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親ガチャ転生~毎回親に殺されるので転生を拒否したら、異世界の女神様から産まれました~  作者: 里見みさと
第1章 はじまり

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4 走馬灯(転生の履歴)

 人は死の間際、走馬灯のように過去の出来事を思い出すという。

 私も、薄れゆく意識の中、長いようで短い六度の人生を思い出していた。


 ●

 1度目の人生は江戸時代。天保の大飢饉の最中、貧しい百姓の家に女子(おなご)として産まれ、すぐに盥の水に沈められて命を落とした。いわゆる口減らしである。

 父は労働力として男児が欲しかったようだ。

「いいか?次も女だったら、()()()()()()からな!」

 この言葉は呪詛として私の魂に深く刻まれている。


 ●●

 2度目の人生は第二次大戦の戦時中、母に見殺しにされ3歳で死んだ。

 父は既に戦死していて、母は5人の子を独りで育てており私は末子だった。

 食料は少なく、兄弟姉妹で奪いあう様に食っていた。

 そんなある日、空襲から逃れるために母に手を引かれて走っていた時だった。

「あんたが居るとみんな死ぬんだよ!」

 私は迫りくる戦火の中に突き飛ばされ、置いて行かれた。

 幼い私だけが足手まといになったのだと思う。


 前世と同じく、時代が悪かったとしか言いようがないんだけどね。

 私は死の間際、強く願っていたんだ。

『たくさんごはんがたべたい』と…


 ●●●

 3度目の人生は一転、華やかなものだった。

 戦後の好景気の中、大阪万博の開催も決まり日本中が沸きに沸いていた良き時代。

 不動産王の父とパーマ屋…今で言うカリスマ美容師の母との間に産まれた。

 大きなお屋敷に、お世話係として住み込みの家政婦が二人。私はお嬢さまとして何不自由なく暮らしていた。


 私が5歳の時、屋敷で事件が起きた。家政婦が共謀して金庫の金を盗んで逃げたのだ。両親にとっては少額だった事と、表に出せない金だったこともあり警察には届けないらしい。

 更に間が悪いことに、私が高熱を出して倒れてしまったのだ。

 家政婦が居ない中、両親は今夜政財界とのパーティーがあるという。


「こんな時に困ったわねぇ。なるべく早く帰るから、いい子にして待っててね?気持ち悪くなったらここに吐くのよ、いいわね?」


 そう言うと、母は枕元に洗面器を置いて出掛けてしまった。

 本当は行かないでほしかったけど言えなかったんだ。


 時刻は午後5時、しんと静まり返った屋敷はものすごく怖く感じた。何かに連れて行かれそうな、そんな色の夕暮れだった。


 頭がズキズキと痛み、寒気がして震えが止まらない。

 高熱のせいか頭がぼんやりする。

 …うっ…気持ち悪い……

 布団から起き上がることができず、洗面器は間に合わなかった。

 汚したことを怒られるかな?辛くて心細くて、涙が止まらなくなった。

(くるしいよーだれかたすけて……)


 待てども待てども両親は帰って来ない。柱時計の針は頂点を指していた。

 体調は悪くなる一方で、息苦しく、もう身体に力が入らなかった。

 お手洗いにも行けなかった。

 吐しゃ物と汚物にまみれ、朦朧とする意識の中、私は思った。


 なんでお父さんとお母さんはかえってこないの?

 どうしてわたしはひとりぼっちなの?

 ひとりにしないで……


 ……目が覚めたら別の親の元に産まれていた。

 死んだことも覚えていない。多分インフルエンザ脳症とかだったのかな?

 物理的に殺されたわけではないけど、心を殺されたと私は思う。


 ●●●●

 4度目の人生は、傍から見るときっと酷いものなのだろう。

 でも、私は楽しかったと思う。

 昭和の一番輝いていた時代、私は14歳まで生きたんだ。


 私が産まれた時、父は傍にいなかった。

 母は暴力亭主から逃げているときに妊娠に気づいたそうで、出生届は出せなかったんだってさ。

 その後、父母の離婚は成立したけど、関わりを絶つため私の事は父に内緒にされて…結局無戸籍のままで育ったんだ。


 ホステスとして働く母は人気ナンバーワン。収入は多かった。

 学校に行けない私に、欲しいものは何でも買ってくれた。

 本、漫画、ゲーム、おもちゃ。テレビは何時間観ても怒られなかった。

 でも、いつも家に独りぼっちで寂しかったんだ。


 ある日、母の元に若い男が転がり込んできた。

 全く働かず、昼間は母とアンアンして、夜は母を店に送った後はダラダラ過ごす。

 良くも悪くもそいつは遊びの達人だった。私もいっぱい遊んでもらった。

 漫画を一緒に読んで感想交換したり、ファミコンゲームで対戦したり、か●はめ波を打てるか試したりね。

 前世と今世、独りぼっちだった私は彼に懐いたんだ。

 私は独りじゃない、生きてて良いんだと救われたような気がして…。

 そして12の歳、私は大人になった。お赤飯でお祝いする()()である。

 その後2年も経つと、ヒモ男との遊びはいつの間にか()()()()()になっていた。


 あっ、引かないで!今では反省してるんだから!


 大人の遊びを続けているうちに、私は体調が悪くなった。

 アレが止まり吐き気がするようになったんだ。

 そう、出来てしまったんだ。赤ちゃんが!


 私はそのときまだ14歳、しかも無戸籍。

 どうしようと悩んでいるうちに、家が火事になったらしい。

 深夜、寝ている間に私は焼け死んだらしい。ヒモ男と一緒に…。

 寝ていたせいか、死んだ記憶は無いんだけどね。


 これは全部、転生したあとでネットで調べて知ったんだ。

 事件記事になってて驚いたよ。「あ、私のことだ」って。

 母が放火したんだってさ。死刑判決が出たそうだよ。

 遺体の状況や供述内容については触れられていなくて、少しホッとしたんだ…。


 ●●●●●

 5度目の人生は平成。ノストラダムスの大予言がハズレた年。

 DQNな親の元に産まれた私は、僅か半年の命だった。


 真夏の暑~い日、親子3人、車でお出かけした先はパチンコ屋。

 私はスヤスヤおねむで車に残された。

 父母は時間を忘れてフィーバーヒャッハーに夢中だった。

 …後はご想像の通りです。


 暑くて目が覚めたら車の中。赤ちゃんだから動けない。

 泣いても誰も気づかない!


『暑い、熱い!助けて!!』


 蒸し焼きってこういう事なのか。バカな親はどうしようもない!

 と思いながら死んだんだ。


 転生したあとで知ったんだけど、両親は逮捕されたらしい。

 その後のパチンコ置き去り事件が厳罰化された元となったそうだ。

 でも、未だに毎年のようにあるのが信じられない。多分故意だと思うんだ。


 ●●●●●●

 そして、先程終えた(?)6度目の人生だ。

 父は警察官、母は看護師。立派な職業だ。

 前世でバカな親はいらないと思ったおかげか、ガチャでまともな親を引き当てたと喜んでいたんだけどなぁ…。

 今回が一番のハズレだったのではないかな?

 この何とも言えない恐怖と不快感、今思い出してもチビりそうだ。ガクブル……



 長いようで短い走馬灯を観ながら、私は死んで行く。

 これからまた輪廻の輪に乗って転生してしまうのかな?

 もう嫌だよ…



『ほな、こっち来いや~?』



 意識が途切れる間際、そんな声が聞こえた気がした……




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