148.決戦⑫
「んー。何だったのかな?これは」
「そんな...」
シュトロームの新しいスキル、次元制御。
このスキルが効かないということは、空間を自在に操るあの恐ろしい攻撃を受け続けなければならないということだ。
しかもこちらの攻撃は一切ザダルには当たらない...。
次元の変化を強制的に操作するその効果から、スキルが当たれば動けなくなる物と当たり前のように思い込んでいた俺とシュトロームは絶望感に打ちひしがれる。
「くそったれ!シュン!どうすんだ⁉」
「...仕方ない。シュトロームは次元制御をブラックホールにだけ使ってくれ!」
「チッ!しゃぁねぇ!防御面は任せとけ!」
先の戦いで革命軍十騎士のライラックを死に追いやったザダルのスキル。正式名称が分からず、俺達は事前の作戦を立てたときに便宜上そのスキルをブラックホールと呼ぶことにしていた。
「ふふ、なんだか色々作戦を練ってきてるみたいだね。...ブラックホールってのは、これのことかな?」
そういってザダルは前方に手を伸ばすと、黒い球体がシュトロームの目の前に音も無く現れる。
「うぉぉッ!」
ヴゥゥン
触れる事が死を意味するその球体からシュトロームが距離を取る。
「なかなかの敏捷性だね。これならどう?」
ザダルがそう言うと、ブラックホールは一瞬にして消滅し、次の瞬間シュトロームの死角から別のブラックホール生み出され足を包み込む。
「シュトローム!下だ!」
「ッ!次元制ッ...」
スッ!
シュトロームがスキルを使おうとした次の瞬間。ブラックホールはシュトロームの右足と共に消え去った。
「ぐあぁぁぁ!」
バランスを崩しその場に倒れこむシュトローム。
ブラックホールの出現と消滅は本当に一瞬だ。前の時も死角から頭を持っていかれた。
やはりこのスキルは危険すぎる!
「くそっ!」
ヴゥン!
ライトニングを纏った長剣ルーン・コアが虚しくザダルの身体を切り裂く。
ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!
「五月蠅いなぁ」
ズガッ!
「ぐあッ!」
ザダルは攻撃を避けようともせず、軽くシュンを殴り飛ばした。
ドッ!ズザザザザザッ!
軽く突き出しただけの拳に、数メートルは吹っ飛ぶシュン。
「まだだッ!フレイム!ライトニング!ウォータ!アイス!」
ゴォオオォォッッ!
ズガンッ!
ズアァァァアアッッッ!
「衝波斬!ウォータースプラッシュ!フレイムサークル!」
一つ一つの魔法やスキルはステータスが限界を超えたシュンが使用すると各々が必殺の規模と威力を持つ。
しかし...。
「おぉー凄い凄い。色んな技を使えるんだねぇ。関心するよ」
やはりザダルにはどれもダメージは全く通っておらず、その場を動いてすらいない。
「...くそう。どうすれば...」
「まぁ、でも、もうそんなところかな?僕も戦争で忙しいしもう終わらせようかな」
「!避けろ!シュトローーム!」
「ッ!?」
ドッ!
「ガハッッ!」
まるで瞬間移動を使ったかのような踏み込み。
一瞬にしてシュトロームとの距離を詰めたザダルは、その細い右腕を床に座り込んでいたシュトロームの胸に深々と突き刺した。
「ふっ!ぐぅ!ガフッ」
「...」
無言で吐血した返り血を浴びるザダル。
「シュトローーム!!」
「へっへ...そんなに焦るなって...ごフッ!」
やられたと思った覚醒シュトロームが、その魔物のように太い二本の腕で自身の胸を貫くザダルの腕をしっかり掴む。
「ザダルよぉ。掴めてるぜ...。俺に触られているこの状態でコイツを躱せるかぁ!?」
「むっ!?」
シュトローム!まさか!
「シュン!!後は頼んだぜ!くらえぇぃ!次元制御!」
グオオオオオ!
腕を掴まれたザダルの身体が渦を描き歪みだす!
これはッ...。チャンスだけど!シュトローム!お前ごとやれと言うのか!?
「シュンーーー!!さっさとやれーーー!期を逃すなあああぁぁ!」
顔中、体中血まみれになりながら必死に叫ぶシュトローム。
「くそーーーぉぉぉぉぉぉぉッ!」
ごめん!シュトローム!!
俺はコスモ・コアにありったけの魔力を流し、眩く光るその長剣をザダルに振り下ろした。




