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150.決着


雷が止み、槍の巨人がいた頭上の異空間が閉じる。


床から煙が立ち上り、槍の降った場所がヒビだらけに窪んでいることから、凄まじい攻撃が続いていた事が分かる。


「シュン!」


「あぁ、シュトローム...」


「なんだなんだ!もっと喜べ!俺達は勝ったんだぞ!」


「あ、あぁ...」


この不死身の身体をもってしても流石に疲れた。


たった今まで繰り広げていた激戦が本当に起こっていたことなのか、ぼんやりして分からなくなる。


「おい!シュン!とにかくここを出て皆と合流だ!こっちの時間経過は通常空間より遅い!ユーバー達が心配だ!」


確かにそうだ。


「これ、どうしよ?」


目の前に横たわる分断されたザダルの身体。


あっけない最後ではあったが、俺達二人は確かに最強の竜人を倒した。


「ほっとけ!んなもん持ち歩きたくねぇ!」


「...うん」


ライラック。仇は取ったぞ。


そういえばレベルが上がらない。対人戦だと経験値は入らないのだろうか?


「さぁ、行くぞ。一応戦闘態勢だからな!」


そうだ。まだローザやユーバー、サリオスが危険に晒されているかもしれない。


「行こう!」


シュンは次元の扉を開くと、疲れた体に鞭を打って外に出た。



***



「あれは...」


「!」


ローザが次元の扉から出てきた人物を視認するなり、待ちきれずに駆け出す。


ドカン!ドンッ!ドゴンッ!


崩れた瓦礫を驚異的なステータスで軽々と放り投げ道を作っていく。


「ははっ。凄い光景だな...。...無事だった?」


ドッ!


ローザが力いっぱいシュンに抱き着く。


「当たり前でしょ!」


顔をシュンの胸に埋め顔を離さない。


「ごめん。応援に来れなくて。こっちももう終わったんだね」


言葉無く胸の中で何度も頷くローザ。


「...シュン。無事で、良かった...!」


「あぁ。ローザも」


「ごほんッ。一応。私も無事でいるのですが...?」


覚醒を解いたシュトロームが後ろから声をかける。


「ふふ、ごめん。シュトロームも無事で良かった」


ローザが涙目でシュトロームに微笑む。


「キャッッ!」


「?どうしたのですか?」


シュトロームを見たローザが悲鳴を上げた。


それもそのはずで、覚醒を解いたシュトロームは衣類も元の人型の物を纏ってはいたが、右足と両腕から胸にかけた部分が千切れており、かなり際どい恰好をしている。


っていうかその服システムどうなってるの!?という突っ込みは今は控えておく。


「シュトローム!下!下!隠して!」


「!!はわっ!こっこれは失礼ッ!」


「ハッハッハー!」


その様子を見て瓦礫の上から笑い声がした。



!あれは!?


「シュンー!ザダルを、本当に倒したのかのッ!?」


「ああああっっっ!レイル!!」


「ハッハッハー!なんだその驚きっぷりは!主は仲間を信じておったのではないのかのぅ?」


「信じてたよ!レイルが無事でいる事も!ユーバーが助けだしてくれることも!勿論信じてたさ!」


レイルの後ろでサリオスを背負ったユーバーが静かに笑っている。


「それにしても...みんな酷いな。ちょっと集まりなよ」


激戦の跡を思わせる各々の姿を見て、シュンがガイアのメンバーを一か所に集める。


「エデン!浄化!」


シュワワワワワワ


「おぉぉ!」


皆埃を被り、癒しの舞の効果でHPは回復しているであろうが、細かい傷も多い。とりわけ女の子はやはり清潔でいたいだろう。


「やった♪浄化って地味に便利よね~」


「地味は余計だっ!」


『はっはっは!』


「シュン、サリオスを診てくれ。ドラゴンキラーにやられている」


そう言ってユーバーは優しくサリオスを地面に降ろす。


「えっ!?見た目は普通だけど...。目を開けないね。...治療!」


シュゥゥウ


なるほど確かに。前回サリオスを治療した時と同じ黒い小さな球が出てきて、空中で収束し消えてしまった。


「うぅ...」


「おぉ!良かった、サリオス!」


「ユゥ...君?」


「皆の前だが、今だけはその呼び方を許そう...!」


治してもらえると信じていたとはいえ、やはり実際に元気になった妻の姿を見ると、ユーバーの感動もひとしおなのだろう。


「姉者、良かったのぅ。本当に、良かった...」


「レイル!お前こそよくぞ無事だった。...ガイアには、助けられたな」


「だの。感謝してもしきれん」


柔らかに笑い合う姉弟。


「シュン殿。また助けられた。ありがとう」


「えっ、いや、いいって!無事で良かったよ」


シュンにとっては治療を使う事は何と言う事もない。改まって感謝されてなんだか照れてしまった。




「あれ?そう言えばジェミニは?」


「あやつもギベオンに軟禁されてはおったが、そこはやはり帝国軍の将。この場にはいずらかったのであろうの」


「ジェミニがいたの!?左大臣の!?」




それから俺達はお互いの空間で起こった経緯を報告しあう。




「ギベオン、いや、トゥクルがスカルドラゴンでデゼルの手がそいつを消し去って...ってもうなんだか凄いね!」


トゥクルを倒したという事は、闇の眷属大幹部の一角を崩した事になる。これは今後の俺達にとって大きい。


「いやいや、それよりもよくぞあのザダルを倒せたものよ」


「でもそれって運よくシュトロームがいたから良かったけど、もしいなかったら倒せなかったじゃないのよ」


「それなんだけど。ザダルは俺以外を外に出せると思ってたらしいんだ」


「ほう。...もしかすると、主従の証がお前達を繋いでいたのかもしれんな」


ユーバーに言われ、シュトロームの方を見る。


優しく微笑む人型のシュトロームは甘いマスクをしているが、やはりその恰好が...。


「ぶふっ!」


「ちょ!何を噴き出しているのですか!?今のは絆を確かめ合ってジーンとくるところでしょう!?」


「いや、だって!その恰好で言われても!」



『はっはっは!』



「とりあえずバゴに戻ろうよ!んでシュトロームは服着なよ!ブフゥッ!」


「分かりましたよ!分かったから早く戻りましょうよ!」


「ごめんごめん。じゃぁ、皆。行くよ?」


「ええ」


「うむ」


「はい」


「ハッハー!いざ!凱旋だのう!」


各々その表情には充実感が満ちている。

死闘だったけど...皆無事で良かった!


「瞬間移動!!」


シュン!


一筋の光を残し、俺達ガイアと竜人姉弟はバゴの街へと戻るのだった。





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