第9章 コインランドリーでの出会い
私と悠が出会ったのは近くのコインランドリー。
悠はマンガを読んで洗濯が出来るのを待っていた。
私は空きのないコインランドリーにどうしようかと困っていた。
「ここでいいなら、もうすぐ空くけれど」と、きれいな二重の目をした若者が声をかけてきた。
「ここの席空いてるからどうぞ」と、悠の前のイスを進められた。
私は、その優しくて男らしい声に胸がときめくのを感じた。ギリシャ彫刻のような、
こんな美形を今まで見たことがなかった。「タレントさん?」と聞いてみた。「わかった?」
「ごめんなさい、あまりテレビ見ないものだから」と答えると、彼は爆笑した。
「よく言われるけれど、そんなわけないでしょ。
こんなコインランドリーにそんな有名人がいるわけないし」。
そんな冗談で高笑いする悠の白い歯を、きれいだなあと思いながら見ていた。
「はい、空いたからどうぞ」と言って彼はマンガを小脇に挟んで出て行った。
洗濯と乾燥が終わって、家に帰ると男物のトランクスが混じっていた。
悠のものだとすぐわかった。それから、コインランドリーに行く度に、
悠のトランクスをビニールに入れ、いつでも渡せるように用意していた。
あの爽やかな笑顔にまた会いたかった。
ある夕方、近くの食事処に一人で入った。一人でお店に入ることが出来なかったのだけれど、
久しぶりにから揚げが食べたくなった。揚げ物など台所が汚れるのでやったことがない。
一人で食べるのは麺類か野菜の炒め物くらいで、田舎の母の作るお味噌汁や小鉢ものが
懐かしくなって、勇気を振り絞り、気になっていた食事処に入ったのだった。
「ここ、ここ!」大きな声で手を振っていたのが悠だった。
まるで、約束してたかのように馴れ馴れしく同じテーブルに座るよう誘導する。
私も再会が嬉しくて悠の前の席に着いて、から揚げ定食をオーダーした。
「わりと、がっつり系を食べるんだね」と言ってトンカツ定食にかぶりついている。
長年の友達みたいに気兼ねなく話せるから不思議。
「そっちだって、きれいな顔をして、ボリューム満点のお食事ね」と言うと
「あんたの方がきれいじゃない」と事も何気に言う。
から揚げ定食が来ると、あたり前のように2個食べられた。
私には多すぎたので調度いい。ご飯も残したものを全部きれいに平らげた。
気持ちのいい食べっぷり。その時、私は恋に落ちていた。




