表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/23

第5章 棄てられた男との再会


そんなことがあって、1週間くらいたった頃だったろうか。貴子は友人と渋谷で会う約束があり、

別れてから久しぶりに109に行って買い物を楽しんだ。お腹が空いたので、

帰りに昔よく行っていた居酒屋に行ってみた。

どこかで、悠との思い出を懐かしんでいたのかもしれない。

まさか本当に悠と再会するなんて考えてもいなかった。9時過ぎの居酒屋は混んでいた。

一人で軽く食べて帰ろうと思っていたので、カウンター席へ通されても平気だった。

最初は遠慮がちだった隣の男性が声をかけてきた。35歳位のビジネスマンで、おしゃべりも柔和、

頼れる兄貴という感じで安心できた。私はビールを2杯ジョッキで飲んでいて少々酔っていた

。東京は同郷だというだけで親しくなれる。隣の男性も田舎は岡山だった。

海の近くで育った私と違って、山奥の行ったことのない土地の名前を言われ、

よくわからなかったけど。故郷の方言やイントネーションが懐かしく、話が弾んだ。

隣の男性も出張で上京しひとりで飲んでいたらしく、打ち合わせが近くで終わって一人で

飲むのも殺風景だと思っていたところに、こんな美人が隣り合わせになるなんて嬉しいとばかり、

どんどんビールや食べ物を注文し奢ってくれた。ちょっと飲みすぎたと思い、

トイレに立ったらそこに悠がいた。イス席に背中を向けていたので気がつかなかったのだ。

悠は女性と二人連れで、好物のイカの刺身を美味そうに食べていた。

横には、それほど綺麗でもないギスギスしている女がビールのおかわりをしていた。

私の胸は怒りで息が止りそうだった。でも、体が動かない。ずっと見つめているしかなかった。

やがて、私の存在に気付いた悠は、目を外らし決まり悪そうな顔をして、

そそくさと出て行ってしまった。

私は、身じろぎもせず彼を見送り、トイレが空いたので中に入って考えていた。

追いかけようか?私の通帳は?何と言って呼び止めたらいいのだろう?

そんなことをあれこれ考えていたら、時間だけが過ぎていく。

私には事実を受け止める勇気など無かった。憤りはあったけど、

悠を見たら許してしまいそうになる自分を感じていた。

怒りに任せて悠を問い詰めることなど、自分には出来そうもなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ