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第6章 都会の喧騒の仲で


席に戻っても、先ほどの光景が目に焼き付いて、温かくなったビールを手で弄んでいた。

隣の男性も私の様子がおかしいと気遣ってくれたが、

酔いのせいにして沈黙したら放っておいてくれた。そのうち、チェックインの時間に

間に合わないからと隣の男性は11時頃に店を出て行った。

食べ物も充分あったが、箸は進まない。しばらくして「閉店ですよ」と言われるまで

呆然とカウンター席に座っていたらしい。いつの間にか隣には2人組の男性が座っていて、

大きな声で談笑していた。

「お嬢さんに1杯生ビールお願い」と隣の席の男性が元気よくオーダーした。

私は横にいる男性を見る。時計を見ると0時はとっくに回っていた。

「何があったか知らないけど、まぁ冷たいのを飲んでリセットするのもいいよ」

隣の見知らぬ男性が人懐こい顔をして笑顔で私の目を見た。

我に返って「いえ、結構です」と言って席を立ち、お勘定をして、そそくさと店を出た。

失礼だと思ったが、見知らぬ男性の優しさに甘えて媚びる余裕も無かった。

無理に笑うのが辛かった。空虚な心境を語る必要も無い、

陽気で賑やかな人々が無関心でいてくれる方が望ましかった。街はまだまだ人で溢れている。

電車に乗り遅れた若い子がビルの下で座り込んで話をしている。近くにいる若い男の子たちが、

興味ありげに女の子達を見ながら相談している。やがて、一人の男の子が女の子達に声をかけた。

女の子達は、およびでないという風に一瞥して相手にもしない。

仲間がいると、こんな真夜中も怖いものなし。男の子たちも何か捨てゼリフを言って、

そそくさと次のターゲットのところへ。女の子3人組も立ち上がり、楽しげに、どこかに消えて行った。

朝まで電車は動かない。どこかに24時間営業の喫茶店はないかしら?

歩いて帰れば朝までには着くだろうけれど、女一人では途中寂しい。





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