147.間話
「はぁっ、はぁっ、」
(最悪だぁ、畜生~ッ!)
大汗をかきながら、戦場の端を兵士達の目につかぬようひっそり後退する一人の竜人。
(ハークライツが生きているなんてとんだ誤算だ!くそーッ!このまま帝国軍に戻っても殺される!革命軍に捕虜として捕まっても裏切者の俺は間違いなく殺される!)
毒牙のエールマン。
敗北が決し、行き場の無くなった竜人は、それでもしぶとく生き延びる為この場から逃れようと試みる。
(くそッ!くそッッ!こんなはずじゃぁ...!)
戦場から一人脇に逸れ、森の中に紛れ込んだ竜人は、一人後退を急ぐ。
(よしッ!よしッ!とにかく逃げよう。どこか森の奥でひっそり暮らすのも悪くない。俺がこのまま姿を消せば、誰もがこの戦でやられたと思ってくれるだろう)
ザザザッ!ガサガサガサッ!
人目が無くなり、徐々に全力で走り出すエールマン。
しかし...。
「はい。すとーぉっぷ!」
「!?」
突然木の上から一人の竜人が軽やかに飛び降りてきた。
「戦は終わったようだけど、...負けた将が一体どこへ行くのかな?」
「きっ!!貴様はッ!!何故ここにぃぃいいい!」
ありったけの憎しみを込めて言葉をぶつけるエールマン。
たなびく金髪に、目深く被った羽根つき帽子の下から、鋭い眼光とニヒルな口元がチラリと見える。
埃をかぶり色褪せたマントは、その者が長い間旅を続けている放浪者であることを物語っていた。
「はっはっはー。久しぶりだね。エールマンくん。僕の事、覚えていてくれて良かったよ」
「...オルフェウスーーーッ!」
四天大将最後の一人、黄金のオルフェウス。この戦時に於いても、行方知れずになっていた実力者だ。
キィン!
「ッ!?」
目にも止まらぬ一瞬の居合。
ブシュウウゥッッ!!
「ぐわああああぁぁ!」
両の太ももから噴き出す鮮血。
「すまないが...。立場上、僕は君をここで殺さなければならないんだ。...悪く思わないでくれたまえ」
静かに話す口調は穏やかだが、美しいその瞳は放った言葉通り冷酷だ。
「くそがッ!くそがッッ!くそがぁぁあッ!」
力の限り悪態をつくその言葉とは裏腹に、ガクガクと脚を震わせ、尻もちをつくエールマン。
オルフェウスは竜化できる竜人にしては珍しく、武器を持つ。
その腰に収まる長剣は、武器に重きをおかないドラゴニアにおいても名剣と謳われる長剣ソーヴァリアント。
「まだ、俺は諦めんぞぉぉぉ!」
ブワァァッ!
叫び、全身から緑に輝く光を放つと、片翼を失い、全身ずたぼろのグリーンドラゴンが現れた。
「往生際の悪い...その身体で飛べるのかい?」
「へっ!なんとでも言え!生き延びた者が勝者なのさ!」
ぶわあぁぁぁあ!!
森の中に爆風が吹き、頭上に茂る木々を物ともせず巨大なグリーンドラゴンの身体が浮かび上がる!
「そうか、君は風を操るのが得意だったね...」
「俺くらいになると、このくらい朝飯前だぜ!」
ッキィィンッ!!
再びオルフェウスがその長剣を縦に一振りすると、黄金の斬撃がエールマンの身体を綺麗に真っ二つにしてしまった。
「まぁ...このくらいは僕も朝飯前ってヤツなのだよ」
ズズゥゥン!
爆風が消え、地に落ちるグリーンドラゴン。
「生き延びた者が勝者、か。確かにその通りだ。エールマンくん」
一切感情を動かさず、オルフェウスはその場を何事も無かったかのように立ち去り、再び何処かへと消えてしまった。
お読みいただきありがとうございます。
ちょっと寄り道しましたが、いよいよ次回から主人公のお話に戻ります。
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