北へ
歩く。歩けばいつかは辿り着く。何処に?
アスファルトの道は固い。
空は曇り、やがて雨が降って来た。
準備はしてある…大丈夫。
備えあれば憂い無し。
お父さんがいつも言っていたから。
言う通りしてたら、きっと大丈夫。
黒雲の空に向けて傘を差す。
トボトボと歩く、北へ北へ、ゆっくりと北へ行くんだ。
人生に波瀾万丈はいらない。
私が居て、家族が居て、皆んなでご飯を食べられれば、それでいい。
それだけで良かったのに…私は。
天を見上げる。
黒と灰色と混じりあった雲から、シトシトと雨が降っているだけ。
行き先を見れば…
ああ、前は土砂降りで良く見えない。
誰もいない…私だけがいる。何故?
一陣の突風が音を立てて私に当たり、後ろへと流れていく。
ハッとする。
途端に雨音が良く聞こえるようになった。
私は、こんな雨の中で、何故歩いてるのだろう?
自然は私に頓着しない。
何もかも自分で決めなくてはいけない。
そんな当たり前のことが絶望的に重い。
全ての結果は自分の責任だ。
そんな当たり前のことを心に刻みこまなければ、危ないと感じた。
風が雨を伴い巻くように私に吹き付けられる。
「雨宿りする、しなくては…。」
自分に言い聞かせるようにつぶやく。
そう、私は、私の指揮官なのだ。
もし、これが山の中だったと想像したら、ゾッとした。
世界中には私一人だけだから、何処からも助けは来ないのだ。
天候は、自然は、人間の味方てはない…。
私の認識に間違いない。
有史以来、自然は敵なんだ。
…最悪の事態に備えなければならない。




