都
歩き始める。
私は、橋を渡り切った。
都入りである。
空は晴れている。雲がまだあるけども。
路面は、まだ微か濡れている。
来た道を振り返る。
…
私は、歩き切った。
これは誇って良いことだろうか?
これまでの道程を思い描く。
私は正面に向き直った。
さあ、ここからは、よく知る光景です。
北上するのだ。
自宅を目指す。
足取りは重い。
当たり前だ。夜通し歩いたから当たり前だ。
眼がショボショボする。
クマが縁取りしてるかも知れない。
これからは安全圏で眠らなくてはならない。
今までは、人類が滅亡してる前提で旅をして来た。
人間の敵は人間です。
動物が生きてる以上、人類は何処ぞに生き残っているかもしれない。
…私のように。
ああ、なんてことだ。
せっかく人類が滅亡したというのに。
ふん、どっちにしろ、ボッチの私には関係ないわ。
…それにまだ分からない。
お父さんが昔話してくれたナンチャラの猫の話しを思い出す。
死んだ猫と生きた猫、可能性の同時存在の話しを聞いた。
何それ?訳分かんないよと、当時は笑った。
今、人類は滅亡した状態と生存した状態の二つの可能性が並存している。
確定はしていない。
苦しい…有ると無いがどちらも存在するって、何てツラくて苦しいのだろう。
でも希望はある…もどかしい。
私の家族は、もしかしたら生きているかもしれないと思う。
同時に期待し過ぎてはいけないとも思う。
無かったならば、今度こそ絶望で私の心は潰れてしまうかもしれない。
ああ…もしかしたら家族が生き残っているかもしれない…。
沸々と淡い思いが浮かびあがる。
ダメだ…期待してはいけない。
可能性は低い。
自分に言い聞かせる。
でも…それでも…。
心を強く持たなきゃいけない。
だから、私はまだ人類滅亡学者であるのだ。
何故か身なりは小さくとも、中身は頼りになる大人の男なのだ。お父さんのように。
そう…私の名前はソラ・グレイなのだ。
私は歩き出した。
大通りを北上していく。
歩いていけば辿り着く。
歩みを止めては行けない。




