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『織田信長、異世界へ 〜本能寺から始まる第六天魔王の天下布武アクション〜』  作者: 明太パスタ


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7/8

信長、国家予算(経済)を買い占める

武力によって帝国最強の聖騎士団をねじ伏せた私は、次なる戦へと駒を進めていた。

だが、今度の戦場は泥にまみれた戦場ではない。数字と、物流と、人間の欲望が渦巻く「市場」である。


「信長様……本当に、私を処刑もせず、このような大役を任せるのですか?」


王都の中心にある巨大な商業広場。私の斜め後ろで、白銀の甲冑の代わりに上質な旅装を纏ったレオンが、いまだに信じられないといった顔で私を見ていた。

前回の戦いで私の軍門に降った元聖騎士団長は、今や私の『足軽大将(実務責任者)』として、この王都での計画を補佐している。


「うつけめ、何度も言わせるな。死んだ者は一文の得にもならんが、生きた有能な駒は万金を産む。レオン、貴様はこれからオレの『楽市楽座』の目(監視役)となれ」


「らくいち……らくざ?」

レオンが首を傾げる。その横では、ドワーフのガルドが「へっ、またあんたの奇策が始まる国か」とニヤニヤと笑っていた。


グラン帝国の流通は最悪だった。

バルド侯爵をはじめとする腐敗した大貴族たちが、商人の集まりである『ギルド』と癒着し、法外な特権税(座の税)をむしり取っていたのだ。そのせいで物価は跳ね上がり、平民は飢え、国境へ送るべき兵糧すら滞る始末。


「国を動かすのは血筋ではない、銭と兵粮よ。レオン、あの立て札を広場の中央に突き立てよ」


私が命じると、レオンは戸惑いながらも、私があらかじめ書かせた巨大な木札を広場に設置した。そこに記された新しい『法』を目にした王都の商人や平民たちが、瞬く間に集まり、大騒ぎを始めた。


『本日より、この広場におけるすべての関税、市場税、ならびにギルドの特権を一切廃止する。何者であれ、ここで自由に商売を行うべし。これを保護するのは、織田信長である』


関税の撤廃と、既得権益(座)の解体。

かつて私が尾張や美濃で実施し、織田家を日本一の富国へと押し上げた最強の経済チート――『楽市楽座』の異世界版の宣言であった。


「な、何なんだこれは!? 貴族への税を払わずに商売をしていいだと!?」

「ギルドに所属していない流れ者の商人でも、店を出せるのか!?」


商人たちの間に衝撃が走る。

当然、これまで暴利を貪っていた大貴族やギルドの幹部たちが、血相を変えて私兵を率いて怒鳴り込んできた。


「おのれ織田信長! 我らの市場で勝手な真似を! 営業税を払わぬ不届き者どもは全員捕縛してくれるわ!」


「やれるものならやってみよ、うつけども」


私は冷徹に笑うと、背後に控えていた百名のエルフの銃兵たちに合図を送った。

ジャキッ、と一斉に構えられる『魔導火縄銃』。その銃口がパチパチと青い雷撃を帯びるのを見て、貴族の私兵たちは前回のオーク全滅の噂を思い出し、一瞬で顔を真っ青にして足を止めた。


「この楽市を害する者は、誰であれオレの三段撃ちで肉片に変える。だが、オレの法に従う商人は、この織田信長が全責任を持って守り抜いてやる」


圧倒的な武力の保証。これこそが、自由な交易を成立させる絶対条件だ。


その日を境に、王都の経済は爆発的に一変した。

税金が伝統的にかからないと知った地方の行商人や、ドワーフの職人たちが、こぞってこの広場に最高級の鉄鉱石や食料、魔導具を持ち込み始めたのだ。

他方、既存の重税に縛られた貴族側の市場からは、一晩で商人たちがいなくなった。


「報告いたします、信長様!」

数日後、レオンが興奮を隠せない様子で書類を広げた。


「王都の物流の実に八割が、我が『楽市』へと集中しています! 逆にバルド侯爵たちの市場は完全に干上がり、彼らの今月の税収はほぼゼロ……! 貴族たちは兵を雇う資金すら失い、完全に財政破綻しかけています!」


「ふははは! 見たか、これが戦わずして城を落とす、織田信長の『銭の合戦』よ!」


私は大坂……いや、王都の活気あふれる市場を見下ろし、豪快に笑った。

大貴族たちが利権を貪っていた国家予算級の富は、今や全て私の手元へと流れ込んでいる。この莫大な資金があれば、さらに数千丁の魔導火縄銃を造り、エルフやドワーフ、そして私を慕う人間の兵たちを養うことができる。


だが、この急激な変革は、王都のさらに奥――人類の敵である「魔王軍」の耳にも、届くところとなっていた。


「……お膳立ては整ったな。レオン、ガルド、集まった銭で次の仕込みを始めるぞ。次は空を飛ぶ『鉄の船』を造る」


経済を完全に掌握した第六天魔王。

その視線は、もはや腐った人間たちの帝国ではなく、大陸の全土を脅かす魔王軍との全面戦争へと向けられていた。

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