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第21章 結婚できなかった理由を探してみても


家を出る前日、目が覚めて冷蔵庫の水を取って部屋に帰ろうとして

両親の寝室の前を通りかかった時、聞き覚えのある懐かしい名前が耳に入ってきた。

「悠君と別れさせなければ良かったんかいね。」

「あの男はいけん。あんな学歴もなく貧乏な家柄の男と縁を持ったら、うちの家業もおしまいじゃ。」

「でも、貴子はまだあの男を忘れられんで結婚できんのじゃないんかのう?」

「あんな男前は一緒になっても浮気ばっかりしよるに違いないわ。

一緒になっとっても、今頃離婚して不幸になっているだけじゃ。」

「でも、このまま結婚せんのなら、バツイチでも孫の一人ぐらいできとるんじゃないんか?

洋ちゃんの所なんか、出戻りだけど孫2人も連れて帰ってくれて、

将来後継ぎが出来て安泰じゃと喜んどったわ。」

「旦那はいらんけど、跡取りは欲しい。もう誰でもいいから婿養子にならんでもいいから、

結婚してもらって孫を見せてもらいたいもんじゃのう。」

私は聞き耳を立てて息を潜めていたが、

二人の会話はそこで終わってしまったので、足音を忍ばせて自分の部屋に戻った。

胸がドキドキ高鳴って、頭が混乱していた。両親はなぜ昔の彼のことを知っているのだろう?

別れさせたとは、どういうことなのだろう?

しかし、両親に詰め寄って真実を問いただす勇気はなかった。

20歳の頃の私は、両親には言えない背徳の日々を送っていたから。

とても紹介できる相手ではなかったし、結婚なんて反対されるのが分かっていたから、

内緒にしていた。結婚だってできるとは思っていなかったし、

今結婚できないのは彼のせいではなかった。

多分、私には健全な結婚のイメージがないのだ。

もっと言えば、自分の人生に夢や希望や未来図が描けていないから、

どんな人を結婚相手に選べばいいのか分からない。

私の中で唯一の物差しは、両親を悲しませないこと。

できれば喜ばせてあげたいと思ってはいたが、母のちょっとした愚痴を聞くと、

お見合い相手にNGを出してしまうのだ。

私が好きな人ではなく、両親を大事にしてくれる人。

両親が気に入った人と結婚しようと思っていたから。

昔のお見合いのように、結婚当日に初めて相手の顔を見るというような古式でもよかったのだ。

下手に私の希望を聞いてくれるので、責任を持ちたくない私は、

今までグズグズ結婚を先延ばしして、この歳になってしまった。




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