第28章 貴子と別れてからの悠
正直、ずっと貴子を待って頑張っていたと言ったが、
少し嘘も入っている。あれから何人かの彼女ができた。
時には貴子を忘れるために、無闇に女を抱いた。
別れてから、水商売やネットワーク、株や投資もやった。
いつも貴子の父親からもらった100万円を引き出しの奥にしまい、あの日の屈辱を思い出しながら、
どうやったら稼げるのか、そのことばかりを考えていた。
二度と、好きな女を甲斐性がないという理由で諦めなければならないようなことがないように。
学歴や家柄で馬鹿にされないだけの成功を収めること。
それが目標になり、さまざまな業界に入り込み、ビジネスの仕方を身につけていった。
株で10倍になり、そこで知り合った仲間とお金を出し合って会社を立ち上げた。
バブル全盛期だったことも助けとなり、不動産は面白いように儲かった。
学がないので難しいことはわからないが、ひたすら体を張り、
身を粉にして寝る間も惜しんで仕事をした。おかげで会社は右肩上がり。
社員数は少ないが精鋭揃い。何より優良企業の経営者に悠は可愛がられた。
容姿の美しさと行動の速さ、何に対しても一生懸命なところ。
家庭の事情で学歴はないが、頭がいいので何でも吸収する。下手に知識を持たない分、
「教えてください」と真剣に学ぼうとする。しかも義理人情に厚く、約束は絶対に守る。
女性にモテることにはあまり関心がなく、夜飲みに行ってもアルコールは飲まず、
運転手に徹している。下戸なのに盛り上げ上手で、カラオケもゴルフもテニスも乗馬もこなす。
どこにいても人気者だが、それをひけらかさない。
「家が貧乏だったので、こんな贅沢な所に来るのは初めて」と喜ぶので、
社長たちもあちこちに連れて行ってくれた。しかも、一度会ったら顔や名前を忘れないため、
どんどん人脈を広げ、今では国会議員ともつながり、大きなプロジェクトを任されている。
悠は、簡単にあの日からの出来事を説明した。
貴子は何も言わず、静かに聞いていた。
「ずっと待っていたんだ。貴子しかいない。一目惚れなんだ。
あのコインランドリーで初めて出会った時から、ずっと寝ても覚めても君のことばかり考えていた。
他のどんな女と付き合ってみても、君への思いは募るばかり。会いたい」
貴子は少し意地悪そうな声で言った。
「色々な女の人と付き合ったの? 大好きなイカを一緒に食べたりして?」
「あっ、それは仕事仲間。僕のタイプじゃない。」
焦っているのがわかる。
この年になって清廉潔白な方がおかしい。




