなんですけど」


「後にしろ」


「ひどい!」


紬が言う。


「私の魚なら残ってる」


「何で俺があなたの食べ残しを!」


「いらないならいい」


「いや、ちょっと待って!」


政宗が笑った。


一瞬。


空気が軽くなる。


でも。


俺の部屋へ着いた瞬間。


笑えなくなった。


部屋は。


荒らされていなかった。


何も。


変わらない。


ように見えた。


でも。


俺のメモは。


なかった。


「……消えてる」


俺が言う。


紬が。


部屋の隅を見る。


「拓真」


「何です」


「これ」


床。


わずかな泥。


足跡。


小さい。


大人ではない。


千代よりも。


紬よりも。


もっと。


小さい。


俺たちは。


黙った。


助け出した。


八人の少女たち。


その中の。


誰か。


俺は。


喉が乾くのを感じた。


その時。


廊下の向こうから。


小さな悲鳴が聞こえた。


俺たちが走る。


そこには。


助け出した少女の一人が。


倒れていた。


そして。


その手には。


俺の。


なくしたはずのメモが握られていた。


さらに。


その少女の口から。


血が。


流れていた。


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